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【時事】第2次トランプ政権成立のおぞましき趨勢(随時更新)
・ 柴田英里さんX投稿:「若きドナルド・トランプが成り上がる過程を描いた『アプレンティス』を観た。若きトランプに帝王学を授けたとされるユダヤ人ゲイ悪徳敏腕弁護士ロイ・コーンを中心に展開する映画で、「1.とにかく攻撃。2.絶対に非を認めない。3.勝つためには手段を選ばない」というトランプがコーンから学んだ処世術が、(ユダヤ人でゲイという)マイノリティの生存戦略でもある点が非常に興味深い。
ロイ・コーンは赤狩りを熱心に行った検事→弁護士で、共和党の大統領と懇意、晩年は強引なやり方が問題になり弁護士資格を剥奪されエイズで亡くなるが、最後まで「癌」と言い張った人物だそうだ。亡くなったのは80年代後半のエイズパニックの時代。
マイノリティの生存戦略として、「権力で武装し札束で殴る」は古典的である。ロイ・コーンがトランプに伝えた「1.とにかく攻撃。2.絶対に非を認めない。3.勝つためには手段を選ばない」という帝王学を、古典的なマイノリティの生存戦略として読み解くと、単純な「リベラル VS 保守」という問題設定は破綻する。映画の中でコーンは「左派インテリは自分の子供を黒人と同じクラスに入れない」というようなことを言っていたが、「偽善に敏感で、それを憎む熱心な愛国者」という価値観がマイノリティ性から育まれる感覚はかなりわかる。
ある種のマイノリティ性から「偽善に敏感で、それを憎む熱心な愛国者」という価値観が育まれるのは、マジョリティの「偽善」はマイノリティを玩具にする性質を孕んでいるからだ。「LGBTは祝福しなければいけない。でもペドフィリアは許さない」という昨今の流れだって、マイノリティ性に格付けをして承認と排除を行うマジョリティ様の偽善である。
「偽善に敏感で、それを憎む」はわかるけど、「熱心な愛国者」になる意味はわからない。と思う人もいるかもしれないが、「生殺与奪の権力を一番多く持っているのは一番強いやつ」と考えれば、一番強い者(国家)だけ愛して守られたいと願う心理は理解できる。」
・【長崎】米トランプ氏「現代のマンハッタン計画」声明に長崎の被爆者「言語道断」(長崎文化放送)
【長崎】米トランプ氏「現代のマンハッタン計画」声明に長崎の被爆者「言語道断」 11/13(水) 19:29配信
NCC長崎文化放送
アメリカのトランプ次期大統領が、新設する「政府効率化省」を広島・長崎に投下した原子爆弾の開発プロジェクトになぞらえ「現代のマンハッタン計画」と呼んだことに、長崎の被爆者からは「言語道断」と憤りの声が挙がっています。
トランプ氏は、実業家のイーロン・マスク氏が、新設する「政府効率化省」を担当すると発表。マスク氏が率いることで過剰な規制と無駄な支出を削減し、連邦政府を再編する道筋を整えるとしました。
声明では「政府効率化省」を広島・長崎に投下した原子爆弾の開発プロジェクトになぞらえて、「現代のマンハッタン計画」と呼び、大規模に構造改革を行うとしています。
原爆開発を引き合いにしたトランプ氏の声明に対し、13日、長崎原爆の被爆者の山川剛さん(88)は…。
被爆者・山川剛さん(88):
「言語道断ですね。怒り心頭ですよ。最も使ってはいけない言葉を彼は使ったというふうに思う。あのマンハッタン計画がどういうことをもたらしたのかということを、こんなに想像出来ないものなのかというその衝撃も受けた。核兵器が炸裂した後人間がどうなるのか、生き物がどうなるのか、自然がどうなるのかとそれを、恐らくほとんど理解してないと思う。(トランプ氏は)知識としても多分ないと思う。言語道断ですよ、本当」
また、山川さんは「ノーベル平和賞受賞により、被爆者の活動が世界にようやく認められたという時にマンハッタン計画を例えに持ち出すトランプ氏の無神経さは今後が心配だ」と話しました。
・第13回 1分でわかる再エネ「トランプが大統領になるとアメリカの再エネ政策は変わる?」
・「フィリピン政経フォーカス」の記事。前回の上院公聴会ドゥテルテ劇場のその後はどうなったか、トランプ返り咲きとフィリピンの関係は?などにフォーカスした記事。
・トランプとイーロン・マスクが共謀してアメリカに大金持ちの大金持ちによるさらに大金持ちが儲けるためだけの正真正銘の大金持ちファシズム帝国をつくろうとしている。
ガーディアン紙がXに投稿しなくなった理由
『うん、それはよく分かる。私もXへの投稿をやめようかと思っている。他方、「獅子身中の虫」であり続けることが「レジスタンス」でありうると思う。だから、当面、The Guardianの記事をリツイートし続けていく。』(石田英敬X 2024年11月13日)
Peter Suciu氏の記事「Bluesky、米大統領選後1週間で125万ユーザー獲得 「X離れ」加速」
・「トランプが、未成年女性(17歳)と性行為を行なったと批判されるマット・ゲーツ(Matt Gaetz)を司法長官に任命すると発表。
トランプは定期的に自分を女性の「保護者」だと主張してきましたが、それはメキシコ人などの非白人やトランスジェンダーなどを悪魔化する時だけであり、この人事は白人男性による性暴力・性虐待は不問にする、というメッセージとなっています。要は、白人女性は白人男性が所有するために独占されるべき、というのがトランプのいう「女性を保護」ということでしょう。
ちなみに、次期トランプ政権は教育省を、「左翼の巣窟だから」という強引な理由で解体するという説もあるそうです。
第一次トランプ政権で教育長官を務めたベッツィ・デヴォスのもとで、すでに教育現場における性暴力対応のガイドラインは大幅に後退し、性暴力被害者の保護は形骸化しそうになっていました。バイデン政権では修正されましたが、第二次トランプ政権下でゲーツが司法長官になり、もし教育省が廃止されるなら、もはやアメリカの大学キャンパスは特に女子(さらに言えば非白人の女性の)学生にとって危険な場所となり、留学を勧めにくい場所になるかもしれません。英語圏ならニュージーランドに行った方がよいのでは…と言わざるを得ないかもしれない。」(兼子歩さんFB投稿2024/11/14)
・今こそ読まれるべき本⇨ロバート・ライシュ『コモングッド:暴走する資本主義社会で倫理を語る』東洋経済新報社
・「民主党は反エスタブリッシュメントの党になれ」ロバート・ライシュ元米政府労働長官
『2024年のアメリカ選挙の結果は、単に勝敗を超え、その「解釈」によって真価を持つものである。いわゆる「選挙の教訓」として解釈が定着すると、それは今後の政治家やメディアの行動を決定し、次の選挙戦略に影響を与える。
今回の選挙の教訓は、アメリカ国民が主に経済問題を基に投票したことを示し、投票行動は階層や教育水準によって特徴づけられた。
特に、大学学位を持たない多数のアメリカ人は、経済が成長しているにもかかわらずその恩恵を感じておらず、不安定な雇用に直面している。実際には、下位90%の実質中間賃金は1990年代初頭とほぼ同じ水準にとどまっており、経済成長の利益は富裕層に集中している。このような状況が不満と怒りを引き起こし、トランプがその怒りを代弁する一方で、ハリスはその役割を果たせなかった。
著者のロバート・ライシュは、この選挙の教訓として、民主党が単に不満を代弁するだけでなく、米国内の格差拡大がシステムを腐敗させていることを説明し、大企業と富裕層の政治的影響力を制限すべきであると主張する。アメリカにおける「努力が報われる」という基本的な社会契約は1980年代以降形骸化し、中産階級が縮小している。その原因の一つは、共和党が富裕層向けの減税を行い、民主党が労働者階級を疎外してきたことである。
民主党は、北米自由貿易協定(Nafta)や中国製品の低関税を支持し、金融規制を緩和してウォール街をリスクの高い市場に変えた。また、大企業が市場を支配し価格を引き上げることを許し、労働組合の弱体化にも加担した。リーマンショック時にはウォール街を救済したが、住宅を失った個人には支援を行わず、選挙資金には大企業の影響を受け、労働者階級の利益をないがしろにしてきた。
バイデンは民主党を労働者寄りに戻すため、独占禁止法の強化や労働法の厳格な執行、製造業やインフラへの投資を行ったが、これらの取り組みが成果を示すには時間がかかる。また、バイデン自身がこれらの変革を効果的に伝えることもできなかった。一方で、共和党は労働者の味方を標榜しながらも、実際には労働者に不利な政策を進めている。トランプの関税政策は物価上昇を引き起こし、反独占法の緩和は企業による市場支配をさらに強化するだろう。さらに、共和党が議会を掌握すれば、富裕層への減税を進め、社会保障制度の縮小を図る可能性がある。
民主党は大企業や富裕層の利益のために行動するのではなく、労働者層の利益を優先すべきである。具体的には、有給家族休暇制度、国民皆保険、無償の公的高等教育、強力な労働組合の保護、高額所得への課税強化、住宅建設を促進する住宅クレジットの導入といった政策が必要である。また、企業が利益を従業員と共有し、CEO報酬の制限、株式買戻しの禁止、そして大企業への補助金や税控除の廃止を求めるべきである。
民主党は、賃金停滞や雇用の不安定化の原因を、移民やリベラル思想、「ディープ・ステート」といった仮想敵ではなく、巨大企業と富裕層の市場支配にあると国民に伝える必要がある。これにより、公平な経済と民主主義が密接に結びついていることを訴え、民主党の支持層を取り戻すべきである。
もしトランプ派の共和党が議会を完全に掌握すれば、アメリカ経済や国の未来は彼らの責任となる。彼らがエスタブリッシュメント側の存在になることを踏まえ、民主党は「エスタブリッシュメントに反対する」党として、大多数のアメリカ人のためにシステムを変える決意を固めるべきである。これが2024年の選挙の教訓であると、ライシュは提言する。』(石田英敬X ·2024年11月14日)
・マスク、ティール、そしてアパルトヘイトの影南アフリカ
『去年の9月のフィナンシャル・タイムズの記事ですが、 「イーロン・マスク、ピーター・ティールとアパルトヘイト時代の南アフリカの影:かつての南アフリカと今日のアメリカとの驚くべき類似点」(日本語サマリー付き) Musk, Thiel, and the shadow of apartheid South Africa
https://ft.com/content/cfbfa1e8-d8f8-42b9-b74c-dae6cc6185a0
https://www.ft.com/content/cfbfa1e8-d8f8-42b9-b74c-dae6cc6185a0?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR1SpcHBgEPzpree6CJV7rIzgz1HEAKsdJJqh5VUKo-xk5xx9IZzPlWMR7Y_aem_22CQcGHZYtw8UQr4XTegSg
(以下、AIによるサマリー)
イーロン・マスク(Elon Musk)は17歳までアパルトヘイト時代の南アフリカで生活していた。デビッド・サックス(David Sacks)は幼少期に南アフリカを離れ、アメリカ南部で育ったベンチャーキャピタリストである。ピーター・ティール(Peter Thiel)は子ども時代を南アフリカやナミビアで過ごし、その父親はウラン採掘に従事していた。そしてポール・ファーバー(Paul Furber)は、Qアノンの発端として特定された南アフリカのソフトウェア開発者である。
アパルトヘイトとMAGAにはいくつかの共通点が見られる。まず、極端な不平等が挙げられる。アパルトヘイト時代の南アフリカでは、白人と黒人の間に経済的・社会的格差が存在していた。ピーター・ティールの父親が働いていた鉱山では、白人管理職は贅沢な施設を利用できた一方で、黒人労働者は過酷な環境で働かされていた。このような不平等を、一部の白人は自然の摂理とみなしていた。彼らは、経済的成功は能力によるものであり、それを変えようとすることは無意味だと考えていた。ティールはスタンフォード大学在学中にアパルトヘイトを「経済的に有効」と語ったとされるが、本人はこれを否定している。
次に、暴力と恐怖の存在である。アパルトヘイト終焉期の南アフリカは暴力的であり、白人は黒人の反乱を恐れていた。この恐怖は、イーロン・マスクが述べた「白人虐殺の可能性」や、トランプが主張する「犯罪者による白人女性への暴力」といった言説に共通している。
さらに、政府不信とリバタリアニズムが挙げられる。アパルトヘイト政権やその後のANC(アフリカ民族会議)の統治により、多くの南アフリカ人は基本的なインフラやサービスを享受できなかった。この経験が反政府的なリバタリアニズムを助長し、「政府は信用できない」という思想が生まれた。ポール・ファーバーは、Qアノン初期の「政府は悪魔を崇拝している」というメッセージに共感したと述べている。
人種問題もまた重要な要素である。ピーター・ティールとデビッド・サックスは、スタンフォード時代に多文化主義に対抗する本『The Diversity Myth』を執筆し、西洋文明を擁護した。彼らの思想は、今日の共和党の白人至上主義的な傾向と一致している。一方、民主党は黒人候補を複数回擁立しているが、彼らは白人の恐怖や人種的分断を煽る政策やストーリーを支持している。
これらの人物の思想にはアパルトヘイト時代の南アフリカで形成された白人の視点が根強く残っており、その影響がトランプ主義に通じていると言える。』(石田英敬X 2025年1月18日)
・イーロン・マスクがナチ式敬礼をやった理由は、その生い立ちをみれば明らかになる。イーロンを含むいわゆる「PayPalマフィア」(シリコンバレーを牛耳るペイパル出身者のグループ)の大物たちには南アフリカに関係の深い人物が多数いて、アパルトヘイト体制(少数白人支配の法制化)を支持し、白人至上主義イデオロギーを信奉していると、ガーディアン紙で南アフリカを専門とするクリス・マギール記者が話しています。これは必見
・山口智美さんのインタビュー記事。「トランプ大統領就任と米国の多様性後退に関して、朝日新聞の田中聡子記者にインタビューしていただきました。有料記事なのでプレゼントします。2025年1月21日 12:23までお読みいただけます」
「マイノリティーばかり」という批判はどこから 多様性後退する米国:朝日新聞デジタル
聞き手・田中聡子
2025/1/20 11:30
文化人類学者 山口智美さん
かねてジェンダー平等やマイノリティーの権利に否定的だったトランプ氏。大統領就任を機に米国では、企業や大学が歩調を合わせるように多様性のための取り組みを後退させています。
これから何が起きるのか、日本への影響は――。昨秋まで約30年間米国で暮らした文化人類学者の山口智美さんに聞きました。
就任前からバッシング
トランプ大統領の再選により、女性やマイノリティーはさらに厳しい環境に置かれるでしょう。彼は選挙中も、移民やトランスジェンダーをバッシングする言動を繰り返していました。
前回トランプ氏が当選した際は、女性やマイノリティーの権利を訴える大規模なデモが起きるなど、「反トランプ」の運動も熱を帯びました。トランプ氏が最高裁に保守派判事を増やし、中絶の権利を保障する「ロー対ウェード判決」が2022年に覆された時には、各地で怒りの声が上がり、同じ年の中間選挙で共和党の躍進を阻止しました。
ハリス氏が「マイノリティー性」を出せなかった理由
ところが今回、トランプ氏は圧勝した。ただこれは単純に、「多くの有権者が女性やマイノリティーの権利保護に反対した」ということではないと思います。実際、大統領選に合わせて10州であった中絶の権利をめぐる住民投票では、7州で権利を保障する結果になりました。その中には大統領選でトランプ氏が勝った州もありました。一定数の有権者が「中絶については住民投票で意思表示した」などと、トランプ氏と切り離して判断したということでしょう。トランプ氏自身も中絶への攻撃を緩め、「州の判断に委ねる」という言い方に転じました。
一方のハリス氏は選挙戦で、女性や黒人、インド系という自身の「マイノリティー性」を強調しませんでした。ここに、現在の米国の状況が表れています。
バイデン政権下では「多様性、公正性、包摂性」の頭文字を取ったDEIの取り組みが推進され、大学や企業で人種やジェンダーによる格差の是正措置が採られてきました。しかしここ数年、保守系活動家らから「逆差別」というバッシングが起き、一部の公立大や企業がDEIの取り組みを後退させています。ハリス氏が自身の属性を強調したら、とたんに攻撃材料にされることは目に見えていました。今の米国で「うまくやる」ためには、その属性が弱みになってしまうのです。
「少人数の権利をやりすぎてマジョリティーを放置した」「それより経済だ」――。今回、民主党が敗れて、「リベラル」の側からもそんな言葉が聞こえてきます。しかし虐げられている人から見れば、「やりすぎ」どころか全然足りていません。いま暮らしが厳しいのは事実です。しかしマイノリティーの人権と経済とは対立するものではありません。むしろ暮らしの厳しさが最も表れるのがマイノリティーであり、それはつながっている問題です。
トランプ氏やその周辺は反DEIの姿勢を鮮明にしています。これからの4年間で何が起こるのか。トランスジェンダーへの攻撃が強まり、性暴力への対処が緩くなり、DEIもなくなるかもしれない。日本も「米国でこうなったのだから」とマイノリティーの権利保障が反動にさらされる可能性はある。ひとごととは言えません。
不安は尽きませんが、私が住んでいたモンタナ州ボーズマン市では、家賃高騰下で「すべての人に安全で、尊厳がもてる、手頃な価格の住宅を」を合言葉にしたハウジングの市民運動に、人種的にも世代的にも多様な人たちが関わり、ジェンダー平等の運動ともつながっていました。こうした運動の輪が広がることが、小さな希望です。
山口智美さん
やまぐち・ともみ 立命館大学教授。昨秋まで約30年間米国で暮らす。共著に「宗教右派とフェミニズム」「社会運動の戸惑い」「海を渡る『慰安婦』問題」。
・アンジェラ・ネイグル著『普通の奴らは皆殺し インターネット文化戦争 オルタナ右翼、トランプ主義者、リベラル思想の研究』訳者解説(大橋完太郎)より一部抜粋 ニューズウィーク日本版
Yahooにも転載された。
コメント欄、どんな感じになるでしょうか。
・「トランプは世界をどこへ連れていく~再登板 重なるリヤ王の盛衰~」(2025.1.13朝日新聞記事より)
米の国際政治学者・エリオットコーエン氏の発言;シェイスクピアの研究家でもある氏は、年老いて子に裏切られ、身を滅ぼす「リア王」に現在のトランプ氏を重ねる。集中力や判断力が、1期目に比べて衰えたことも、混乱を招く要因になり得るというのだ。「リア王」はある時点で責任を放棄し、栄光のみを求めた。さらに周囲の人々の心情を把握する能力を失う。トランプ氏が同じ状況に陥る可能性はある」と。
おそるべき昨今のトランプ現象、SNS業界ではイーロン・マスク氏だけでなく、トランプの天敵メタ社CEO(Facebook)マーク・ザッカーバーグ氏もトランプへの恭順の意を示すに至る。トランプが上演を阻止しようとした伝記映画「ドナルド「トランプの創り方」がこの1月日本でも上演される。トランプが20代の時父の会社が破産寸前に追い込まれた時、挽回すべく悪名高い弁護士ロイ・コーンから徹底的に叩き込まれた。その3つのルール、1「攻撃、攻撃、攻撃」、2「非を絶対に認めるな」、3「勝利を主張続けろ」であった。
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映画『アプレンティス』ポスター。
ロイ・コーンは、アメリカの傑作ドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』Angels in America(全6章、2003)にも出てきたね。
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矢崎由紀子さんによる映画評
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・中野毅先生からの紹介です。昨年9月の記事ですが、その後に続く韓国情勢を念頭に読むと、より興味がわく分析。
<正論>米大統領選とキリスト教ロビー
日本大学教授・松本佐保
2024/9/17
日本大学教授の松本佐保氏
米大統領選に向け民主党大会でハリス副大統領が正式に候補となり、副大統領候補にミネソタ州知事のウォルズ氏を指名した。ハリス氏は州司法長官出身で弁が立ち、インド系とアフリカ系の血を受け継ぎ、女性や黒人・アジア系、またLGBTなど性的少数者や若者にアピール力がある。
大統領候補の宗教的背景
ハリス氏の弱点を埋めるのがウォルズ氏だ。白人農民票を期待できるほか、教師でアメフトコーチの経歴でブルーカラーの男性票を取り込む狙いだ。ヒラリー氏の「エリート風」を反面教師に中流と労働者階級に寄り添う姿勢だ。
11月の大統領選まで予断を許さないが、米社会や政治に大きな影響力があるキリスト教のロビー活動など宗教の側面から大統領選を分析してみたい。
ハリス氏はプロテスタントのサンフランシスコのバプティスト黒人教会に所属している。この教会のアモス・ブラウン牧師は、キング牧師の直弟子で黒人の公民権運動にも関与した。ウォルズ氏はルーテル派のプロテスタント、いわゆる主流派のリベラルな教会で、同じプロテスタントでも保守的な福音派と一線を画する。
対するトランプ氏は、この福音派の熱狂的な支持を受けている。在ワシントン最大の宗教アドボカシー(支持・擁護)団体「家庭調査協議会」がこの福音派を組織、バイブル・ベルト(聖書地帯)の南部諸州だけでなく、連邦政府へも一定の影響力を持つ。
南部諸州の中でもバイブル・ベルトは共和党の牙城で今回の大統領選でもトランプ氏が取ることは確実だ。例えば選挙人数の多いテキサス州に目を向けてみよう。
7月中旬にトランプ氏の暗殺未遂事件が起きた時、福音派のカリスマ牧師たちは今まで以上に熱狂的なトランプ氏支持を呼び掛けた。その一人、ロバート・ジェフレス宣教師は「神がトランプ氏を救った」という説教を自らの教会で取り入れ、巨大なスタジアム並みのメガ・チャーチは歓声に包まれた。
トランプ氏への熱烈な支援
「トランプ氏は神に選ばれし存在」とするキリスト教ナショナリズムの動きは、この暗殺未遂事件前からあった。これを率いるのが石油ビジネスマンから宣教師に転身したランス・ウォルナウ師である。トランプ氏を救世主とする運動はテキサス州とジョージア州を中心に展開している。新使徒的改革(NAR)と称し、キリスト教会のカトリック、プロテスタント、東方諸教会、東方正教会に続く第5の会派を形成することを模索する運動だ。失われた教会の統治機能を使徒や預言者の存在で回復することを提唱している。
保守系シンクタンクのヘリテージ財団がまとめた文書「プロジェクト2025」ともつながっている。同文書はトランプ政権への移行プランとして注目された。計画は、共和党のレーガン政権向けの一連の政策・人事マニュアルをお手本とし、保守の権力を取り戻すための戦略書とされる。
トランプ陣営といえば、バンス副大統領候補のベストセラー本、白人の貧困層を描いた『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』が有名で、白人優位主義的な印象がある。多数派の座から転落しつつある白人の名誉回復を謳(うた)うものの、非白人を取り込まないと選挙では不利になる。
激戦州の動きは
トランプ支持層として近年じわじわと支持を伸ばしているのが、ヒスパニック系移民である。トランプ氏は移民政策ではハリス氏が副大統領として規制を怠ったと批判し、不法移民に対して厳しい姿勢を貫くものの、合法ヒスパニック移民からは保守的な宗教・社会観から支持を増やしている。
新使徒的改革を率いるメンバーの「伝道師」には、マリオ・ムリリョ師のようなヒスパニック系の宗教指導者もいて、ジョージア州アトランタ郊外の大型コンベンションセンターで説教を行っている。ヒスパニックはもともとカトリック教徒が多いが、近年、キリスト教福音派への改宗が目覚ましい。この現象はラテンアメリカ全般に起きており、カトリック教会が危機感を募らせる。
また米国のカトリックは民主党支持と共和党支持の真っ二つに割れている。
さて大統領選では「激戦7州」が注目で、ラストベルト(錆(さ)びた工業地帯)の3州(ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア)を2016年選挙でトランプ氏が僅差で勝利、20年にバイデン氏が奪還した。この3州ではウォルズ氏効果なのか現在、民主党がリードしている。
ノースカロライナ州はバイブル・ベルト隣接州でもあり、トランプ氏が優勢であるが、アリゾナ州とネバダ州ではハリス氏が優勢だ。ジョージア州では支持が完全に拮抗(きっこう)している。このジョージア州は先に述べた新使徒的改革の拠点でもあり、11月に向けてキリスト教ロビーの動向も注視する必要があるだろう。(まつもと さほ)
・ホワイトハウスのホームページがひどいことになっていると聞いて開いてみたら、悪夢のようなトップページだった。
・東スポですが。
コロンビア大統領の娘がトランプ大統領に「われわれは買春観光の米国人を返す」
2025年1月28日 09:53
トランプ大統領の〝脅迫外交〟に対し、コロンビア大統領の娘が仕返しの言葉を投稿した。米紙ニューヨーク・ポストが27日、報じた。
トランプ氏は26日、不法移民を強制送還する米軍機2機の着陸をコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領が拒否したことを受け、同国に25%の関税を課す報復措置を取ると発表。すると、コロンビアは強制送還の無条件受け入れに同意。トランプ氏は関税引き上げを撤回し、〝脅迫外交〟が成功した形だ。
コロンビア大統領の娘アンドレア・ペトロさん(33)は27日、Xでトランプ氏の国外追放論争を批判し、「国外追放されるコロンビア人1人につき、ポプラドのグリンゴを1人返してあげる」と投稿した。
ポプラドとは、コロンビアの大都市、メデジン市の歓楽街のこと。グリンゴとは、米国人の男を指すスラング。つまり、米国から国外追放されるコロンビア人1人につき、コロンビアは米国人のセックスツーリスト(買春旅行者)を1人送還するという意味となる。
昨年、ポプラド地区で、36歳の米国人の男がホテルの一室で12歳と13歳の少女2人と一緒だったところを逮捕され、コロンビア国内で論争を巻き起こした。男は釈放されるとすぐにコロンビアから出国したが、ペトロ大統領は後に米国政府に男の引き渡しを要請した。アンドレアさんの言葉は、この事件のことを掘り起こした皮肉だ。
・手塚治虫「グリンゴ」
・『イーロン・マスクによる米連邦政府掌握の手口:「インサイダー脅威」https://nytimes.com/2025/02/21/opinion/musk-doge-personal-data.html?smid=tw-share詳細サマリー
イーロン・マスクによる連邦政府の掌握とインサイダー脅威:デジタル権限の危険性
本記事では、イーロン・マスクと彼の少人数のチームが、短期間で連邦政府の機能を大幅に改変し、多くの混乱を引き起こしている状況について論じられている。その影響の大きさにもかかわらず、彼の行動を単なる政治的文脈で捉えるのは誤りであり、むしろエンジニア的なアプローチによるものだと指摘される。彼は政府の技術システムに内在する脆弱性を巧みに利用し、サイバーセキュリティの分野で「インサイダー脅威」と呼ばれる手法を用いている。
1. インサイダー脅威とデジタルシステムの脆弱性
インサイダー脅威は歴史的に存在しており、例えばCIAの二重スパイや、ボーイングの技術者による中国への情報流出などが挙げられる。しかし、現代のデジタル技術は、この脅威をさらに強力なものにしている。なぜなら、情報の一元管理が進み、特定の個人が広範なデータにアクセスできるようになっているからだ。
特に、9.11同時多発テロ後の情報共有の必要性から、政府のデータ管理は統合型へと移行した。しかし、このシステムは、特定の個人(システム管理者)に「ルート権限(root privileges)」を与える形になり、極めて危険な状況を生んでいる。これにより、システム管理者は政府の全データにアクセスできる「神の視点(God View)」を持つようになった。
エドワード・スノーデンのケースでは、彼がNSA(国家安全保障局)のシステム管理者として広範なデータベースにアクセスし、機密情報を持ち出せた事実が示しているように、「誰が管理者を監視するのか(Quis custodiet ipsos custodes?)」という問題が浮き彫りになっている。
2. 連邦政府のデジタル化の問題点
政府の情報管理において、システムのデジタル化と非効率なアナログ運用の対比が示される。例えば、連邦職員の退職制度は依然として紙ベースで運用されており、地下の鉱山で何百人もの職員が書類を手作業で処理している。その一方で、人事管理局(O.P.M.)では、すべての雇用記録がデジタル化され、政府全体の人事管理が一括で管理されている。
このため、マスクの「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」のチームは、最初にO.P.M.を掌握し、そこを「ルートアクセス(root access)」の拠点として利用した。O.P.M.にアクセスすれば、政府全体の職員を監視し、「思想的に不適切」とされる者を排除することが可能になる。
彼らはその後、財務省にも進出し、すべての政府支払い記録にアクセス可能な状態にした。これは経済への「ルートアクセス」を意味し、マスクの競争相手となる企業の機密情報も含まれる。さらに、国税庁(I.R.S.)や社会保障庁(S.S.A.)にも影響を広げ、国民の財務情報や健康情報など、極めて個人的なデータへのアクセスも可能になった。
3. 政府のITシステム管理者としてのマスク派
『アトランティック』誌の報道によると、元テスラのエンジニアが「技術変革サービス(T.T.S.)」の責任者に任命され、19の異なる政府ITシステムへの「特権アクセス」を求めた。しかし、この人物は適切な身元調査すら受けておらず、セキュリティクリアランスを持つ地下鉱山のピザ配達員よりも検証されていない状態だった。
これは、政府のデータ管理が単なる効率化の問題ではなく、むしろ「インサイダー脅威」の温床となっていることを示している。こうした状況の中で、マスク派のIT管理者たちは、政府の中枢へと入り込み、データを自由に操作できる立場にある。
4. 政治権力とデジタル権限の融合
本記事では、マスクの行動が、政治権力の強化と結びついている点にも着目している。これは歴史的に「選挙独裁(elective despotism)」と呼ばれる問題に通じる。トマス・ジェファーソンはかつて「カエサルは『金があれば人を集められ、人がいればさらに金を得られる』と言った」と述べ、権力の拡大が自己増殖する危険性を指摘していた。
デジタル時代において、この問題はさらに深刻になった。現在では、国家が集積した個人データ(雇用、財務、税務、健康情報など)が、権力の道具として活用される可能性がある。マスクがX(旧Twitter)で、トランプの大統領令を差し止めた裁判官の娘の個人情報を公開した例は、この危険性を象徴するものといえる。
現時点では、彼が政府のデータベースにアクセスした証拠はないが、もしそうであったとしても、我々はそれを知る術がない。これは、政府データの集中管理が持つ「見えない権力」のリスクを如実に示している。
5. プライバシーと安全性の軽視
この状況は不可避ではなかった。長年にわたり、政府と企業によるデータの集約がもたらす危険性について、専門家は繰り返し警告してきた。1975年にM.I.T.のジェローム・ワイズナーは、「情報技術が政府と民間企業に膨大な権力を与える」と警告し、「情報の集中管理は憲法そのものを脅かし、情報独裁を生む」と述べていた。
しかし、プライバシーを守りながら利便性を提供する技術(ゼロ知識証明、差分プライバシー、準同型暗号化など)は、商業的な利益を追求するテクノロジーの影に埋もれ、十分に普及しなかった。その結果、政府のデジタルシステムは、正当な行政目的だけでなく、破壊や私的利益のためにも利用できる状態になってしまった。
現在の最大の問題は、「誰がどのデータに、どの権限でアクセスしたのか」を明確に知る仕組みが存在しないことだ。裁判官たちでさえ、この情報を得られず、システム管理者だけが知っている。そして、彼らは何も語らない。
結論
この記事は、マスクの政府掌握が単なる政治問題ではなく、デジタル時代の統治に関わる根本的な脅威であることを示している。情報の一元管理と特権的アクセスの仕組みが、民主主義の基盤そのものを脅かす可能性を持つことが浮き彫りになった。』(石田英敬 2025年2月21日)
・菊地夏野さん:「アメリカのフェミニスト政治哲学者ナンシー・フレイザーの、トランプがなぜクリントンに勝ったかをネオリベ批判の立場から分析したテクストを訳しました。EUや日本のレイシズムやナショナリズムまたフェミニズムの状況とも重なるかと。」
・【新刊】『強制送還の国際社会学』
「史上最大」とも称される国外追放政策は、移民社会に何をもたらすのか。米国とメキシコをつなぐ画期的な調査を通して、取締り・収容から帰国後のさらなる困難、分断される家族、再移動の試みまで、一国に限定された視野では捉えきれない強制送還の全容を力強く描き出し、移民論の新領域を拓く。
強制送還の国際社会学
「ヒスパニック」系移民とアメリカのゆくえ
飯尾真貴子著
序 章 アメリカとメキシコにおける越境と送還
1 移動の権利と移民管理レジーム
2 6つの越境経験
3 強制送還後の移民たち――本書の視角
4 本書の構成
第1章 強制送還をトランスナショナルに把握する
――分析枠組みと方法
はじめに
1 トランスナショナリズム研究の理論的視座と課題
2 移民規制の厳格化をめぐる研究の理論的視座と限界
3 分析枠組みと研究方法
4 調査者としての立場性
おわりに
第2章 米国移民管理レジームの形成
――移民政策と刑事司法システムの接合
はじめに
1 移民管理レジームの歴史的展開
2 ジェンダー化される「移民の脅威」
3 移民政策と刑事司法システムの交差
4 2000年代以降の移民の犯罪者化とその影響
5 「産獄複合体」と移民収容所の拡大
6 包摂される「望ましい移民」とは誰か
おわりに
第3章 緩やかなネットワークの強みと弱み
――メキシコ都市部出身移民の帰還
じめに
1 帰還に社会的ネットワークが果たす役割
2 メキシコにおける都市化のプロセスと国内移住
3 都市部から米国への国際移動
4 ネサワルコヨトルから米国への移住の特徴
5 米国からネサワルコヨトルへの帰国の特徴
6 都市部出身者のネットワークが帰国局面に及ぼす影響
おわりに
第4章 「帰国者」へのまなざしと排除
――メキシコ村落部出身移民の帰還
はじめに
1 オアハカ州における先住民の特徴と移動
2 村落部における「帰国者」へのまなざし
3 村落部における帰国をめぐる言説
おわりに
第5章 トランスナショナルな社会空間の形成と変容
――村落コミュニティの越境的実践と世代・ジェンダー
はじめに
1 移住の歴史的展開とトランスナショナルな社会空間の形成
2 分岐する移住経験
3 移民規制の厳格化はいかに経験されるか
おわりに
第6章 強制送還をめぐる言説と村落の価値規範
――トランスナショナルなモラル・エコノミー
はじめに
1 移民管理レジームと村落のモラル・エコノミーの接合
2 帰国をめぐる当事者の認識と戦略的な語り
3 村落コミュニティにおける包摂と排除
おわりに
第7章 トランスナショナルな家族と越境リスクの変化
――移民管理レジームによるモビリティの制約
はじめに
1 越境の重罪化がもたらすモビリティへの影響
2 損なわれる社会関係資本
3 移民管理レジームによるトランスナショナルな社会空間の再編
おわりに
終 章 移民規制の厳格化は何をもたらしたのか
はじめに
1 移民管理レジームと移民の犯罪者化
2 多様な帰還のあり方
3 トランスナショナルなモラル・エコノミーにおける包摂と排除
4 監視と排除の時代における境界管理とモビリティ
5 ラティーノ移民とアメリカ社会
6 移民政策のゆくえ
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