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【読書】もう一つのシナリオはない~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.460 2023.8.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第63弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「知らなかった、戦争PTSD」です。

アジア・太平洋戦争中に戦場でのストレスなどが原因で戦争神経症を発症した日本兵と、彼らが家族に与えた影響についての記事です。非常に重く、読んでいて辛いですが、目を背けてはいけないことです。


多くの戦争体験が語られてきた沖縄でも、「”語られないこと”や”語ることのできないこと”がたくさんありました。語られていることだけで戦争を知ったふりをしてはいけない」

p.13

特に家庭内のことは、語られない、語ることができないことが、たくさんあるわけです。


子ども時代に第二次世界大戦を経験している世代をドイツでは「戦争の子どもたち(Kriegskinder)」と呼ぶ。戦争の子どもたちを親に持つ世代が「戦争の孫たち(Kriegsenkel)」で、年代的には1960~1975年生まれが該当する。

p.14

私はまさに「戦争の孫たち」の一人です。私の中に、戦争を経験した祖父や父の傷やトラウマが受け継がれているかと言えば、多分そうであろうと認めざるを得ません。

それこそ家族の事なので、曖昧な書き方しか、少なくとも今はできませんが、父方の祖父はシベリア抑留を経験しています。幸い、戦争犯罪にあたることはしていないようですが、100%の被害者であったというわけでもありません。


戦争体験のトラウマの負の連鎖を断ち切るために必要なものは何なのだろうか。
「各自が自分の家族の歴史に関心を持って向き合うこと、何かに安易に従属することに慎重になること、そして他者へのエンパシー(共感力)を育てることだと思います」(中略)「祖父母や親世代の負の遺産と向き合うことができれば私たちは、何を受け継ぐべきで何を受け継ぐべきではないのか、選ぶことができるはずだからです」

p.15

私もいずれは、家族の歴史に向き合わねばなりません。


特集以外では、まず「スペシャル・インタビュー」でのポール・サイモンの、「もう一つのシナリオなんて存在しない。起きなかったことについて考えるのは時間の無駄だよ」(p.5)という言葉が印象に残りました。


「雨宮処凛の活動日誌」で紹介されている、2023年9月22日からの「NO LIMIT 2023 TOKYO高円寺番外地」を説明する、以下の言葉も良かったです。

アジアの国々で緊張が高まっても、とにかく民間人同士が仲良くなりまくっていたらなんとかなる、という思い
集まるのは、世界中の「国がいくら分断煽ったって関係ないぜ」系の人たちである
私たちはとっくの前から国境を越えてともに生き、ともに活動し、一緒に次の世界を夢想し、実現させている。

p.16

こういう心さえあれば、戦争なんて起きないはずですよね。


香山リカさんの「むかわ町穂別診療所の四季」にも、考えさせられました。患者さんたちが自家製の農作物などをくれるので、ある時買ったお菓子をあげたら、むしろ悲しそうな顔をされてしまった、というエピソード。むかわ町では、互いにたくさんあるものを周りに配るので、「食べものにお金を使うことはまずない」そうで、それを香川さんは「理想の助け合い」と表現しています。こういう状態に、日本が、そして世界が回帰していけば、現代社会が抱える問題の少なくとも一部は、軽減されるのではないでしょうか。


株式会社リノベーターの松本知之さんの、空き家などに「快適に暮らせる程度の最低限」のリフォームをした上で、高齢者などの住宅確保困難な人に低家賃かつ、「入居審査なし、初期費用なし、保証人なし」で物件を課す実践は、素晴らしいです。誰にとってもウィンウィンですよね。こういう実践が、ぜひ広がってほしいです。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださったY.Tさん、いつもありがとうございます!



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margrete@高校世界史教員
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