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わたしのバイブル 『モダンアンティーク・テーブルウェア』

みなさんには、ご自身にとってバイブルと呼べる書があるでしょうか。

「読んだら人生が変わった」
「つらい時に救ってもらった」
「迷ったらいつも読み返している」

常に傍において、まさに聖書のように心の拠り所となるのがいわゆるバイブルですよね。

私にとっても、「この本に出会ったから今の私がある」と胸を張って言える、そんな1冊があります。



『モダンアンティーク・テーブルウェア 1950~70年代イギリスの可愛い食器たち』

著者:U.K.STOREROOM

アンティークショップ「U.K.STOREROOM」ディーラーの香川賢三さん、青木早苗さんがこれまでに取り扱ってきたテーブルウェアをまとめた1冊。
1950~70年代に製造されたイギリスの食器を豊富な図版とともにメーカー、シリーズごとに紹介しています。主な掲載メーカーはMidwinter、Susie Cooper、Hornseaなど。



「イギリスのモダンアンティークって実際どんなデザインなの?」と疑問な方も多いと思いますので、U.K.STOREROOMさんはじめアンティークショップのオンラインサイトをいくつか引用させていただきます。

※「モダンアンティーク」の補足※
意味としては「ミッドセンチュリーモダン」に近いものと思われます。
(いずれにせよあまり広く使われていない気がしますが…)本書では1950年から1970年代に製造されたものを指しているようです。




中学2年生、地元図書館での出会い


もう十数年前になります。
本がそこそこ好きだった私は、週に1回ほど図書館に行っていました。
はじめは小説をよく借りていましたが、徐々にいろいろなコーナーに足が向くようになりました。

『モダンアンティーク・テーブルウェア』は、生活・雑貨コーナーを彷徨っているとき、たまたま「おしゃれだなあ、かわいい。」と手に取った本でした。

この本は本屋さんで見かけることがほぼないです。
出版が2006年、私がユーズドで購入した2010年頃にはすでに絶版になっていたので(ユーズドも定価以上だった)、もしかしたらあまり世に出回っていないのかもしれません。
そう思うとちょっぴり運命的だったようにも思えてきます。



本がイギリスモダンアンティークの魅力を体現している


当時の私は「アンティーク食器」といえば金彩や装飾を用いたり、繊細な草花が描かれる、きらびやかな品々を想像していました。
ウェッジウッドやマイセンなどに代表されるかと思います。
私にとっては現実と切りはなされた「あこがれのおとぎ話の世界」でした。

だから初めて本書をひらいた時、「半世紀前にこんなにモダンでかわいい食器があったの?!」と驚きました。
そしていま手元にある同じ本を開く私は、「70年前にこんなモダンでかわいい食器があったなんて信じられない…」と思うのです。笑。

これは食器そのものに対する感想ではあります。
しかしここに至ることができたのは本書がイギリスモダンアンティークの魅力を完ぺきにプロデュースして、体現しているからです。

イギリスモダンアンティークの魅力ってなんだろう。
改めて考えた時でてきたのはこんな言葉でした。

シンプルで、モダンで、ユニーク。
一方で品性と奥深さを兼ね備えている。
生活に寄り添うあたたかみがある。

『モダンアンティーク・テーブルウェア』における魅力を言語化したら、私は同じような言葉をイメージすると思います。
写真、テキスト、配色、ブックデザイン、構成、どこをとっても素晴らしく、全てがマッチしているのです。
本書に流れる空気感までも、イギリスのモダンアンティークたちに流れるそれと一致していると感じます。


さらにこの本がすごいのは、中学2年生のわたしにもまったく同じ感動を与えているところです。

美術展の図録を思い出してみると、「写真(図版)は何度も見ても、解説はそれほど読まない」というのはあるあるですよね。かく言う私もその一人です。理由は専門用語だらけでむずかしいからとか、長すぎて読む気になれないとか、白黒だからとか(横暴だ)、さまざまです。

もちろん本書にも知識は載っています。しかし知識やもの自体だけで語ろうとはしていません。いたるところに著者の体験や想い、読者への気遣いが散りばめられています。
既存のスタイルにとらわれず、「どうしたらこの魅力がより多くの人に伝わるか」を深く追求されているように感じます。



アンティークと同じ、時をこえる魅力


これは完全に私の妄想ですが、
著者、U.K.STOREROOMのお二人は本書において単なるアンティーク品の紹介にとどまらず、”イギリスモダンアンティークが持つ世界観”まで体現するつもりだったのではないでしょうか。

あと十数年もすれば、ある意味本書もひとつの「モダンアンティーク」になります。そうなった時にも、本書は私にとって変わらず常にあたらしく魅力的であるでしょう。
むしろそれに加えて十数年分の愛着とものがたりが染み込むわけで、愛せないはずがないのです。

そんな時代を超える魅力の共通点を、大人になった今感じます。


そんなこんなでイギリスを中心としたモダンアンティーク・テーブルウェアの魅力にはまってしまった私。
アルバイトができるようになった大学時代から、少しずつアイテムを集め始めました。

百貨店の英国フェアによく行くようになったり、
アンティークショップ巡りの旅に出たり、
ついに著者のお二人にお会いした日もあります。
ロンドンのマーケットで拙い英語でなんとかお買い物できたことは、最高の思い出です。

一生涯かけて愛せるものに出会わせてくれた、『モダンアンティーク・テーブルウェア』。

これからも私のバイブルであり続けることでしょう。

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