茂兵衛はついに、百人を率いる鉄砲大将となりました。足軽だった頃を思うと、隔年の感があります。
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まさに有能さが認められればこそ、今巻では茂兵衛は酷使されまくります。茂兵衛なら潰れる心配はないでしょうけど、現代人なら「有能な者は酷使する」を実践すると、潰れてしまいそうです。
武田家滅亡の直前、浅間山が噴火したそうです。「国衆や地侍たちは、領地の復興に気がいって」(p.90)しまい、武田家のことどころではなくなるわけで、勝頼はまさに天運が尽きた状態だったわけですね。
俸禄は少ないけど、気軽な下っ端。上に立つ者は、実入りは多くなるけど、苦労も多くなる。難しいところですが、私は下っ端でも良いかな。まぁ収入は、多いに越したことはないですが。
しかし穴山梅雪の手紙を読み、「眼福にございました」(p.157)と言った茂兵衛には、何だか感動しました。1巻の暴れん坊が、こんなセリフを言えるようになるとは。
読んでいるこちらも、今巻は疲れました。
武人である茂兵衛の目から見ると、信玄の躑躅ヶ崎館も信長の安土城も、そして「まだ御土居や濠もな」い京の都は不用心と感じられます。それに対する茂兵衛の、というより作者である井原忠政さんの解釈かと思いますが、面白い考察です。
信長の戦いだけではなく、他の戦いでも、行われた季節に注目して考察すると、面白いことが分かりそうです。
さて次巻は、家康の人生でも3本の指に入るであろうピンチの1つである伊賀越えです。それに付き従う茂兵衛は、どうやって危機を乗り切るのでしょうか。
見出し画像は、浜松市内で見かけた出世大名家康くんの看板です。
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