キグルミとナカノヒト
万人受けする外見で、
万人受けする性格で、
「いい人」というキグルミを着る。
嫌われることはない。
頼まれたら断らない。
笑顔で一つ返事。
ありがとうって言ってもらえる。
いつも、ありがとうって。
ありがとうの言葉の上に、
次もヨロシクというルビがふってある。
心の籠もっていない、
表面だけ飾った「ありがとう」。
その言葉、
別に万能じゃないからね?
とりあえず言っとけば…
なんて軽い言葉じゃないからね?
キグルミのナカノヒトがあちこち傷だらけだなんて知りもしないでしょう?
ワーッて集って、
みんなで写真撮って、
気がつけばポツンと取り残される。
キグルミは、
黙って、
いつも笑顔で、
ナカノヒトを隠す。
夢を壊すからって、
ナカノヒトをいなかったことにする。
ナカノヒトはいなかったことにされる。
キグルミ着ていたって、
笑っていたって、
ナカノヒトが怒っていたら、
ナカノヒトが悲しんでいたら、
ナカノヒトが辛かったら、
怒りが、
悲しみが、
辛さが、
滲み出てしまうんだよ。
じわじわと、
血が滲み出るように。
ナカノヒトを視てあげて。
ナカノヒトを診てあげて。
ナカノヒトを見てあげて。
ナカノヒトの声を聞いてあげて。
ナカノヒトの言葉を聴いてあげて。
キグルミの口は笑っているのに、
ナカノヒトの口を縫い合わせてしまわないように、
どうか、
どうか、
ナカノヒトの口を塞がないで。
どうか、
着慣れてしまったキグルミを脱がせてあげて。
ナカノヒトはきっと、
似合わない服を脱ぐタイミングすら見失ってしまっている。
ちょっとヤらしいけど、
脱がすのを手伝ってあげて。
きっと最初は、
脱いだはずのキグルミとそっくりなナカノヒトが顔を出すと思うけど。
ナカノヒト・キグルミ化シンドロームなだけだから。
ちゃんと治療すれば、
ナカノヒトは本当の姿を表せるようになると思うから。
なってほしいから。
だから、
気づいて。
そんな人になりたい。
ちゃんと、
大人になろう。
ドラマ「いちばんすきな花」を観て、
考えてみました。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。