【読書録1】AI x データ時代も変わらない人間の本質とこれからの私~『シン・ニホン』私はこう読んだ~
読み終えた時の衝撃は今も忘れない。時代の全体観のとらえ方や、その中で、どのようにイシューを設定し、解を出し行動していくか、またAIxデータ時代の人間に求められる役割は何か?
これまで何度も何度も読み返し影響を受けてきた大好きな本の一つ『イシューからはじめよ』の著者である安宅和人さんが書いた、『シン・ニホン』である。
印象的な表紙のデザインにも惹かれ、新型コロナウイルスの影響が日本でも出始めた2020年3月に最初に手に取った。本書はまさに『イシューからはじめよ』の実践版ともいえる内容が描かれていた。
そして何よりも本書では、我々の未来との向き合い方や生き方を強く問うてくる。
読み終えた時に、数十年ぶりにふと頭に浮かんだ一言がある。
そんなことを思い浮かべながら、シン・ニホン公式アンバサダー養成講座に参加した。
時代の全体観と日本の状況
本書では、現在という時代を「AIx データ時代」としてとらえ、「確変モード」に入ったエキサイティングな時代だとする。
具体的には、AI xデータ時代においては、リアル空間だけのスケールがものをいう時代が終わり、「虚数軸」がものをいう時代であり、人類は再び解き放たれ、すべての変化は指数関数的に起きるという。
一方で、ここ日本の置かれた状況はどうか?
昨年は、元号が「平成」から「令和」に変わった。平成の30年を振り返ると、バブルの崩壊から始まり、遅れる不良債権処理、リーマンショック、東日本大震災、膨らむ社会保障費用、進まない財政再建、、、。失われた、10年が、20年、30年となってしまい、衰退感を想起させる。
世の中も根拠なき悲観論一色で、エキサイティングな時代から遠く離れ、取り残された日本。本書でも指摘されている通り、「一人負けを続けた」状況であることは否めない。
そんな平成という時代に社会にでて20数年。確かに社会や経済が成長している実感はない。一方で、黒船や戦後ほどの「すべてをご破算にする」ような敗北感もない。なんとなく、失われた時代を重ねいつの間にやら30年、気がつくとゆでガエル状態というような感覚である。
生き残れるかどうかはイシューではない
そのような私の感覚を打ち破るように、本書では、「手なりでこれからもある程度以上に豊かな国でいられ続けるか」という問いに対しては、Noであるという答えがほぼ出ており、我々が本当の意味で考えるべきなのは、「僕らはどのようにすれば今の子どもたちやその子どもたちに対して、あるいは50年後、そして100年後に対して、よりまとめな未来を残すことができるのか」という積極的な問いをイシューとすべきと迫る。
そして私たちが進むべき道を、これでもかというくらい幅広い分野でファクトとロジックに基づいて説いていく。
AIxデータ時代も変わらない人間の本質
私たちが進むべき道の具体的な内容にも説得力があり、ワクワク感があるが、私が一番、惹かれたのは、AIxデータ時代における人間の役割についてである。
情報の識別・予測・実行が自動化される中で、人間の役割とは何か?本書では「自分なりに見立て、それに基づき方向を定めたり、何をやるかを決めること、また問いを立て、さらに人を動かすこと」と説く。
人間ならではの活動として挙げられているキーワードは以下のようなものである。
これらは、今回のシン・ニホン公式アンバサダー養成講座を通じて、2か月間学び、実感したことと驚くほど一致する。自分なりに見立ててそれをベースに人と対話し、人との関わりの中で意味合いを深めていく。世代も性別もバックグラウンドも異なる多様な12名のメンバーとの関わりの中で得られたものこそ、人間に求められる本質的なものだったのだと怒涛の2か月が過ぎ去った今、実感する。
そしてこの濃密な2か月は、本書で示された「希望」を「道」にすべく行動していく仲間との出会いであり、行動するための準備期間だったとも感じる。
さあ行動だ
さて私自身についてである。会社ではミドル・マネジメントとして働き、家庭では、一児の父として子育てを行っている。
ミドル・マネジメントは、本書の中でも、「ジャマおじ」化する可能性、また今あるアセットとして才能と情熱を解き放つ対象としての可能性と両方の可能性を持つ存在として描かれる。
本書で、「仕事=力x距離」と描くように、仕事の本質は「変化を生み出す」ことである。しかし単に業務をこなすのではなく、変化を生み出しているか?今までのやり方に流されていないか?
なんとなく、いままでの経験値で手なりで業務をこなせるようになっていることは否めない。そうではなく常に仕掛けて続けていく存在でありたい。
また父としては、子どもに対して、自分なりのこころのベクトルをもって、周囲に流されず、自分らしさをとことん追求してほしいと願っている。また子どもたちの世代に責任を持つ世代として、彼ら一人ひとりが自分の才能や情熱を解き放ち、活き活きと胸を張って自分のフィールドで活躍できる世の中にしていきたい。それは希望というより責任である。
この本とともに、「確変モード」の時代に参画し、身の回りの小さな一歩でいいので希望を掲げ常に仕掛け続ける人でありたい。
今までに本書を3度読み返したが、これからも、日々、打ちのめされたり、やる気がなくなったりした時の道しるべとして何度でも戻ってきそうな、長い付き合いになりそうな一冊である。
最後に、今後の私にとって、座右の銘というべきものになるであろう一言で締めることとしたい。