映画を観て原作もぜひ読みたいと思い、図書館で予約したのが、ようやく届きました。
↑kindle版
届いたら、あまりの分厚さに引きました。これを2週間で読めるのか不安になったものの、読み始めるとするする読め、ほっとしました。
2020年、コロナで首相が亡くなってしまい、代わりにAIとホログラムで復活させた徳川家康をはじめとする歴史上の偉人が内閣を作る、という荒唐無稽な設定ですが、結構勉強になってしまいました。何せ「この物語には、歴史や政治の用語が多数登場する。(歴史や政治になじみがない人でも楽しめるように注釈がいれてある)」(p.14)という親切さなので。
冒頭から、おおと思いました。
能は室町時代に生まれていたし、「パックス・トクガワーナ」という表現も初耳です。もし本当にあるとしたら、「徳川の圧倒的な軍事力を背景に、他の勢力が戦争をしようと思わなかったから達成された平和」という意味になってしまうので、そういう意味でも謎です。
つまり、ちょいちょい変だなぁと思う部分もありますが、面白さの前では重箱の隅をつつくような瑕疵なので、まぁ良いでしょう。
「徳川内閣組織図」を見て、あれと思いましたが、映画版と一部違うんですね。法務大臣は映画版では聖徳太子でしたが、原作は藤原頼長、文部科学大臣は映画版では紫式部でしたが、現作は菅原道真。藤原頼長はマイナーなのでメジャーな聖徳太子に変えたんだろうし、紫式部にしたのは大河ドラマにうまく引っかけるためでしょうね。他に女性の閣僚が北条政子しかいないので、女性の閣僚をもう一人、という意味もあったかもしれませんが。
ちなみに藤原頼長は、こういう人です。
この言葉が、最後に効いてきます。
へー。
ほほう。
江藤新平についても、名前は知っていたものの、よく分かっていませんでした。
江藤新平が佐賀の乱を起こさなければ、明治政府は、そして今の日本は違ったのかもしれません。作中の江藤が言うように、龍馬が「用心を怠り、暗殺などされたため、薩長の者どもが政を私ごとにしたのだ」(p.57)というのも当たっているかもしれませんが。
合間合間に偉人の名言が載っているのですが、これがまた良いです。
世の政治家に、心に留めておいてほしい言葉ですね。
官房長官が毎日2回記者会見を開いているとは知りませんでした。そしてその重要なポストに、最強内閣では坂本龍馬が就いています。
月代を剃り始めたのが室町時代とは知りませんでした。それ以前は、蒸れを気にしていなかったというか、耐えていたということ?
なるほど。
ほうほう。
これ、分かる気がします。
綱吉に仕えた荻原重秀のことも、初耳でした。
これ、すごく納得がいきます。福島第一の廃炉作業を始め、これを徹底すれば、無駄なく進む仕事はたくさんあるでしょう。
徳川吉宗についても、初耳の情報がありました。
5代将軍と8代将軍ではまったく時代が違うかと思いきや、面識があったというのには驚きました。
重要な指摘ですね。
教育に関わる者として、心に留めておきたいです。
男性の参加者が3人とは知りませんでした。
滝沢馬琴が「ほとんど原稿料だけで食べていけるようになった最初の著述家と言われている」(p.205)というのも、初耳でした。
作中の坂本龍馬の言葉ですが、なかなか重いです。
作中、SNSでの炎上をきっかけに、女性が命を絶つという出来事があるのですが、それについて総務大臣の北条政子が国民に向けて語る言葉が良いです。
平賀源内が土用の丑の日に鰻を食べる習慣の発案者なのは知っていましたが、そもそも「丑の日には『う』のつく食べ物を食べればいい、という信仰」(pp.304-305)が先にあったからだとは知りませんでした。
本当に、そうですよね。
これまた真実。
本多正信が、「家康が1616年6月1日に亡くなると、その49日後に後を追うようにして亡くなった」というのも知りませんでした。
こんなメディアでは困りますが、そうなってしまっていますよね。
原作は映画とは展開が異なる部分があります。でも伝えたいメッセージは同じですね。最後の徳川家康の記者会見での言葉は、なかなか良いです。
上に立つ者だけではなく、すべての人が過去を知る必要があるから、私は歴史の教員をしています。
龍馬の最後の言葉も、心に染みます。
というわけで、選挙に行くこと、特に期日前投票をお勧めする記事を載せておきます。
なぜ第1部と第2部で字のフォントやポイント数が変わるのかは最後まで謎でしたが、まぁそんなことはどうでも良いですね。厚さの割には読みやすい本でした。
見出し画像は平賀源内にちなみ、鰻重にしてみました。
↑単行本(ソフトカバー)