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基礎理論6

今回は肝についてです。

肝の生理効能は

肝主疏泄、肝主蔵血です。

肝主疏泄とは

全身の気、血、津液を循環させる作用のことです。

この作用が失調すると、身体中の流れが滞ってしまうので、あらゆる不調のもとになります。

女性の更年期の代表的漢方薬のように紹介されることの多い加味逍遥散は、この作用を改善させること+軽い血虚を補うために用いるケースが多いです。(つまり肝鬱+血虚です)

この肝の疏泄作用は、ストレスに影響を受けやすいので、イライラしたり鬱々した状態が続くと、作用が低下し気や血の流れの正常さを保てなくなります。

それにより、気持ちが塞ぎ混んだり、怒りやすくなったり、下痢、頭痛、吐血、乳房の張りや痛みなどの症状が出ます。
ストレスと大きく関係する症状なので、実際は加味逍遥散が合う状態の方は女性だけでなく男性にも沢山います。
(しかし、ストレスにより起きる不調は、心が疲れすぎて心の陰虚/陽虚の人もいれば、帰脾湯のように心脾両虚証の人もいれば、肝陽上逆という肝の実証の人もいるので、安易に加味逍遥散を選択しては遠回りになりますよ。)

そしてこの疏泄作用は脾と胃の升降作用を促進させます。

そのため、肝が不調になると、結果、脾と胃の働きも失調してしまう、ということです。

このような五臓の繋がりを感じるとき、中医学の醍醐味だなあ、と私は思います。

西洋医学では、胃痛や下痢や逆流性食道炎などの不具合があれば、まずは胃の検査を、、と捉えますが、中医学では肝が原因である可能性もしっかりあります。

またこの疏泄作用は情志、つまり精神的情緒にも関わります。

本来、気血の運行が正常で、五臓を養うことで、心も保たれ、情志は安定しています。
その運行を停滞させてしまうわけなので、肝の作用が正常でなくなると、五臓の働き、ひいては情志に影響を与えてしまいます。

女性が情緒不安定になりやすいと言われがちなのには、中医学では女性は肝の生き物だという考え方が土台にあります。
月経も妊娠も肝の働きに影響を受けやすいので、精神面に影響が及んでしまうのは実際に避けがたいのです。
そのためストレスを減らすべきなのも事実です。

そのため、加味逍遥散が女性にばかり注目されてしまうのも、理解できないことではないのです。
しかし日々ストレスと闘う男性が、加味逍遥散適応証だった場合、女性の薬と勘違いして避けてしまうと、これもまたイメージ先行による難点の一つだなあと感じます。

この他、肝の疏泄作用は、精子の貯蔵と排泄、月経と胎児の発育を促進する役割もあるので、不妊症や月経異常などの症状は、中医学では肝に注視する場面が多岐にわたります。


肝主蔵血とは

中医学では、血液を貯蔵する器官は肝だと考えます。

常に肝には一定量の血液が蓄えられるように維持され、それにより肝自体を保養します。その血液が十分にあらと肝気が上逆しないように抑えることができます。
この貯蔵されている血液は月経の調節も行い、肝の血液が不足していたら月経不調を引き起こします。

また貯蔵されている血液は睡眠の働きに大きく関与します。

なので、肝の血液が不足してしまうと、睡眠障害が現れやすくなります。
そのほか、四肢が痺れたり動かしにくくなる、目眩が起きたり頭痛がする、イライラしやすい、閉経、月経量の減少、夢が多いといった症状が現れます。

肝は、血液を貯蔵するだけでなく、必要な場所に対して適宜バランスを考慮しながら血液の分配を行います。

そのうえで、出血を防ぐ働きもあわせ持ちます。

出血防止は基礎理論5の脾でも説明しました。
そのため、脾と肝は出血症状の際にまず状態を確認する必要がある臓器になります。


中国では、このような肝の重要性を人々が自然と知っているため、肝を養う薬、生薬、ジュース、食べ物、習慣への関心が高いです。
古代の知恵に対しても、それを利用しようとする人々にも、関心するなあと思います。

当然、使用方法が過剰であったり、方向がずれていたりすることもあるので、その場合の危険性は心配ですが。
正確に理解できれば、家族の健康に取り入れることができるのですごく良いことだと思います。


基礎理論2の通り、肝の華は爪、体は筋、官は目、志は怒です。

肝の血液が不足していると、爪が割れやすくなったり光沢がない爪になります。ダイエットをすると爪が脆くなると聞くことがありますが、必要な血液が不足しているためでしょう。

肝の血液が不足していると、爪が割れやすくなったり光沢がない爪になります。

筋というのは、つまり、肝の気と血が充実していれば、靭帯や関節の動きが自然で、疲労にも耐えられる、という意味です。

目は、肝の状態が現れやすく、肝の血が充足していれば、物をしっかり見ることができます。
しかし肝が弱っていると、はっきりと見えなくなり、肝の気血が上逆すると、目が赤く充血したり目が痒く痛いといった症状が現れます。

志は怒。
いつも怒っている人、イライラを抑えている人は、肝を傷めます。
また、肝の気、血が不足していると、イライラに繋がります。つまり悪循環が発生してしまいます。
肝を大切にするため、できる限りイライラしたり怒ることは避けないといけません。

職場など、もう逃げ場がない状態でストレスを感じている場合は辛いですが、今後の身体のことだけを考えた場合は、いち早くその場を離れることが正しいと私は思います。

それがどうしても難しい場合、自分の気持ちが和らぐ物、趣味、食べ物、そういった方向に気持ちを切り替える時間をもってほしいです。

以上、肝の作用でした☆

次は腎について♪

再见♪

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