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【読書】隔離や分離は逆効果~『まんがパレスチナ問題』(山井教雄)~
古代に始まり、2004年にアラファトが死去するまでのパレスチナ問題の原因と現状について、まんがでまとめた意欲作です。まんがというか、正確にはイラストに文章が付くスタイルなので、絵本とも言えます。まぁ絵本にしては、文章量が多いですが。
↑kindle版
ユダヤ人の少年ニッシム、パレスチナ人の少年アリ、そしてエルサレムに住む喋るねこの3人(?)の会話で進むので、とても読み易く、分かりやすいです。分かりやすすぎて、ちょっと解釈がゆるいのではと思わされる部分もあるとはいえ。
イスラーム教の創建者をモハメッドと表記しているのは、ちょっと気になります。マホメットと書かないだけ良いですし、モハメッドが間違っているわけではありませんが、ムハンマドが一般的だと思います。
ユダヤ人を迫害したり虐殺したのは、いつもヨーロッパのキリスト教国じゃないか。
オスマン・トルコやグラナダ王国なんかのイスラム国では、イスラム教徒とユダヤ人は平和に共存していたんだ。パレスチナでも1000年以上平和に一緒に暮らしてた。ヨーロッパの国々も、ユダヤ人を差別しないで社会に同化することを認めて、共存していれば問題はなかったのに。ユダヤ人を迫害したり、虐殺したりして、人道上の問題になって収拾がつかなくなったんで、パレスチナにユダヤ人問題を押しつけただけじゃないか。
この一節に、パレスチナ問題の本質が凝縮されています。
ニッシムとアリの思いがけない関わりが、最後の方で明らかになったことには唖然。映画『もうひとりの息子』と同じじゃないですか。実際にそういう手違いが何件か起きていたのでしょうか。
ニッシム:民族意識なんて、血やDNAの問題じゃなくて、教育や環境によって簡単に作られちゃうんだね。
アリ:民族的憎しみもね。それが、まるで歴史的事実で、人の力ではどうにもならないもののように思われてる。だから、世界のどこかで民族紛争が起きると、「つまらない民族意識なんか捨てて共存しよう」っていう解決法には向かわないで、壁を作るとか、国をふたつに分けるとか、ふたつの民族を引き離すことしか考えない。
ため息です。
民族紛争解決のポイントは、「憎しみや恨みを忘れて、テロと報復の連鎖を断ち切ること」と、「隔離や分離をしないで多民族が平和に融合した社会を目指すこと」だニャ。
「憎しみや恨みを忘れ」ることはできないし、そうすべきだとも思いませんが、許しあう姿勢が必要ですよね。難しいことではありますが。
世界中に民族は約3000、言語は約5000あると言われています。でも国の数は200しかありません。どう考えても、各民族の自決、分離独立は不可能です。人種、民族の壁を越えて平和に共存する方法を一緒に考えてみたいと思うのです。
解釈がゆるいかなと思いつつも、パレスチナ問題を理解する上で、参考になる箇所はたくさんありました。引き続き続編も読もうと思います。
見出し画像には「みんなのフォトギャラリー」から、分離壁の写真をお借りいたしました。
↑新書版
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