【読書】国民国家とは~『国民国家とナショナリズム 世界史リブレット35』(谷川稔)~
久しぶりに、世界史関連の本の感想を投稿します。
主にドイツとフランスを手掛かりに、「国民国家」がいかに形成されたかを論じています。たまたまここしばらくの間、18世紀から19世紀後半までのヨーロッパ史を教える機会がなく、そのあたりの知識が薄くなっていたので、大変勉強になりました。特に普仏戦争をめぐる事柄を中心に、通り一遍で知っていた事柄の背景を知ることができたのが良かったです。
私は本を読んでいて気になった箇所に短冊をはさむのですが、本文はわずか79ページなのに、20枚以上の短冊をはさむ羽目になりました(^-^;
「本文はわずか79ページ」と書きましたが、この薄さが良いです。本文の上に注釈があるのも良いです。注釈が巻末だと、いちいちページをめくって読むのが億劫なので。
印象に残った部分。
3年とはけっこう短い気もしますが、ラグビーに限らずほかのスポーツも同じようにすれば、国際大会が代理戦争的な緊張感をはらむのを防ぎ、純粋にプレーを楽しめるのではないでしょうか。
歴史を教える教員の一人として、考えさせられます。
いわゆる「グローバル化」が進む現代だからこそ、心に留めておかねばならない言葉だと思います。
1つ目の引用の「国民とは日々の住民投票なのだ」という言葉は、とても気に入りました。別の箇所ではフランスについて、「住民の主体的参加を基本とする市民的・領域的ネイション」(スミス)という表現が使われています。反面、だからこそ学校で各地方の言葉を否定するフランス語教育が行われるなど、「地域的・文化的マイノリティの排斥に転化」することもあるわけですが。
気になるのは、日本がドイツとフランスの悪いとこどりになりつつあるのではないかということ。つまり、「人種的・排外主義的国民形成に陥」っている上、「地域的・文化的マイノリティの排斥」もやっている気がします。
ナショナリズムの危険性を端的に表現した言葉です。
多文化主義イコール善なるものと考えてしまいがちですが、その危険性を指摘していることに、はっとさせられました。そしてキーワードはやはり「寛容」なのですね。寛容については、以下の記事をご覧ください。
発行が1999年10月なので、2015年以降の地中海を渡る移民・難民の増加に伴うヨーロッパ各国での排外主義的傾向や、2016年のイギリスのブレグジットの決断などは、当然踏まえていません。だから巻末の「国民国家より高次の統合機構があってはじめて地域やエスニー(注:エスニック共同体)の自治は安定をえる」とか、「やがて自治と独立の区別が無意味になる、とまではいわないが、あえて独立する意味は希薄になるだろう」という言葉は、甘く感じられなくもないです。
でもそれでもあえて、「そういった時代の地球規模での到来を望みつつ、筆を擱くことにしたい」という最後の言葉に、心から同意します。
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