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『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を読む

本日の読書感想文は、アービンジャー・インスティテュート『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房2006)です。自分の心の闇と向き合った印として、ノートを書き残します。

人間関係の真理を突いた書

本書は、かなり前にVoicyの人気番組『荒木博行のbook cafe』で解説されているのを聴いて以来興味があり、最近手に入れて読みました。

全体で268頁ありますが、物語仕立てで読み進め易く作られています。なぜ人間関係がぎくしゃくするのか、相手に思ったような影響を与えられないのか、「箱」というキーワードを用いてわかり易く解説されます。誰もが思い当たるフシがあると思います。ビジネスマンの研修テキストに、よく使われているというのがわかります。

私の会社員時代の晩年は、まさに「箱」の中に入って、出られない状態に陥っていたと感じ、耳が痛かったです。直視したくない過去です。

本書に書かれている内容を理解するのはそれほど難しくないし、日常生活でも実用価値の高い考え方で、受け容れ易いでしょう。ただ、実践し続けるのは非常に難しいと感じます。

読書ノート

えてして、問題がある人物自身には、自分に問題があるということが見えなくなっている。
P31
人間は、相手が自分のことをどう感じているか察知して、それに対して反応するんだ。
P45
自分が相手から、なんとかしなくてはならない問題と見なされているのか、操られているのか、策略を巡らされているのかがわずかな時間でわかってしまう。偽善だってかぎつけられる。見せかけの親切の下に隠れている非難を、感じ取ることもできる。そして往々にして、そういう相手の態度を恨めしく思う。
P50
自分をあるがままの人間として見てもらえるとなると、頭の切れる人はさらに頭を働かせ、スキルを持った人はさらにそのスキルを発揮し、よく働く人はさらに働く。
P70
人はまず、相手の行動にではなく、相手のありよう、つまり相手が自分に対して箱の中にいるか外にいるかに対して反応する
P75
【自分への裏切り】 
1. 自分への裏切り=自分が他人のためにすべきだと感じたことに背く行動
2. いったん自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる
3. 現実を見る目が歪められる。
4. 箱に入る ∴ 自分の感情に背く(自己欺瞞)=箱に入る
5. 時が経つにつれ、幾つかの箱を自分の性格と見なし、それを持ち歩くようになる
6. 自分が箱の中にいることによって、他人も箱に入れてしまう
7. 箱の中にいると、互いに相手を手ひどく扱い、互いに自分を正当化する。共謀して、互いに箱の中にいる口実を与えあう。
【問題を引き起こすもの】
● 積極性の欠如
● 参加意志の欠如
● 問題を引き起こす
【箱の中にいるときに、しても無駄なこと】
1. 相手を変えようとすること
2. 相手と全力で張り合うこと
3. その状況から離れること
4. コミュニケーションを取ろうとすること
5. 新しいテクニックを使おうとすること
6. 自分の行動を変えようとすること
👉 自分が箱の中にいる限り、あらゆる小手先の努力は徒労
【知っておくべきこと】
● 自分への裏切り ➡ 自己欺瞞 ➡ 箱
● 箱の中にいると、【目的】に気持ちを集中できない
● 人に影響を与えるには、自分が箱の外に出ていること
● 他の人々に抵抗するのをやめる ➡ 箱の外に出られる

自分の過去の反省

「箱」という比喩(メタファー)が、腑に落ちました。

私は、会社員を卒業することを決意して準備を進めている頃、自分の意志で「箱」の中に入っていました。周囲に高くて強固な壁と柵を築き、扉もピタリと閉ざして、自分からは絶対に外へ出ない、必要な時以外にはアプローチをしないと決意して過ごしていたように思います。

当時は本書で説明されている「箱」の理論を知りませんでした。ただ、もし本書を知り、大いに感化されて、数日は実践できていたとしても、最終的に自分は「箱」から出ることはできなかった気がします。それくらい、私の仕事環境への不満と不信の根は深く、心がどうしようもないくらい腐っていたように思うのです。

自分の態度や行動が、新たな不幸や不遇を招き入れていることはわかっていました。人間的に未熟なのもわかっていました。でもねえ…… どうしても許せなかったのです。寛容にはなれなかったのです。現実を受け容れられなかったのです。辛くて、惨めで、孤独で叫びたいくらいなのに、誰も私の苦悩に気づいて手を差し伸べてくれないことを恨んで、完全に心を閉ざしていました。

これから先も私は、些細なことや自分勝手な理由で「箱」に閉じ籠る愚を犯すかもしれません。本書はその防ぎ方を丁寧に解説してくれます。きっかけとなる【自分への裏切り】に自覚的となり、箱の「外に出る」試行をやっていこうと思います。

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