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負のループ
過去の思い出は消すことができないから、ここに書いて、置いたことにしよう。
私は合宿が大好きだった。
いつもと環境が変わった場所での練習がとても楽しかった。
高校1年の時。
私は、入学して、まだ全然力及ばずの立場だった。
だから、誰かに負けるとか怖い物なしに上へと挑戦できた。
合宿が大好きだったこともあり、気合いを入れて挑んだ初の夏合宿。
私はそこで開花した。
高地のクロカンコースでの12キロペーランにも、スピードトレーニングにも設定以上で走った。
そうすると、同級生の速い子が、先輩に言いつける。
言っても無いのに、「走れなかった私にご飯の話をしてくる」とか。
それで、練習終わりには先輩マネージャーに呼ばれ、ひたすら部屋で説教。
陸上の話以外したらダメなの?とか疑問ばかりだった。なのに、調子に乗るなとか、どうせ走れなくなるとかの攻撃を喰らう。
スマホも取り上げられていて、相談する相手もいない。
初めて合宿が嫌になった。
翌日、走れる自信がなかった。
でも、ここで走れなかったら相手の思う壺だと、意地でも走って見せた。
東京の全国レベルの選手にもついて走った。
12キロからのラスト1キロを3分30秒台でかえってきた。
たまたま、青山大学の合宿も同じだったため、原監督が声をかけてくれた。
「ナイスラン」
と言われたことが嬉しかった。
でも、走れれば走れるほど、仕打ちを喰らう。
そこからの学校生活は、お弁当の中身を毎日チェックしにくる。
水筒の中身が何か1口は毎日飲まれる。
下着を何着ているか、靴下を何履いているか、休みの日は今何してる?とすぐラインが入り、返信しなければ電話がなる。
靴を買えば、同じものを買われる。
今となっては私のことそれだけ気にしてくれてるんや!って思えばよかった。
でも、そんなこと思えず、嫌でたまらなかった。
大学になって解放されると思っていた。
でも、寮では、古かったこともあり、トイレの流す音がうるさいと言われ、朝と晩は行くのを我慢した。
歯磨きなども、置いていたら邪魔だと言われ、洗面所に置けずに部屋に置いていた。
冷蔵庫の飲み物はいつのまにかなくなっていて、食事当番はなぜか多く回ってくる。
ご飯を全員分作らなければならない食事当番は、自分一人分のご飯を作ることさえ一苦労だった。
昼ごはんを抜いてでも、作っていたご飯は簡単に美味しくないと捨てられる。
お風呂の順番は勝手に最後に回される。
私の部屋の前で、他の同級生が悪口を言っていると思い部屋を出たら、向かいの部屋に急いで駆け込む。
トラックに行っても邪魔だと耳元で囁かれる。
補強も、誰もペアになってくれない。
部屋にテレビ、冷蔵庫などの電化製品は置いてはいけないルールがあり、食堂のテレビももちろん私が見ることなど許されなかった。
洗濯機も、止められて地面に置かれている私の洗濯物。
日に日に靴下や服がなくなる。
とうとう倒れて、緊急帰宅。
監督にどうにかならないか?と相談しても、私が悪いと言われるだけ。
辞めざるを得なくなり、大好きだった陸上から離れた。
そしたら、「逃げたん?」と同級生からは言われ、「やめるん?」といちいち高校の時の子からも連絡が来る。
情報が回るスピードは怖い。
どこからともなく押し寄せてくるLINE。
ある程度走れてただけあって、辞めてくれることは嬉しかったんだろう。
ライバルを落としあう、個人競技の嫌なところだ。
私の体は25キロまで落ち、骨と皮だけになっていた。
なのに、まだ刺してくるのか?
もう、結果で覆すことなんてできなかった。
ここが私の、負のルーティーンから抜け出すことができなくなった原点だ。
高校の時から、土日は1人で泣いて走って、結果で覆そうと毎週リセットできてた。
なのに、陸上を失った私には覆す方法がなくなり、リセット能力を失った。
だから、どれだけ泣いても、日に日に募るだけ。
あの時、どうして、言えなかったのだろう?
練習中に、言っても無いことを監督に言われ、呼び出しからの怒られる。
それを見て笑う同級生。
帰って、物に当たってるとお母さんにイライラをあたらんどいて!と怒られる。
私には、面と向かっていく勇気がなかった。
結果で覆すしか方法はなかった。
私は抜け殻だ。
自分で溜め込むことは結局は自分を苦しめることにつながるのだと知った。
ドーナツの写真は1年の合宿から帰って初めて相談して大泣きした翌日、弟の野球もなかったためお母さんが連れて行ってくれた食べ放題の写真。
過去に戻れたとしても、もうやり直したいとも思わなくなった。
中学の頃から、ストレスも悩みも1人で溜めておくほうが楽だと思っていた。
だけど、違った。いつかは、爆発する。
その結果、私は今こうして負のループにいる。
過去の思い出だって、黒一色に染められてしまった。
中学の「陸上部」じゃなくて「掃除部」と言われていたあの頃からもっと誰かを頼れていれば…
今、まだ頭の中に容量はあったのかもしれない。
後悔したって、過去は変わらない。消すこともできない。
過去の思い出は置き場に困る。
でも、今日原点を見つけることができた。
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