ただ生きたかっただけなのにそれが叶わないレプリカントたちが物悲しい『ブレードランナー ファイナル・カット』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:3/9
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:BLADE RUNNER: THE FINAL CUT
製作年:2007年
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース
上映時間:117分
ジャンル:SF
元ネタなど:小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968)
【あらすじ】
2019年、ロサンゼルス。
宙植民地で反乱を起こしたロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)ら4人の人造人間=レプリカントは、シャトルを奪い、秘かにこの街に隠れ潜んでいた。
レプリカント専門の捜査官「ブレードランナー」のデッカード(ハリソン・フォード)は、彼らの足取りを追い、レプリカントの製造元である巨大企業タイレル・コーポレーションを訪れる。
デッカードはそこでレイチェル(ショーン・ヤング)という美しい女性と出会うが―。
【感想】
「午前十時の映画祭12」にて。2007年のアメリカ映画。1982年に公開された『ブレードランナー』をリドリー・スコット監督本人が再構築した完全版ですね。
<卓越した映像センスが秀逸な世界観>
簡単に言ってしまえば、ロボットの反乱的な話でしかないんですけど、この映画の世界観、すごく好きです。今でこそサイバーパンクを舞台にした作品は多いですが、その走りになった作品なんじゃないですか、これ。未来と言えば、『ドラえもん』に出てくる22世紀の街並みのようなクリーンな感じが主流だった当時、環境汚染によって暗く汚い、でもテクノロジーは発達しているっていう街並みは画期的だったそうです。レトロとハイテクが混在した世界観には今でもロマンを感じますね。まあ、作品の舞台となった2019年は今から3年前ってことになりますけど、こんな街はいまだ実現してません(笑)空飛ぶ車さえ、技術的には可能とされながらも、一般に普及できるのはもっとずっと先のことになりそうですし。
<人間とは何かという問題提起>
この映画で一番強く感じるのは、「人間とは何か」ということ、そしてレプリカントたちの運命がただただ悲しいなということです。彼ら、感情が芽生えて反旗を翻すことを防ぐため、4年の寿命が設定されてるんですよ?それで何とか寿命を延ばそうと、脱走してまで地球にやってきたわけです。
人間を生物学的な構成物(例えば心臓があって血管があって)から定義するなら、レプリカントは人間とは言えないでしょう。詳細な構成物はわかりませんが、人工物であることに変わりはないでしょうから。でも、言語を操るとかコミュニティを作るとか、そういう社会的な面から定義するなら、人間と呼んでも過言ではないと思うんですよね。
レプリカントって見た目は人間と同じで知性と身体能力はそれ以上。で、作られてから数年経つと感情も持ちます。ロボットのように与えられた命令にしか従えないということはなく、自らの意志で動くことも可能なんですよ。わざわざ赤ちゃんを産んで育てるより、レプリカントの方がコスパよくないって感じるのは僕だけでしょうか。なのに、人間側が管理できるように4年で寿命が尽きるように作っちゃう。合理的な判断ではなく、あくまでも自分たちを頂点におきたいっていう人間のエゴなんじゃないかと思いますよね。「自分たちが作り出すものは、自分たちの手に負えるものでなければならない」っていうルールでもあるんでしょうか。唯一、レプリカントは生殖機能を持たないっていうのもありますが、これは続編の『ブレードランナー2049』(2017)で実現してしまっているから、もはや人間との差別化がますます難しくなってきますね(笑)
そう考えると、レプリカントたちの悲しい運命に胸がちょっと痛みます。ただ単に「もっと長く生きたい」、そう望んだだけなのに。生あるものとして当然の願いを持っただけなのに。技術的に不可能と言われ、処分の対象とされ。ラストのロイのシーンがすごく印象的でした。「お前ら人間には信じられぬものを見てきた。そういう思い出もやがて消える。涙のように」と言って事切れるシーンです。これが動物とか架空の生き物ならまた別なんでしょうが、見た目も機能も人間とまったく同じ存在であるがゆえに、感情移入しやすくなっているんだと思いました。
<そんなわけで>
サイバーパンクな世界観が好きな人にはオススメな映画です。若き日のハリソン・フォードもルトガー・ハウアーも渋くてかっこいいので、ぜひこれを機会に映画館で観ていただければと。
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