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『め生える』変化する人間関係と価値観

今朝ご紹介するのは、高瀬隼子さんの『め生える』📖

大好きなお友だちの紹介が面白すぎて、即購入した1冊です。

高瀬さんワールドに沼り、その後の読書会も楽しすぎて…!

2024年早々に、今年のベスト本に入るであろう作品と出会ってしまった感が否めません(幸せ)。

そもそも、物語の設定から心を鷲づかみにされる仕掛けが満載なんです!

せっかくみんなハゲたのに――
突然起こった原因不明の感染症は、いつしか中高生以下を除く全ての人がはげる平等な世界に変えた。
元々薄毛を気にしていた真智加は開放感を抱いていたのだが、ある日、思いがけない新たな悩みに直面し、そのことが長年友情を培ってきたテラとの関係にも影響が及ぼしそうで…。
同じく、予想外の悩みは、幼少期に髪を切られる被害にあった高校生の琢磨にもある。それは恋人の希春と行った占い師のお告げがきっかけだった…。価値観は刷新したはずなのに、また別の分断の萌芽がそこに。

『め生える』紹介

このnoteではネタバレは控えつつ、読書会でハッとした出来事や自分と向き合えたエピソードをご紹介します。


高瀬隼子さんの言葉に惹かれる理由は?

高瀬隼子さんと言えば、芥川賞受賞作品『おいしいごはんが食べられますように』のイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?

私、この作品も本当に大好きなんです!

なぜ、高瀬さんの言葉にこんなに心惹かれるのか?

『め生える』を読み、自分が押し殺してきた言葉を代弁してくれているからなんだと気付かされました。

物語だけど「知ってる」リアル

『め生える』は、ある日突然髪が全て抜ける世界。

”見た目のコンプレックス”がテーマの1つです。

そして、もう1つのテーマは”人間の腹黒さ”なのでは?と個人的には感じています。

というのも、コロナ禍で混乱していた私たちを想像させる世界なんですよね。

髪が抜けるのは、原因不明の感染症による(治療法もない)という設定。

物語では、「髪が生える薬」と謳い金儲けをする占い師、「頭皮に〇〇が効く!(〇〇は良くない!)」というデマを信じて物を買い占める人たち、などが描かれています。

しまいには、海外での頭皮移植(※貧しい国の人にお金を渡す代わりに、健康な頭皮をもらうってこと)も。

物語だけど、自身の実体験ともリンクするリアルさが共存していることが、どっぷり沼にハマっていく感覚につながりました。

コロナ禍前後で、関係性が変わった友人

読書会で皆さんの話を聞きながら、私はある友だちのことを思い出していました。

コロナ禍の「前」と「後」で、関係性が変わった友だちです。

その子は、「ワクチンは1度も接種しない」という選択をしていて。

妊活中と聞いていたこともあり(※重症化リスクが高いとされるもの1つに、妊婦さんがあるので)、距離感が難しくなっちゃったんです。

「万が一、自分のせいで…」と考えたら、せっかく誘ってもらっても会いづらくなってしまって。

本書でも、ある二人の女性の友人関係が描かれているのですが、あることをきっかけに少しずつ変化していきます。

私は、自分のことと重ねながら物語の世界に入っていたのかもしれません。

読書会のおかげで、消化できた

例えば、女性同士あれば、結婚している・していない、子どもがいる・いない、など、ライフステージの変化で友人関係が疎遠になるということはよくあるのではないでしょうか。

ただ、「価値観の違い」による関係性の変化って、また別物だなと思って。

なぜなら、ライフステージの変化と違って、時間が解決してくれるとは限らないから。

私も、口では「ワクチンを接種するかどうかは、個人の自由だよね」と言いながら、どこかで受け入れられない自分がいたんだなと思ったんです。

自分の中の譲れない価値観に気付かされて、身動きを取れずにいた数年。

今回の読書会でメンバーに話を聞いてもらい、ようやく消化できたような気がしました。

今はそっとしておく、でいい

読書会の中でハッとしたのが、「今は、いったんそっとしておく」というお話。

本書では、”見た目のコンプレックス”による傷つけあいによって、表向きは関係性が変わっていなくても、感情的な部分での変化が描かれています。

全く変わらない関係性はないし、距離感がわからなくなったら、そっとしておくでもいいのではないか?

2024年になった今だから、当時の自分を冷静に客観視できた気がしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀

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