少し前に、遅ればせながらアマプラ会員になりましたが、Prime Readingの特典を利用して初めて(無料で)読んだのが、この本です。
↑kindle版
読みながら、世界史的にはちょっと解釈が甘かったり、間違っているところがあったりして、ちょっと微妙だなぁと思っていました。例えば47ページの三圃式農業の説明は、明らかに違います。そうしたら、著者の稲垣栄洋さんは植物学者でした。なら、大目に見なければいけませんね。
とはいえ、一般教養として世界史に興味がある大学生とか社会人には、読みやすくて良いと思います。特に世界史選択の高校生なら、これを読むことで、授業で習ったことがいろいろ繋がる感覚を得られるのではないかと思います(まぁ、上記の三圃式農業のように、間違った説明をそのまま覚えられると困りますが)。また、最初から最後まで順に読まなくても、興味を持った章だけ読んでも良いかもしれません。
以下、印象に残ったことを、備忘録代わりに書いておきます。なおページ数は、kindle版のものです。
草は木から進化したということ(p.19)。まさかシダ植物→木→双子葉植物→単子葉植物という順番だとは……。
これ、改めてなるほどと思いました。狩猟採集生活の方が農耕牧畜生活より大変で遅れているとは、必ずしも限らないわけです。
サトイモがタロイモの一種とは知りませんでした。ネバネバ好きが「サトイモの遠い記憶」というのも、ちょっと面白いです。
実は私は、コムギの方がコメよりタンパク質を多く含むと、逆に記憶していました。でも上記の説明で、よく分かりましたし、納得がいきました。
「コショウの記憶」というのは、トウガラシはコショウの代わりにコロンブスがヨーロッパに持ち帰ったことで伝わったという話が、紹介されているからです。
ヨーロッパに「芋」がなかったとは知りませんでしたが、「火あぶりの刑」はもはや、喜劇ですね。
ヨーロッパ人が肉をよく食べるようになったのは、ジャガイモの普及後だとは知りませんでした。
フランスにジャガイモを普及させるための策略も面白かったです。引用だと長くなるのでまとめます。七年戦争の時にドイツ(多分、プロイセン)の捕虜となり、ジャガイモの味を覚えたパルマンティエ男爵が、大飢饉の際の救荒食としてルイ16世にジャガイモを提案する。彼の提案に従い、ルイ16世はボタン穴にジャガイモの花を飾り、王妃マリー=アントワネットにはジャガイモの花飾りをつけさせ、まずは美しい観賞用の花としてジャガイモの栽培がフランスの上流階級に広まる。更にパルマンティエとルイ16世は国営農場でジャガイモを展示栽培させ、「これは非常に美味で栄養に富むので、王侯貴族が食べるもの。盗んで食べた者は厳罰に処す」とお触れを出し、大げさに見張りをつける。しかし夜になると警備を手薄にし、わざと盗み出させ、結果、庶民の間にジャガイモが広まる(p.80~81)。
わざと盗ませるのは、プロイセンのフリードリヒ2世(ジャガイモ大王)と同じやり方ですね。しかしこれを見ると、ルイ16世、意外と頭が良いかも。もちろんパルマンティエに言われるがままに動いただけかもしれませんが、それが正しいやり方だと見抜く力はあったということだと思います。
うーむ、という気がしてしまいます。
トマトって、そんなに生産されているんですね。なお、トウモロコシが世界で一番多く栽培されている作物であることの重要さが、この後明らかになります。
宋の時代までは中国でも抹茶が飲まれていたとは、知りませんでした。
稲に連作障害が起きない理由が分かりました。
味噌は「戦陣食として、無くてはならないものだった」ということの説明なのですが、この説明でいくと、味噌は受験生にも最適ということになります。受験生は、味噌汁や味噌おにぎりを食べた方がいいかもしれません。
輸出された醤油を、ヨーロッパ人がどのように使ったかが気になります。
こういうところでも、アメリカの意向かー。戦争に負けるって、辛いですね。
古代エジプトのピラミッドを作る労働者たちに、タマネギが支給されていたという話が載っているのですが、これ、一般的にはニンニクだと言われていますよね。でもタマネギの方が一応そのまま食材になるという意味で、正しいかも。タマネギもニンニクも同じネギ属で、疲労回復などの効用は共通するし。ただ、以下のエピソードについては、サイズ的にニンニクの方が当てはまる気が……。
この話、ちょっと面白いです。しかしそう考えると確かにトウモロコシって、不思議ですね。
これも面白かったです。
ここまでくると、面白いというより、何だか愕然としてきます。
だからトウモロコシが、世界で一番多く栽培されている作物なわけですね。
「トウモロコシには明確な祖先種である野生植物がない」(p.156)とか、上記の「初めから作物として食べられるために作られたかのような植物」という記述を合わせて考えると、本当にトウモロコシが宇宙からやってきた植物な気がしてしまいます。それも宇宙人がもたらしたわけではなく、トウモロコシ自体が意志を持った宇宙人で、地球を乗っ取るためにやってきたのかもしれません。
「おわりに」の最後の記述も、何となく意味深です。
ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』でも、「ヒトが小麦を栽培化したのではなく、小麦がヒトを家畜化した」という視点が提示されていますが、小麦には曲がりなりにも祖先種があるので、やはりトウモロコシこそが人類を家畜化するために、宇宙からやってきたのかもしれません。
見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」からトウモロコシの写真を使わせていただきました。
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