『日本史ひと模様』を読む
長かった年末年始休暇も本日で終了です。家族との貴重な時間を胸に抱いて、松本に帰る高速バスの中です。本日の記事は、ここ数日息子との電車旅の合間に少しずつ読み進めていた、本郷和人『日本史とひと模様』(日経プレミアシリーズ2020)の読書感想文です。
本を読む時間を確保する大切さ
時代遅れの人間なのかもしれませんが、何かを学んでいるという実感を得たい、知的にワクワクする体験がしたい、価値ある時間を過ごしていると自分を納得させたい、と思った時、最適な行動は読書だと思います。結局は、定評のある著者が、事前に一定のファクトチェックを受けて活字化している本については、まだまだ信頼を寄せています。2025年こそは、著者や編集者の努力を経て生み出されている本を、じっくりと読み込む時間が減っていたことを反省し、地力を付け直す機会を増やしたいと考えています。
本書の著者である、本郷和人氏は東京大学史料編纂所の教授を務める第一線の研究者(専門は中世日本史)ですが、メディアなどにも数多く出演し、エンタメ要素も含んだ簡潔な解説で知名度も高い先生です。
本書は、氏が日本経済新聞に2018年6月〜2019年7月に連載したコラムを一冊にまとめたもので、氏の専門である中世史以外の分野にも言及されていて、なかなか知的好奇心をくすぐる一冊となっています。
権力者は邪魔者は手段を選ばず排除する
幾つかのコラムでも触れられていますが、歴史には「戦いが王を作る」という事例が非常に多いことを再認識します。そして王は、必ずライバルや将来脅威になりそうな人物や集団を、時にあからさまに、時に陰湿に排除しています。それは、現代の政界をはじめあらゆる分野で行われていることです。スポットライトを浴びる人物の陰で、本当の功労者や貢献者が歪曲されて放逐されたり、不遇をかこったりしている場合があり、事実が認識されず、歴史の片隅にも止まることなく、やがて存在自体が完全に忘れ去られる、という無常が多々あることでしょう。
権力者が作った正史や定説の裏に潜む不都合な事実や歪曲された解釈を糺す醍醐味が歴史学にはあります。人気があるとは限りませんが。
人物像を知る楽しさ
私は、自称「歴史好き」ではありますが、それ程の蘊蓄を蓄えている訳でもなく、おおまかな通史に毛が生えた程度の知識で楽しんでいる、凡下に過ぎません。それでも、特定の人物の歩んだ人生に焦点を当てる人物史は、特に好きなジャンルです。本書にも、軽く触れられているだけですが、掘り下げてみたい人物が何人か登場しています。そうした人物に出会えたことも、本書を読んだ価値だったと思えます。