バスキア展より
昨日は、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」を鑑賞に行ってきました。
こういった注目の展示会に混雑が比較的少ない平日の昼間に堂々と観に行けるのは、無職を謳歌する者の特権だなあ、と前向きに受け止めながら、意気込んで六本木に着きました。
若き天才、バスキアとの出会い
1980年代に活躍したジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat 1960/12/22-1988/8/12)の日本での本格的な展示会は初めて、ということで人気を集めているようです。なかなかの盛況のようで、館内は私が予想していたよりは混雑していましたが、超満員という程の混雑ではなく、吉岡里帆さんの音声ガイドを聴きながらゆっくりと楽しむことができました。
私がバスキアというアーティストの存在を知ったのは、1996年に公開された映画『バスキア Basquiat』です。バスキアは1980年代前半にニューヨークのアート界に彗星の如く登場し、時代の寵児として高い評価と人気を集めながら、1987年に27歳の若さで亡くなっています。
死因はヘロインのオーバードース(過剰摂取)だったと言われています。ロックスターばりの悲劇的な生涯やアンディ・ウォーホル(Andy Warhol 1928/8/6-1987/2/22)との交流など人物としてのユニークさの方が印象に残っていて、その作品の芸術的価値についてはよく知りませんでした。
斬新な作品に圧倒された
アーティストとして実働した約10年間で、バスキアは膨大な作品点数を残しています。短い活動期間、多作、独特の手法と世界観、際立ったキャラクター、日本とも関係が深い、短命、後世に影響を与え続けているという点では、巨匠ゴッホと似ていますが、バスキアは生前から名声を得て、社会的成功を収めた存在であったことが異なります。
今回その作品群を目にして、月並みな表現ですが、感銘を受けました。まず最初に魅了されたのは、独特の構図(実は伝統的絵画をモチーフに計算されたもののようですが)と色使いです。細部に敷き詰められた文字群とシンボルチックな図柄、マンガのコマ割りのような画面使いの融合がお洒落だと感じました。このあたりの感性は人それぞれかもしれません。
作品には生き様が投影されている
私は正式に美術を学んだことがないので、技巧的な特徴はわかりません。作品から透けて見えてくるのは、彼のパッションとか画体に向かう姿勢、生きる信条といったものです。
偽善は許さない、真摯に生きていないものは軽蔑する、見せかけに惹かれる薄っぺらい人間は寄せ付けない、という実直さを感じました。彼は黒人アーティストと呼ばれることを極端に嫌ったようですが、世に蔓延る偏見や常識を断乎拒否するストイックさを感じました。