【読書】ヴラド計画は成功したのか~『創竜伝3<逆襲の四兄弟>』(田中芳樹)~
講談社ノベルス版では、この巻から表紙だけではなく口絵のミニポスターや挿絵も、天野喜孝のものになります。だからというわけではないですが、「創竜伝」というシリーズのキャラが固まり、シリーズとしての安定感が出てきたように感じました。
1988年発行のものの画像は、以下のとおりです。
この巻では、世界を陰で操る「四人姉妹」が日本に仕掛けたヴラド計画について触れているのですが、読んでいて暗澹たる気分になりました。吸血鬼ドラキュラのモデルとなったヴラド=ツェペシュの名にちなむこの計画は、日本人を精神的に劣化させることが目的です。その結果生まれるのは、文中の表現を借りれば、こんな人間。
これが書かれた当時は、ホームレスを集団で襲うとか、匿名で嫌がらせの手紙を送るといった行為が行われていたわけですが、21世紀の現在、SNSの登場により、この傾向に拍車がかかっているのは間違いないです。いわゆる「炎上」で、相手を死にまで追い込んでしまうのですから。
作中にあるように、「四人姉妹」の陰謀で日本がそうなってしまったのなら、ある意味ましです。でも陰謀でも何でもなく、そうなる道を自分自身で選んでしまったのでしょう。
そして20世紀の当時も21世紀の今も変わらない真実は、以下の言葉。
だからこそ香港では周庭(アグネス・チョウ)をはじめとする民主化を求める人々が弾圧され、ロシアではナバルヌイが毒殺未遂の挙句に拘束されているわけです。彼らに寄り添う心を、失いたくないものです。
<追記>
ナバルヌイ氏は2024年2月、47歳で刑務所で亡くなりました。
一方で、心に刻むべき、希望を感じる言葉も見つかりました。
むやみやたらと反逆するのが正しいとはもちろん思いませんが、批判精神は持ち続けたいものです。
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