ハイブリッド戦争とは何かを定義せず、いきなりプロローグが始まる点に、戸惑いを感じました。定義が出てくるのは、何と24ページ目。
↑kindle版
あるいは95ページに書かれているように、単純に通常兵器による戦争とサイバー戦争を組み合わせたものと考えても良いようです。
……というあたりで納得していたら、エピローグで「ハイブリッド戦争の定義はなく、その言葉から想起される実態は人によってかなり異なっている。(中略)まだ概念としても定まっておらず、研究対象としても成熟していない」と書かれていて、ちょっとガクッとしました。それ、むしろプロローグで書くべきでは?
小泉悠さんの『ウクライナ戦争』にも、ちょっと違う形でハイブリッド戦争が定義されています。
ハイブリッド戦争以外にも、定義が後から出てくる用語もあり、やや読みにくいところがありました。また、同じことが繰り返し書かれてもいて、冗長な印象もあります。まぁこの点については、繰り返し出てくるから理解が深まる部分もあり、必ずしも悪くはないのかもしれませんが。
あと、地図を入れてほしかったなと、切実に思いました。地政学的事情が重要なポイントであれば、なおのこと地図は必要かと。
以下、印象に残った部分を備忘録代わりに書いておきます。
民間軍事会社(PMC)
PMCを利用するメリット
「死の保障をしなくてよい」というのが、シビア過ぎて暗くなります。恐らく今ウクライナでも、PMCに属する人々が戦っていますよね。
今回結局フィンランドがスウェーデンと共に、NATO加盟を目指すことにしたことを思うと、ロシアは結局フィンランドの「フィンランド化に」失敗したわけですね。
これからは「未承認国家」という概念に着目して、国際関係を見ようと思います。
ぞっとしたのは「勢力圏(注:旧ソ連諸国)に対する外交の戦術・手段」の7つ目。
2014年以来のウクライナ危機は、まさにこれなわけですね。
目から鱗だったのは、「旧ユーゴスラヴィアのコソヴォ(二〇〇八年二月に独立宣言)に対する欧米諸国による国家承認プロセスは、明らかにロシアを刺激し、結果、ジョージアやウクライナ情勢に連動した」という指摘。一見別々の出来事が、連動していたとは……。
うーん、北方領土、返ってきそうもありませんね。
何しろハイブリッド戦争はコストが安くて効果的だということが、よく分かりました。
今年の3月以降、次第にロシアへの各国による制裁は厳しいものになってきていますが、思ったより効果が出ないのは、これが理由なのかもしれませんね。
それこそハイブリッド戦争の一環なのか、これまでそれほど来なかった迷惑メールの量が、2月末以来目に見えて増えています(もちろんロシアによるものとは限りませんが)。一般人がそれに対処できる方法が、1つだけ挙げられています。
現在のウクライナ危機の背景を理解する上で、大きな助けになる本です。
↑新書版
↓不十分ではありますが、今回のウクライナ情勢についてまとめた記事です。