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【読書】本を読み、過去の歴史を学ぶことの意味~『創竜伝9<妖世紀のドラゴン>』~

「創竜伝」の最初の方の巻は中高生時代に繰り返し読んだので、結構細部まで覚えています。新刊が出ると、1巻から読み返すこともあったし。

でもさすがに8巻ぐらいからは、読み返しの回数が少ないので、今回読み直してみて、「え、そうだったけ?」と思うシーンが少なからずあります。


↑kindle版


例えば今巻では、四兄弟が月まで行ったことに驚きました。もちろん読み進めれば、「そうそう、こういう展開だった」と思い出すのですが、割と新鮮な気持ちで読めています。


↑新書版(私が読んだのは、このバージョンです)


今巻で印象に残ったところ。


「おばはん、いいかげんにしろよ。むちゃもほどほどにしておかないと、いまに生命だってなくすようなはめになるぜ」

天敵の小早川奈津子への終の台詞ですが、終、優しいなぁ。まぁ小早川奈津子が、その忠告を受け入れるわけもないのですが。


「吾々宦官の権力は、皇帝をあやつることによって得られる。そのためには皇帝を愚かで無知な状態にしておかねばならん。皇帝を愚かにしておくには、本を読ませてはいけない。とくに、けっして歴史を教えてはいかんぞ。過去の歴史を知り、現状に疑問を抱くようになったとき、皇帝は宦官のいうなりにならなくなるのだ」

これは本文で引用されている、9世紀の唐の時代の悪徳宦官である仇士良の言葉です。権力者の言うなりにならないためには、本を読み、歴史を知らねばならない。及ばずながら私も、歴史を教えることで、自分の頭でものを考える人を増やそうと努めています。


ちなみにこの引用の少し後に、第二次世界大戦中の日本軍の蛮行の1つとして、「沖縄住民のマラリア汚染地連行」と書かれていることには驚きました。戦争マラリアのことは、私は「ビッグイシュー日本版」の388号で知ったもので。9巻を初めて読んだ当時の私は、その記述に目がいかなかったのだなと、恥ずかしくなります。


近代日本の歴史を見ると、つねに理科系は優遇され、文科系は冷遇されてきた。筑波研究学園都市は政府が巨額の資金を投入して建設したものだが、そこにあるのは理科系の施設ばかりで、文科系の施設などほとんどない。大企業も、理科系の学部や大学院には資金援助をするが、文科系に対して寄付などめったにしない。

30年近く経っても変わらないどころか、その傾向は加速していますね。


企業献金についての続の意見も強烈でした。

「もし企業の経営者が、政治家や官僚からの見返りを期待して献金すれば、むろんこれは完全な賄賂です。また、もし見返りを期待せずに献金したら、企業の経費を企業の利益にならないことに費うことになり、背任行為ということになります」


そろそろスピードを上げて、最終巻まで読み進めていきたいものです。


見出し画像には、今巻では四兄弟が月まで行くので、月の画像を使わせていただきました。


↑kindle版



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