マーティさんはMEGADETHのロマンスの神様だった
マーティさんが MEGADETH に戻ってきた。
もちろん、3曲だけ、一晩のゲスト参加だったけど、あのデイヴ・ムステインが恋い焦がれた武道館における奇跡の共演は、配信でも目頭と股間のラトルヘッドが熱くなるくらい滾るものがあった。
共演したのは、"Countdown to Extinction", "Tornado of Souls", "Symphony of Destruction"。欲を言えば "Holy Wars..." も一緒にやって欲しかったし、"Skin O' My Teeth"も聴きたかったけど、十二分に妥当な選曲だろう。
まあでもね、マーティさんの MEGADETH で注目されるのは、いつもいつもいつもいつもいその野球しようぜで、 "Rust in Peace" と "Countdown to Extinction"。100歩譲って、"Youthanasia"まで。サザエ、ひどいじゃないかー!せっかく、マーティさんが戻ってきたんだから、この機会にハッキリさせようじゃないかー!
「マーティさん時代のアルバムは全部良い!」
これね。"Cryptic Writings" と "Risk" が完全に空気と化しているけど、全部良いんだよ。MARTYDETH は!コンバンワ。MEGADETHのマーティデス。ユーァ リスニング トゥ ヘヴィ!メトゥー!シンディケート!マーティさん、英語のところだけ妙に発音が良いんだよね。日本人なのに。
マーティさんは最近こんなこと言ってたね。
「MEGADETH時代で一番好きなアルバムは "Rust in Peace" か "Countdown to Extinction" だけど、バンドとして好きな時期は "Youthanasia" と "Cryptic Writings" だ」
これねー、すごくわかるんだよねぇ。楽曲のクレジットを見ても、マーティさんが、MEGADETH のスーパー・ギタリストからコンポーザーへと進化して、バンドに深くかかわるようになった時期だから。
じゃあ、"Youthanasia" 以降の MEGADETH のいったい何が良いのか?一言でいえばメロディ。それも、"ロマンティック" なメロディなんだよね。
ご承知のように、ラーズにけしかけられたからなのか何なのか、この時期のムステインはメインストリームでの成功を渇望していた。METALLICAに負けたくなかったんだね。そこに、J-POP に薫陶を受けたマーティさんの登場。まさに渡りに船だよね。だから、ムステインはどんどん "歌う" ようになったし、バンドもそれを全員でバックアップしていったんだ。
インテレクチュアルからロマンティックへ。たしかに、複雑怪奇なリフワークやシュレッドの洪水はそれほど多くはなくなった。でもね、そのかわりに、ダークでニヒルでロマンティックなムステインの歌声が僕たちの胸を締め付けるようになった。
最初に心を奪われたのは、"Youthanasia" の "Family Tree" だった。もちろん、"A Tout le Monde" も最高にエモいんだけど、"Family Tree" は僕にとってそれ以上だった。何というか、ロマンティックな麻薬のような淫靡な中毒性があるよね。たしか、児童虐待について歌った曲だ。「オマエをどれだけ愛しているか見せてやろう。これは二人だけの秘密だ。我々だけの…」ムステインの言葉の牙は1ミリも失われてはいない。
"Cryptic Writings" では、MEGADETH のダーク・ロマンがさらに加速する。とにかく、歌えるメロディの大洪水。"A Secret Place" なんて、MEGADETH 史上最高のメロディじゃないかな。全身を掻き毟られるよ。最後の黒い疾走三連撃も絶品。特に、"She-Wolf" ね。これも、MEGADETH 史上最高の "ヘヴィ・メタル曲"だろうね。水星の魔女の第2期OP曲はこれで決まりでしょ!
"Risk" はね、"Risk" ってタイトルとアートワークがダメだったんだよね。普通に "Insomnia" がアルバム・タイトルでよかった。今聴いたら、たしかにちょっと NIN のような流行りを意識したりはしてるけど、結局、ダーク・ロマンティック路線は続いているんだよね。別にリスク!バーン!というほどリスキーなアルバムじゃないよ。
"Breadline", "I'll Be There", "Ecstacy", "Time"。どれも名曲だ。底抜けに明るいように思える "Breadline" にしても、何かムステインの陽気が逆に気味が悪いし、変な威圧感があるよね。あとね、最後の2作はやっぱりダン・ハフだよ。GIANT の天才は伊達じゃない。
で、この MEGADETH のダーク・ニヒル・ロマンはやっぱりマーティさんの魔法だったんだ。だって、マーティさんがいなくなってから、MEGADETH のメロディがこれほど心を抉ることはもうないから。(とはいえ、次の "The World Needs a Hero" はアル・ピトレリのアル・ピトレリによるアル・ピトレリのためのアルバムだからめちゃくちゃ好きだし、メタル作品として気に入っているアルバムは特に最新作も含めて沢山ある)
先日、広瀬香美さんに初めて会ったマーティさんが感激してこんなポストをしていた。
「生ける伝説、広瀬香美さん。彼女の音楽は僕が日本の音楽に興味を持ったきっかけの一つ。ポップスだけど、洗練されたジャズ・ハーモニーと、"高価な"コードに彩られている。その背景を学び、理解することでまったく新しい世界が開けたんだ。会えて感激だ!」
そうなんだよね。MEGADETH にとってマーティさんはロマンスの神様だったんだ。やっぱりね、グッとくるメロディの産み方を、心と体と頭で誰よりも知っているから。そしてロマンティックを MEGADETH にもたらしていたんだ。それは、"Scenes" とか "Introduction" みたいな喜太郎系ソロアルバムを聴けば、痛いほどわかってもらえると思う。まさにロマンティックあげるよ。
それにしても、この写真のムステインの目ね。キコというものがありながら、完全にまだマーティさんを狙っているよね…Friedman Is Next! (キコのマーティ愛があったからこその実現でもありました。R.I.P. ニック・メンザ)
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