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「きらきらひかる」を読んで|読書感想文
25年ぶりに『きらきらひかる』を再読。まだ若かった私は著者の江國さんの描く世界が好きでした。
それから老いた私が読んだ『きらきらひかる』もやっぱり好きな世界でした。
タイトル:きらきらひかる
著者:江國香織
出版社:新潮文庫
あらすじ
スマホもインターネットもまだ普及されていない時代。主人公の笑子は感受性が鋭く、繊細しすぎて現実から逃れるためについついお酒を飲みすぎてしまう女の子。
笑子の夫の睦月は実はゲイ。戸籍上は夫婦でも夫婦生活はない。お互い、世間のしがらみが逃れるため結婚して一緒に生活することにする。
睦月には大事なパートナーがいる。その睦月の彼と笑子は仲がいい。その一方で笑子はというと、睦月を異性として、自分を認めてほしい気持ちが強くなっていく。
感想
本の書き出しがいい。はじめの数行で睦月がどんなに魅力的な男の子で、主人公の女の子が彼に恋をしてることがわかってしまう。
寝る前に星を眺めるのが睦月の習慣で、両眼ともに1.5という視力はその習慣によるものだと、彼はかたく信じている。
私も一緒にベランダにでるが、星を眺めるためではない。
星をみている睦月の横顔を眺めるためだ。
睦月は短いまつ毛がまっすぐにそろっていて、きれいな顔をしている。何を考えてるの、と睦月がきいた。
「人生のこと」うそぶいたのに、睦月は真顔をうなづく。
この時代にはゲイという言葉は使われておらず、睦月のような男性に好意をもつ人を”ホモ”、”おとこおんな”と表現されている。
今でこそ多様性(ダイバーシティ)という言葉や、趣向が異なる人間同士を認め合う世の中になりつつあるが、90年代の日本はそうではなかった。
でも、睦月や笑子のように生きづらさを感じている人々は今の時代にもいる。
睦月も笑子も自分の気持ちに素直に生きようと必死にもがいている人たち。それがとてももどかしくて切なくもある。
睦月も素敵な男の子だし、彼のパートナーもやんちゃなところが魅力的。笑子は睦月との生活をずっと続けたくて、必死に生きている。
睦月も自分の気持ちにまっすぐに生きたいと思う。自分に正直に生きるなら、笑子との結婚は続けることができない…。
綺麗な心の3人が繰り出す物語。現実はきっとこんなにうまくいかないと思うけれど、心にきゅいーんと切なさが欲しくなった時におすすめです。
もちろん読む時間は「ひとりの時」、「夜」が鉄則ですよ。
なぜ著者が本のタイトルを”きらきらひかる”にしたのかを
あとがきに書いてあります。興味ある方はあとがきも読んでくださいね。
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