現在の世界を表すような言葉の数々~『創竜伝7<黄土のドラゴン>』(田中芳樹)~
6巻から比較的間を置かず、7巻を読むことができました。
↑kindle版
今巻で驚いたのは、竜堂兄弟の好敵手であり天敵の小早川奈津子が登場したこと。久しぶりに読んだので、完全に忘れていました。そうか、ここで登場したんでしたね。
↑新書版。私はこちらで読みました。
印象に残った部分。
内閣も結局、交替しなかったし、野党は何ひとつ建設的な提案ができない。だいたい、自分たちがどういう社会をつくりたいか、それがわかってないんじゃないかしらね
これは竜堂兄弟の叔母にあたる冴子が作中の日本の情勢を語った言葉ですが、現在(2021年11月)の日本について語っているかのようです。
一時ミャンマーと改称していたビルマでは、軍事独裁政権が狂気のような弾圧と虐殺をおこなった。世界は独裁者たちを非難したが、口先だけで、軍隊を送りこんで彼らを打倒しようとはしなかった。
これも現在のミャンマーの状態を言っているようですね。なお「一時ミャンマーと改称していたビルマ」となっているのは、1989年に軍事政権によって国名がミャンマーに改称されたわけですが、今巻は1991年に出ているので、「いずれまたビルマに戻るだろ、戻ってほしい」という田中芳樹の願いが反映されているものと思われます。
30年前に書かれた本に、現在の世界を表すかのような言葉、しかも嬉しい言葉ではなく、がっかりするような言葉が見られるのは残念です。
自国民を思想のゆえに強制収容所に閉じ込めるような国家には、存続する価値がない。
これは竜堂兄弟を「不詳の弟子」と呼ぶ黄老の言葉ですが、古今東西すべての国家に当てはまる至言です。
しかし竜堂兄弟、アメリカ軍、ソ連軍に加え、今巻では中国軍に大打撃を与えています。特に各国の核兵器が大幅に減らされています。現実でもこんな勢いで、かつ人にも環境にも影響を与えずに核兵器が減ってくれないものかと思ってしまいます。
天界には官僚制度も学校もちゃんとあります。神さまたちだって昇進試験を受けなきゃならないのです。
最後の「いつものように座談会」での続の言葉ですが、そうか神さまも昇進試験を受けるのか、と妙に納得してしまいました。
見出し画像は、ビャンビャン麵です。竜堂兄弟が行ったあたりで食べられているものなので。
↑kindle版
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