マンションストラクチャー

建築素人ですが、マンション構造を見るのが好きです。

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最近の記事

首都圏に存在するタワマン約190棟の耐震性能の実数値一覧(2000年度以前版)

1.データについて1971年~2004年竣工した一部でも住宅用途のタワマンが対象で、 以前の2003年以後竣工一覧記事(※以後、前回一覧と記載)の物件と一部年度が被りますが、前回一覧に載せてた物件は除外しています。 記事の対象物件を正確に分類すると 前回一覧は2000年に規定された告示波を使っていて、かつ現在でも使用されてるような、直下型地震、海溝型地震、ランダム位相の告示波3波で性能評価した物件が対象です。 今回一覧は、告示波規定前の物件か、告示波を使ってはいるが、3波

    • タワマンの耐震性能の変遷史

      前回の記事で、 タワマンの時刻歴応答解析の「目標値」である「設計クライテリア」は タワマンが建てられ始めた1970年代から現在の2024年に至るまで、 L2で層間変形角:1/100以下, 層塑性率:2以下で変わってないが、 「条件」である「設計用入力地震動」は何回か変更があると言いました。 設計用入力地震動とはタワマンの耐震性能評価時に使う地震波のことですが、詳細については以下の記事を参照してください。 ではどういう変更があったのか、変遷史を見てみましょう。 図で纏めると

      • 1981年の新耐震基準改正がタワマンの耐震性能に与えた影響と旧耐震時代の首都圏タワマン達

        現在、1971年~2004年竣工の首都圏タワマンの耐震性能一覧を纏めてる途中で、やっとある程度の形ができつつありますが、いきなり一覧の数値を見るより、タワマンの耐震性能が時代と共にどう変わってきたか分かれば、 もっと理解が深まると思ってます。 ですので、今後は以下の3部構成で、記事を書く予定です。 1.1981年の新耐震基準改正と旧耐震時代の首都圏タワマン達 2.タワマンの耐震性能が変わった時期とその内容 3.1971年~2004年竣工の首都圏タワマンの耐震性能一覧 今回

        • 鹿島建設のスーパーRCフレーム構法とタワマンの塑性率

          今回のテーマは鹿島建設の制振(鹿島建設は制震の用語を使いますが)技術である、スーパーRCフレーム構法と タワマンの耐震性能評価項目の一つである、塑性率について。です。 ※建築の素人なので、半分妄想レベルと思ってください。 塑性率とは 塑性率については、前の記事でも軽く話しましたが、地震によって受けた損傷の程度を表す数値で、これが小さいほど余裕度がある建物と言えます。 この数値が1を超えた時点から建物が壊れ始めるわけですが、 具体的な数値については、以下の記事の最後に一覧

        首都圏に存在するタワマン約190棟の耐震性能の実数値一覧(2000年度以前版)

          首都圏に存在するタワマン約190棟の耐震性能の実数値一覧

          1.データについて集計データ件数ですが、2003年~2023年竣工したタワマンが対象で、 首都圏のタワマン188件 + 大阪のDFS制振タワマン2件 = 190件となります。 東京カンテイのタワマンストック数の記事から推測すると 首都圏の2003年~2023年竣工した全体タワマン数は540棟くらいなので、網羅率としては、35%くらいとなります。 耐震性能数値データの取得元としては、会誌 MENSHIN、会誌 コンクリート工学、過去入手した性能評価機関の性能評価シート、新

          首都圏に存在するタワマン約190棟の耐震性能の実数値一覧

          東日本大震災の長周期地震動による都内制振・免震タワマン被害の実例

          1.制振タワマンの事例東日本大震災で被害を受けたことで、施工不良などの結構ネガティブな記事が書かれたタワマンなので知ってる人がいるかもしれませんが、東日本大震災くらいの地震で首都圏の耐震・制振・免震タワマンでどれくらいの被害が発生するのか、イメージを掴むために取り上げます。 まず最初に断っておきますが、件の制振タワマンは首都圏の耐震・制振タワマンの平均的な耐震性能を上回る性能を持っており、個人的には耐震性能に関しては問題なく、震災の被害は施工不良とは思ってないことは断って

          東日本大震災の長周期地震動による都内制振・免震タワマン被害の実例

          表層地盤増幅率を使用した建物倒壊危険度マップをタワマンにも適用できるか

          東京都は各地域の表層地盤の増幅特性によって、建物倒壊危険度マップを公開しております。 このマップはタワマンにもそのまま適用できるのでしょうか? 答えはこのマップは戸建てや高さ60m以下のマンションには適用できるが、タワマンに関しては各物件ごとの基礎構造を見てみないと分からない。が答えとなります。 表層地盤とは、タワマンの基礎構造(直接基礎や杭基礎、または併用基礎)とタワマンの支持層(東京礫層や上総層群)の間にある、地表面近くに堆積した浅い軟弱地盤のことを指します。 表層地

          表層地盤増幅率を使用した建物倒壊危険度マップをタワマンにも適用できるか

          タワマンの低層階・中層階・高層階ごとの建物被害と室内被害の傾向

          タワマンの建物被害を表す項目は層間変形角で、室内被害を表す項目は応答加速度であることは、以下の記事で取り上げました。 層間変形角が高くなると、主要構造部である梁と柱はもちろん、非構造部材では室内クロス、戸境壁、建物の配管、外壁、窓ガラスなど、建物と密接している部分に被害が出る可能性があります。 応答加速度が高くなると、非構造部材の被害として、室内の設備や家具の転倒、照明器具の落下などの被害が出る可能性があります。 一般的な正方形のタワマンの場合、層間変形角は中間層で大き

          タワマンの低層階・中層階・高層階ごとの建物被害と室内被害の傾向

          タワマンの耐震・制振・免震・免制震の基本的な特性

          1.耐震地震力に対し、柱・梁・壁のような構造体で耐える構造で、他の構造のベースとなる構造です。 1974年竣工の椎名町アパート(鹿島建設)から始まったRC造のタワマンは、高強度コンクリートと鉄筋の開発と共にどんどん高層化していきますが、柱と梁が基盤の目のように繋がる純ラーメン構造では居住空間内へ柱と梁の影響が大きいなどの制約がありました。 この問題を解決するために1990年代からは、柱を細かく配置して梁で結合したチューブ構造や、建物中央に連層耐震壁を配置し地震力を集中負担

          タワマンの耐震・制振・免震・免制震の基本的な特性

          タワマンの耐震性能評価時の設計用地震動

          タワマンは時刻歴応答解析と呼ばれる方法で、建物にいろんな地震動を入力し、層間変形角や塑性率の数値が一定範囲内に収まるか性能評価して大臣認定を取得します。 ここで建物に入力する地震動を設計用地震動といいます。大きく4種類があります。 1.観測波実際に観測された地震波です。標準波や既往波とも呼ばれます。 いくつか種類がありますが、一番よく使用されるのは以下の3波なので、標準3波と言われます。 観測波は実際に起きた地震なので、ある周期は強いけど、ある周期は弱いなどの、周期の谷間

          タワマンの耐震性能評価時の設計用地震動

          タワマンの一般的な耐震性能目標値

          建物の耐震性能設計についてJSCA(日本建築構造技術者協会)が非常に参考になる基準資料を公開しております。 地震の強さと建物のグレードにより、無被害、軽微な被害、小破、中破、大破のどれかの被害状況となります。 中破からは中規模~大規模修繕が必要なるので、地震発生後の住み心地を考えると、極大地震時にもできれば小破以下に被害を抑えることが望ましいでしょう。 耐震性能の評価時に使用するのは主に以下の2つの項目です。 この2つの建物被害の評価項目以外に、地震時の家具の転倒率など

          タワマンの一般的な耐震性能目標値

          タワマンは耐震・制振・免震の中で、本当はどの構造がいいの?

          タワマンの耐震性について、ネットには様々な情報と意見があります。 以下のようなものです。 タワマンのモデルルームで、営業担当者に聞いても謎は深まるばかりです。 耐震タワマンのモデルルームでは、 「敷地や建物の形態によって最適な構造を選択しています。各構造はメリデメあるので、どれがいいかは決められるものではなく、どの構造も安全ですので、ご安心ください。」と言われ、 制振タワマンのモデルルームでは、 「ここは武蔵野台地で地盤がよく直接基礎になっていて、地震が来てもそもそも揺

          タワマンは耐震・制振・免震の中で、本当はどの構造がいいの?