喜びに満たされる
先日の外来での一コマ。
長年、不眠、寝汗、無気力、不安、動悸などに悩まされ、某有名栄養療法クリニック受診し処方された多くのサプリを飲んでも良くならないと言っていた女性。
よく聞いてみると、早く良くなりたいので主治医の言ったことを「きっちり」守り、「ストイックな」食事療法も行なっていた。
どうやら「色々悪いところや足りない栄養素を指摘され、早く悪いところをなんとか治そうと頑張ってきた」らしい。
うちを受診した目的は、もっと自分に合うサプリメントの提案をはじめ、栄養指導をして欲しいとのこと。
でもきっと彼女が当初期待していた言葉ではなかったとは思うが、私はこう切り出した。
「体のどこが悪いかではなく、『体が本当に喜ぶこと』にフォーカスして見ませんか?」
一瞬目が点になっていた様子だが、彼女からかえってきた言葉は
「本当に喜ぶことをしてもいいんですか?早く良くなりたいので、喜びに関してはずっと我慢してきました。」
帰宅後、彼女は体が喜ぶことにフォーカスし、実際にそれを実践してくれた。具体的にはここでは記さないが、結婚や出産を機に遠ざかっていた趣味の世界にまた目を向けるようになった。
それまでは
「母として〜しなければいけない」
「妻としてもっと〜すべき」
と言った信念が彼女を支配し、自身の喜びは後回しになっていた。
それから1週間後の再診時。
これまで悩まされ続けた症状からほぼ解放されたとの報告をいただいた。
この例もそうだけど、背側迷走神経の凍りつきスイッチが入ったまま、「もっと頑張るために」交感神経もフルで活性化しているような状態では栄養療法の効果が出にくい。
「腹が減っては戦はできない」
のだが、
「腹を満たしてどうしたいのか」
を考えたときにワクワクするかどうかが結構重要だったりする。
安心安全な環境のもと、遊び心が活性化していると腹側迷走神経を指揮者とした交感神経と背側迷走神経の調和がとれ始める。
ただしポージェス博士の言う「遊び」には「ひとり遊び」は含まれない。彼は心許せる仲間がいて本当の遊び心が活性化すると言う。
私のメンターの一人、カールサイモントン 博士も言う。
"Play is mandatory, not elective."
「遊びは必須であり、(余裕があるから)選択するものではない」
つまり治療中であろうがなかろうが、病気があろうがなかろうが、私たちが健全に生きていくためには「遊び」や「喜びに満たされる」ことがとても重要であると言うことらしい。
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