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読書日記*時空を超える物語『楽園のカンヴァス』原田マハ

わたしは物語の中にしかない時間を、これほどまでに美しく描いている作品にあったことがない。

キュレーターふたりの目線と伝説のコレクターバイラーの目線、絵の中のヤドヴィカとそして巨匠ルソーとピカソの想い。

この物語は巨匠ルソーの名作『夢』に酷似した絵の真贋判定をめぐって時間が流れる。「正しく真贋判定をした者に絵を譲る」と伝説のコレクターが選んだキュレーターに告げ、物語が展開していく。

交差する時間の中に、すっと入っていける。
作中の真贋を図る『夢をみた』という作品が、ほんとうにあった絵画だと思って、読み終わったあとに真っ先に”ルソー 夢をみた”と検索した。
同じように検索をした人がたくさんいて、原田マハさんの世界はリアルを超えた物語に思える。

偶然、見つけた動画で原田マハさんご自身が
”このルソーの物語を29年かけて本にした”と言われている。

「自分の筆でアーティストを動かしたい」
それはその作家を深く知っていなければできないことで、絵画を知らなかったわたしの心まで動かした。

あの「物語」の中で、おのれの情熱のすべてをぶちまけろ、とピカソは言った。新しい何かを創造するためには、古い何かを破壊しなければならない。世界を敵に回しても、自分を信じる。それこそが、新時代の芸術家のあるべき姿なんだ。
息子ほども歳の離れた天才画家の進言を、ルソーはそう解釈した。
(P368)

これほどにまるでその場にいたかのような気分になって、その時代を体感できることが、まさにタイムカプセルのような体験で…。

時空を超えて感じる想いは伝わっていると思う。

「次に出てくる才能はアーティストがいちばん最初に気づく」と原田さんが言われていて、それもまたずーんと心に響いた。

好きなものは世代を超えて、愛されていく。

わたしは正直に、素直に、好きなものをずっと信じることができていたかなと。
ルソーは生きている間、作品があまり評価されなかった。
信じた人がいたからこそ、時空を超えて愛される作品になっていくんだなと。

いろんな視点でモノゴトを見る力は、その絵や人の表面だけを見たってわからないことを見せてくれる。

深くふかくゆっくりと味わうように物語の時間を感じていく中、それはわたしにとって至福の時間で…。
そしてそれはいろんな想いを感じられることが、人生の至福なのではということを教えてもらった1冊でした。


※最新作『リボルバー』の刊行を記念しての企画に参加させていただきました。


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PONO@こもりびと
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