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【また会おうね】そらが空へと羽ばたいた

11月18日の夜。
大事な家族、そらが永遠に時を止めたあとの話。

母のペットロスを心配していた私だけど、母より私の方が何倍も泣いた。妊娠によるホルモンバランスの崩れもあるのか、眠るそらの後頭部を見るだけで涙が溢れて止まらなかった。そらの感触を記憶するために、何度も何度もふわふわの身体を撫で続けた。撫でるたびに涙が溢れた。

幸いそらの最期に立ち会えたこともあって、旅立ちの準備はスムーズにできた。身体を綺麗に整えて、心は痛いけどそらを綺麗に旅立たせたかったからしっかり身体を冷やした。買ってきたドライアイスはずっしりと重かったけど、お店の人に、「こんな重いもの乗せるの可哀想と思うかもしれない。けど乗せた方が綺麗なままですよ。」と教えてもらって。専門の人に教えてもらった通りにすると、特にそらの身体に霜が降ったりすることもなく本当にずっとずっと綺麗なそらのままだった。匂いもそらのまま。体液や排泄物が溢れることもない、綺麗好きなそらのままだった。

旅立った日の夜とその次の日は、そらといつものように過ごした。食事と大好きだったお菓子をお供えして、その隣で私と母はいつものようにご飯を食べて、たくさん話した。そらとのお別れの場所をどこにするか、母と何時間も話し合った。そらを迎え入れたペットショップの近くの火葬場に決めた。そらを迎えた場所で、そらを空へ送り届けたかった。

その日の夜は、いつものようにそらと母と私の3人で眠った。


次の日。

花がお線香の代わりになると聞いてお花を買いに行った。そらを送るための花を選んでいることが悲しくなって、花屋でも泣いてしまった。「これくらいでどうですか?」と言われて持ってきてもらったお花の量が少なくて、「もっともっとください。この3倍くらい。お金のことは気にしないので。」と言って、たっくさんのお花を買った。このお花が私からそらへの最後のプレゼントとなった。

そらをバギーに乗せて、最後のお散歩にも連れて行った。何度も母と通った近くの神社。母は嬉しそうにバギーを押していた。「最後にこれて嬉しいね。ちゃんとお空に行けるようにお祈りしようね」。そう、ずっとずっとそらに話しかけていた。私はそんな姿を写真と動画におさめ続けた。この記録が母の宝物になりますように。

「リュックにお菓子とご飯詰めてあげて、それ背負わしていかせてあげよ。」

母が言う。母は家にあった赤い巾着袋でそらのためのリュックを作りはじめた。「何を作ってるんやろう・・・ッ。」そう言いながら、目の悪い母が泣きながら一生懸命にそらのリュックを縫ってあげていた。

出来上がった巾着リュックには、そらの名前と住所を書いてあげた。いつでも我が家に帰って来れるように。そして、犬見知りのそらが1人で寂しく虹の橋を渡ることにないよう、お友達ができることを祈って。

巾着リュックはたくさんのご飯、お菓子、写真を詰めて、パンパンになった。「重いんですけど。」とそらに言われてしまうような気がするほど。

たくさんのお菓子とご飯を詰めました
たくさんの家族写真も詰まった、
幸せリュック


空へ旅立つ当日の朝。11月20日。

もうすぐそらがこの家を出る時間。もうそらのふわふわでちっちゃい身体が、この家に帰ってくることはない。涙が溢れて止まらない。こんなにも可愛いそらのままなのに、空へ送り届けないといけないだなんて。ワンワンと泣き続けた。

知り合いに、『まにょちゃんは妊娠中だからお別れの場所には行かない方がいい』。そう言われていた。だけど、母1人でそらとお別れをさせることは私にはできなかった。迷信より、そらとの別れの方が大事だった。火葬場には行かない、拾骨はしないことを母と約束して、お腹の中の赤ちゃんを守るという手鏡を腹帯のなかに入れた。

母とそらを外へ運び出す。着丈に振舞っていた母も泣いていた。笑顔で送るなんてできなかった。冷たいままでもいいから、動かなくてもいいから、このままずっと家にいてほしかった。

火葬場へ向かう道中に、そらがお世話になったトリミングサロンへ寄った。人見知り・犬見知りのそらだけど、唯一このトリミングサロンのおばちゃんのことは大好きだった。そしておばちゃんもそらのことだ大好きだった。サロンがお休みの日でも、「そらちゃんならいいですよ」と言ってそらのためにサロンを開けてくれていた。おばちゃんにそらの旅立ちを電話で伝えた時には、「そらちゃんは本当に特別で・・・・・・。もう犬じゃなかった、人間の赤ちゃんだった。あの優しいおめ目が忘れられない。本当に特別だった。」と言ってくれた。

トリミングサロンで母と挨拶をした。「そらが大好きだった場所だから寄っただけです。無理にそらに会ってほしいわけではないんです。」と伝えたけれど、「会わせてください。お顔を見させてください。」と言ってくれた。そらは大好きなおばちゃんに、優しく頭を撫でてもらった。「本当に寝てるだけみたい、可愛い」。そんな言葉をかけてもらっていた。そらは、本当に幸せな子。


12時前。そらの火葬場についた。
田舎の火葬場だからどんな施設なんだろう、汚かったりしたらやだなと思っていたけれど。その心配とは裏腹に、とっても素敵な施設だった。自然に囲まれた大きな施設。下には大きなドッグランがあって、今を生きる愛おしい犬たちが走り回っていた。飼い主さんが笑っていた。坂道を上ったところにお別れの場所があった。数えきれないほどの命が巡りめぐってこの世界が続いてると実感した。建物もとても綺麗で、穏やかそうなスタッフさんが立って私たちを迎えてくれた。

そらを預け、必要書類を書く。着々とお別れの準備をする。

最期にそらを旅立たせるための綺麗な赤色の箱を用意していたけれど、母が、「やっぱり棺にちゃんと入れてあげよう。棺に入れるだけで人間も犬もきっと自分の死を実感するんやと思う」と言って。小さな棺を購入した。

「お別れの準備ができました。」

そう言われ、待合室からお別れの部屋へ向かう。

その部屋に入ると、小さな棺の中ですやすやと眠る愛おしいそらがいた。持ってきたお供物やお花もそらの前に綺麗に飾られていた。穏やかな音楽が流れていた。入った瞬間に、「ここでそらを見送れて嬉しい、よかった」という気持ちになった。全て葬儀場のスタッフさんのおかげ。

最後にそらを抱く。スタッフさんが綺麗に整えてくれたそらは、少し目が開いてしまっていたのか、垂れ目だった目がキツネさんのようにキュッとつり目にされていてちょっと笑ってしまった。でもこれもスタッフさんの心遣い。

冷たく固くなってしまったそらだけど、胸に抱くとそらはそらだった。ふわふわで優しい、愛らしいそら。何度も顔を寄せて、「大好きだよ。愛してるよ。また会えるよ。家族になってくれてありがとう。そばにいるよ。」と何度も声をかけた。

最後はそらが大好きな母に抱いてもらった。母もそらに顔を寄せて、声にならない声をあげながら涙でそらを濡らし、ありったけの愛の言葉を送った。

母が作った愛の塊のようなリュックをそらに背負わせる。その姿は本当に愛らしくて、愛らしさのあまり『可愛すぎるね』と笑ってしまうほど。そらの可愛さが私たちの悲しみを和らげ、棺にお花や思い出の品を入れる時はそらを優しい笑顔で見つめることができた。最期の最後まで、そらに救われる私たち家族。

火葬場までの付き添いはできない規則だったため、母と2人、そらを置いて部屋を出た。泣き崩れながら部屋を出るとおもっていたけれど、あまりにもいいお別れができたからか『よろしくお願いします』とスタッフさんに頭を下げ温かな気持ちで部屋をあとにすることができた。そらとスタッフさんに心から感謝したい。

火葬の間は待合い室で待っていてもいいと言われたけれど、母は私をお昼ごはんに連れていってくれた。『そらはここで待っててなんておもってない。まにょちゃんのお母さんをちゃんとしてあげてって言うてるはず。だからご飯行こ。』そらの相棒の母が言うのだから、間違いない。

車を出したとき、煙突がついた建物をみつけた。おそらくあの建物からそらは空へと羽ばたいていく。『そらー!!!ありがとうねー!!!しっかり行くんやでー!!!!!!』。大きな声援を、母が送った。


近くにあった食事処は、新鮮な野菜、麹、発酵食品を扱った料理を提供するようなお店だった。まるでそらが、『介護ありがとね、お別れにきてくれてありがとね。赤ちゃんのために美味しいご飯食べてね。』と言ってくれてるようだった。『お別れ場所、ここにしてよかったね。そらの導きだね。』と母と笑いあって、涙1つ流すことなく美味しくご飯を食べた。


拾骨の時間。
母1人で拾骨の部屋へ向かう。母は昔から火葬場や拾骨に恐怖心を抱いていて、祖父が亡くなったときでさえ拾骨はしなかった。そんな母1人で拾骨へと向かわせるのは胸が痛かったけど、私も私でお腹の中の子の母だから。私にできる最善は、『ちゃんとそらを迎えにいってあげて』と母を送り出すことだった。


20分ほどで母は帰ってきた。母の顔に、涙の痕はなかった。『最初見たときはやっぱりびっくりして。そらこんなんなってもたん?!って。でもな、そら歯全部残っててん。すごない?17歳やで?恐竜の剥製みたいに残ってて笑ってしまった。そのあとはなんか楽しくって言うたらあれやけど、悲しむよりも、なんかまじまじと見てちゃんと拾骨できた。あまりにも骨綺麗に残ってたから量が多くて、スタッフさんに悪いけどちょっと手伝って~って言うたくらい。』

あっけらかんとした母がそこにいて少し安心した。そうして母は、そらの母としての役目を終えた。


粉骨して帰ってきたそらは、とてもちっちゃな姿で帰ってきた。姿形はあまりにも違うけど、なんだかその姿も可愛かった。『そらちゃんバージョン2!!!』と言って、母と笑いあった。


今そらは、家族の写真に囲まれて我が家で眠っている。吠えたり動いたりはしないけれど、そらはこの家にいる。姿形を変えただけで、私たちの愛おしい家族であることに違いはない。愛する心に変わりはない。


そら、愛してる。

空でいっぱい走り回って、空で私たちを見守って。赤ちゃんが産まれたら、必ず会いに来てね。

ずっとずっと、大好きな家族だよ。


まにょ。

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