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【読書】「人間」としての正義とは何か~勝手に応援!『ビッグイシュー日本版』(VOL.490 2024.11.1)~
『ビッグイシュー日本版』を勝手に応援する記事、第93弾です。そもそも「『ビッグイシュー日本版』とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。
今号の緊急特集は、「変えよう!避難所生活」です。
2012年にイタリア北部地震に見舞われたモデナの避難所を訪れた榛沢和彦さんの報告が、まず衝撃的でした。
「衣食住の食住とトイレ環境が整っていました。家族ごとに入れる大きなテントが並んでいて、中にはカーペットが敷かれ、人数分のベッドがありました。(中略)被災者や支援者が一緒に温かい料理を食べ、コンテナ式の水洗の仮設トイレが設置されていました」
2012年ですよ。それから干支一巡り分経っても、日本の避難所はこうなっていません。
なお「被災者と支援者が同じテーブルで食事するのは、料理がおいしくなかった場合、みなが遠慮せずそう言えるように」(p.30)という意味があると、「編集後記」に書かれていました。逆に、「おいしいね」と言い合えることにも意味があると思います。
「衛生面から寝食の場は分けられています」(p.10)とも書かれていましたが、この当たり前すら、日本では完全には実現できていませんよね。
「イタリアは“市民社会生活保護”の観点から、被災した地域の人たちが早く仕事に復帰し、そこで生活のサイクルを回していけるようにしています。それが“公共の福祉”であり、地域や国の復興にもつながるという共通の理念があります」
なるほど。
特集以外では、「スペシャルインタビュー」の内田也哉子さんの話に出て来たことが、まず印象的でした。
「無言館の監事でもある元日銀総(原文ママ。総裁ですね)の福井俊彦さんは89歳なので、戦争のことをはっきりと覚えています。疎開先の四国でみんなと登校していた時、向こう岸の広島に原爆が落ちた。その瞬間、足元から地響きが起き、いわゆるキノコ雲をその目で見て、恐ろしくて家に逃げ帰ったそうです。こうした生の戦争体験を聞かせてもらえるのは、本当にかけがえのないこと。おすそ分けしていただいた話は、次の世代にシェアしていきます」
原爆投下を対岸から観た話は初めて読みました。こういうちょっとした話こそ、貴重ですよね。私も大切なおすそ分けを頂きました。
再導入が進められつつあるヨーロッパバイソンの話も興味深かったです。
1頭のバイソンが一日に要する食糧の摂取量は、約60kgにも及ぶ。彼らの主食は、木の葉や枝、樹皮、芽、果実、シダ類、キノコ類などだが、植物が密生しすぎないように、適度に剪定・伐採する役割を果たしているという。こういった森林地帯での摂食行動が、地面に日光が届くほどよい空間をつくり、牧草地や荒野が守られ、結果的に植物相に好影響を与えるのだ。いわばヨーロッパバイソンは“森林の庭師”と言える。
加えて、「植物が新しい生息地へと拡大していく役目を果たす。糞尿は栄養源となり、昆虫の生息地にもなる。これらの昆虫が鳥類の餌となるほか、鳥は巣作りにバイソンの毛を利用する。こうした自然のサイクルは、種の保存や生物多様化にも役立つというわけだ」(p.17)。
その上森林火災についても、「バイソンが立ち入った地帯では、さほど急速に燃え広がることはない。前述したように、バイソンの摂食行動が植生に隙間をつくり、乾燥した草を取り除いて、過繫茂を防ぐ」そうです。
更に「750~900kgほども重量のあるバイソンが、ひづめで雪をかき分けると、永久凍土に冷気が送られる」(pp.17-18)ので、永久凍土の保護にも役立つそうです。
良いことばかりのようなヨーロッパバイソンの再導入ですが、
森林所有者たちの多くはヨーロッパバイソンの再導入に反対の立場を取っている。「人口密度の高いドイツでは、バイソンの旺盛な摂食行動が逆に人間の生活にとって不利となる」というのが主な理由
だそうです。自然保護の意識の高いドイツでも、やはりそういう反応が見られるのかと、ちょっと驚きましたが、ヨーロッパバイソンは写真で見ても大きいですしね。何とか共存の道がないものかと思います。
パレスチナ人として初めてイスラエルの病院で働く医師となったイゼルディン・アブラエーシェ博士の言葉も重いです。その半生を追ったドキュメンタリー映画『私は憎まない』の公開に合わせ、来日したそうです。
タイトルの「I SHALL NOT HATE」の意味を尋ねてみた。
「もちろん怒りや絶望にかられそうになることもあります。でもコーランは『忍耐は力であり美徳』と教えています。復讐はさらなる復讐を呼ぶだけです」
ひとつだけ、博士から読者に向けて願いがあるという。それは「この状況をどうか『紛争』や『戦争』という言葉で片づけないで」という強い訴えだ。
「紛争や戦争とは、互いに対等の立場の人間が、相手のものや領土を奪おうと争うことです。でも今ガザで行われているのは、一方的な侵略・虐殺なんです」
「『紛争』や『戦争』という言葉で片づけないで」という言葉には、はっとさせられました。
「ユダヤ人は『ここは我々に約束された土地』だと主張しますが、一体誰が約束したのか。少なくとも我々ではありません」
本当にそうですよね。
「忘れないでください。これは宗教対立でも民族対立でもありません。西欧諸国が一方的に”新国際秩序”を定め、イスラエルが無制限に国境を広げ続け、そんな彼らを無限に援助し続ける米国が起こしている、構造的な問題なんです」
まだ打てる手はあるという。しかもそのカギは私たちの手に握られていると。それは「即時停戦に向けて国際社会が行動を起こすこと」だという。
「気候変動や自然災害、飢えや病に苦しむ子がいます。世界は多くの課題に直面していますが、それらはどれも世界各国のリーダーたちが問題を見て見ぬふりをして、先送りし続けた結果です。今こそ私たちは問われています。『あなた方はこの世界をこれからどうしていきますか?』と。国や民族、宗教を超え『人間』としての正義とは何か。真正面から問い、考え、行動を開始しなければなりません」
及ばずながら、いろいろ行動はしていますが、なかなか状況は変えられません。
今号も、本当に学びが多かったです。
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もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。
見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった平川さん、いつもありがとうございます!
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