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マカ・ママレードの2024年に見た映画

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マカ・ママレードが、2024年に見た映画の感想文です。
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これからも大切に見返したいクリスマス映画と出会えた〜『未来の想い出 Last Christmas』感想〜

これからも大切に見返したいクリスマス映画と出会えた〜『未来の想い出 Last Christmas』感想〜

(以下、『未来の想い出 Last Christmas』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

『森田芳光70祭2024』のライムスター宇多丸さん、三沢和子さんのトーク付上映を鑑賞。

これからも事あるごとに見返していきたい、大切な一本に出会えたと思います。

主体的に生きようとする女性二人のシスターフッドを描いており、現代にも通じるテーマ設定は、さすが森田芳光

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丁寧に作り上げられたホラー作品・・・~『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』感想(ネタバレあり)〜

丁寧に作り上げられたホラー作品・・・~『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

一つ一つを丁寧に作り上げた良質なホラー映画という印象です。

映画を通じて、「音」によって観客に違和感を抱かせる演出が光ります。例えば冒頭で、ジェームズ・マカヴォイ演じるパトリックがプールサイドで椅子を引きずっていく嫌な音。マカヴォイと主人公の家族の会話には少しもおかしなと

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「液体」のアニメーション表現が見事だが、物語が・・・~『モアナと伝説の海2』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『モアナと伝説の海2』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

液体のアニメーション表現が見事でした。海だけではなく、目にたまる涙や粘性のある毒など、多種多様な液体を描き切る表現力に惹きつけられました。そして、編集のスピード感が心地よく、少々強引にも見える繋ぎ方も入れながら、見ている人を飽きさせない疾走感を保つように苦慮した跡が見えました。

映像には見

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この映画のおかげで、ドラマ『踊る大捜査線』に出会えたが~『室井慎次 生き続ける者』感想(ネタバレあり)〜

この映画のおかげで、ドラマ『踊る大捜査線』に出会えたが~『室井慎次 生き続ける者』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『室井慎次 生き続ける者』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

『室井慎次』二部作を見た後にドラマシリーズを始めて視聴しましたが、「ずっとこのまま永久に終わってほしくない!」と思うほどの面白さで、びっくりしました。もうすぐ30周年を迎えるというのに、いまだに新作のスピンオフ作品が作り続けられ、愛されている理由がよく分かる名作でした。
そして、ドラマを

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デンゼル・ワシントン力(りょく)炸裂!!~『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』感想(ネタバレあり)〜

デンゼル・ワシントン力(りょく)炸裂!!~『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

前作は未見ですが、148分という上映時間もあまり長く感じない、血沸き肉躍るエンターテインメント超大作として楽しめました。
闘技場に水を流し込んで船の戦いを繰り広げるなど(しかもサメのおまけつき)、ケレン味とサービス精神のてんこ盛りに大満足です。俳優陣の演技も素晴らしく、特にデ

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バディ映画として楽しめる~『レッド・ワン』感想(ネタバレあり)〜

バディ映画として楽しめる~『レッド・ワン』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『レッド・ワン』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

大人たちが全力でおとぎ話を創り上げている、とても優しくて暖かい作品でした。劇中でも登場する「サンタクロースって実在するの?しないの?」という問いについて、ルーシー・リュー、ドウェイン・ジョンソン、J・K・シモンズらの圧倒的な存在感によって、「いるに決まってるだろ!」と有無を言わせず説き伏せられてし

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粋な演出がさえわたる~『ロボット・ドリームズ』感想(ネタバレあり)〜

粋な演出がさえわたる~『ロボット・ドリームズ』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『ロボット・ドリームズ』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。また、『ラ・ラ・ランド』の内容にも触れています。ご注意ください。)

私が公開3日目に行った劇場では、パンフレットが既に完売だったことから、この作品の人気と注目度の高さを窺い知ることができました。

セリフがほとんどないサイレント映画のような造り(劇場版の『ひつじのショーン』を思い出しました)で、上映時間102

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視点によって、ジャンルが違って見える~『トラップ』感想(ネタバレあり)〜

視点によって、ジャンルが違って見える~『トラップ』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『トラップ』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

作品をどの視点で見るかによって、映画のジャンルが全く違って見えるという、とても変わった作品だと思いました。
例えば、観客にジョシュ・ハートネット演じるクーパーが殺人鬼だとわからせた上で、警察から逃げ切れるかどうかを描くストーリーは、『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』などの「倒叙ミステリー」を思わせます。

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テレビシリーズを見たくなった~『室井慎次 敗れざる者』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『室井慎次 敗れざる者』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

私は『踊る大捜査線』についての知識や思い入れは、ほぼゼロに近い状態です(幼少期に映画版第一作『踊る大捜査線 THE MOVIE』を見て、断片的に覚えている程度です。内田有紀が出演したスピンオフ作品をVHSで見た記憶もなんとなくありますが、ほとんど内容は覚えていません)。今作においてシリーズ

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前作への冷静な批評~『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想(ネタバレあり)〜

前作への冷静な批評~『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

今年公開された映画の中で『フュリオサ』は前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を鮮やかに再解釈・再考察してみせた映画でしたが、本作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』も前作『ジョーカー』を冷静な視点を持って批評して作り上げた作品だと感じました。
まずオープニングで、前作のクライマッ

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「見る」ことの危うさ~『シビル・ウォー アメリカ最後の日』感想(ネタバレあり)〜

「見る」ことの危うさ~『シビル・ウォー アメリカ最後の日』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

本作の主人公は戦場カメラマンであり、動画ではなく写真で記録するというところがポイントだと思いました。映画という映像のメディアの中で、静止画である写真が出て来ることによって、現実を「切り取っている」感覚がより際立つ仕掛けになっています。

そして今作は、そういった「写真を撮る」行

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今だったら違う表現がされているかも~『ウォーリアー』感想(ネタバレあり)〜

今だったら違う表現がされているかも~『ウォーリアー』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『ウォーリアー』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。また、『クリード 過去の逆襲』のネタバレにも触れていますので、そちらもご注意ください。)

リバイバル上映で、映画館で鑑賞しました。

粒子感のある荒い映像がスクリーンに映し出されたとたんに、「うわ、映画だな~」という感慨(?)に浸り、いきなりテンションが上がります。
陰影をはっきりとつけて、顔のアップ

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観客を楽しませることに全力~『侍タイムスリッパー』感想(ネタバレあり)〜

観客を楽しませることに全力~『侍タイムスリッパー』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『侍タイムスリッパー』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)

作り手たちの時代劇への愛が見ているこちらにも伝わってくる、エンターテインメント作品でした。

「低予算で時代劇を作る」という難易度の高い挑戦を、物語上の設定やスタッフの工夫で上手く乗り切っていたと感じました。
例えば、昔に比べて高画質な映像を撮ることができる現代では、時代劇のセットや衣装など

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いつもの三谷幸喜と新しい三谷幸喜~『スオミの話をしよう』感想(ネタバレあり)〜

いつもの三谷幸喜と新しい三谷幸喜~『スオミの話をしよう』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『スオミの話をしよう』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。また『オケピ!』と『刑事コロンボ』の「死者の身代金」の内容にも一部触れているので、そちらもご注意ください)

内容は、適宜、加筆・修正します。

『スオミの話をしよう』は三谷幸喜の5年ぶりの監督映画ということですが、見終わってみると、今までの三谷幸喜らしい作風が全体に見えつつも、新しい三谷幸喜

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