万智ちゃんとファスナーの夜
午前3時、サントリーの発泡酒を飲みながら一人、俵万智の『チョコレート革命』を読む。ひっかかる歌にはふせんをつけながら。ときにホロリと涙を頬に伝わせながら。家族が起きてこないかヒヤヒヤしながら。(うちには個別の部屋が無い)
季節を運ぶ空気のにおい。旅先のスラム街での衝撃。そして大人の恋。
万智ちゃんを好きになったきっかけは、大好きだった小学校の塾の先生だ。あのとき紹介されたのは
「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
という歌だった。短歌とは思えない親しみやすさと言葉の軽さコトの重大さに、小学生ながらポカーンとした覚えがある。とにかく秀逸なのだ、万智ちゃんは。
いつになったら私は、「大人の女」になれるんだろうか。
探れども見えてこない未来像。
燻って仕方がないのに表せない感情。
目に見えないレールの息苦しさとそれを外れる怖さ。
ベットリと根を張る孤独感。
いつも心臓は重たいのにすうすうしている。
思っては消し、書いては消す言葉たち。
いつの間にやらロング缶の発泡酒はすっからかんになっている。
きっと 仮面ライダーのそれのように
僕の背中にもファスナーが付いていて
何処か心の奥の暗い場所で
目を腫らして大声で泣きじゃくってるのかも
先日、ある人から教えてもらったミスチルの『ファスナー』という曲。
きっとみんなファスナーの向こうに、自分にしか見えない世界をもっている。自分のことをまるごと分かってくれる人なんていないし、どんなに仲良くても愛し合っていても、他人とまるごとは分かり合えないと思う。
ただ、ファスナーの向こう側が垣間見えたとき、そしてそこに自分自身との重なりが感じられたとき、グッと「この人のこともっと知りたい」って思うんだ。
人間は中身がおもしろい。私は言葉が好きだし、人間が好きだ。
一人暮らししてみたいと、唐突に思う。家族は大好きだ。離れがたい。しかも私は圧倒的寂しがりである。でも一人暮らしして、もっと自分の人生をきちんと自分で組み立てていきたいと思ったりもする。このままじゃダメなんじゃないかという、何となくの焦りもある。
「一人と独りは違うよ。独りになるなよ」
教えてくれた親友に会いたい。
でもあとちょっと、頑張らなくちゃいけないんだ私は。
とりとめなくいろいろ色々考えてしまう夜は早く寝るに限るのだけれど、酔っ払った頭でもいいから、いっかい言葉に表してみたかった。乱文だけれど、きっと自分の役には立つと思う。
明日もきっとまた、朝には起きられない。