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上司と語り合う幸せな時間をくれた朝ドラー『虎に翼』の感想


虎に翼』(とらにつばさ)は、2024年令和6年)度前期放送のNHK連続テレビ小説」第110作である。
2024年4月1日から9月27日まで放送された。
吉田恵里香作、伊藤沙莉主演。
原作は存在せず、日本で初めて女性として弁護士判事、裁判所長それぞれを務めた三淵嘉子をモデルに、オリジナルストーリーのフィクションとして制作される。

Wikipediaから引用

本当に面白かった

『虎に翼』は、とても面白かった。
本当にたくさんの心に残る回があるため、その一つ一つを書くと膨大だし、とりとめのない文章になってしまうため、ドラマの内容への感想は書くのはやめる。
ただ、私にとって『虎に翼』は忘れられない朝ドラになった。
その理由は、他人と語り合えた「朝ドラ」だったからだ。
 

昼休憩に朝ドラを見る上司

私は、今年(2024年)の4月に部署異動により、今の職場に転勤した。
今の私の職場(部署)は、昼休憩にテレビでNHKを映し、12時から全国ニュース→地方ニュース→情報番組→昔の朝ドラの再放送→現在放送中の朝ドラの再放送までの1時間が流れている。
その職場で、毎日、熱心に朝ドラを見ている女性の職員の方がいる。
その方は、私の直属の上司でもあった。
その方は、12時45分が近づくと、自分の椅子をテレビの前まで動かし、15分間しっかりと集中して朝ドラに見入っているのだ。
私の経験上、職場の昼休憩にここまで熱心に朝ドラを見続けている方は見たことがなかったため、はじめてその姿を見たときは、少し驚いた。
しかし、よくよく考えれば、通常、朝ドラが放送されている8時からの15分は、ほとんどの職員にとって、家を出て通勤していなければ始業時間に間に合わない時間帯であるはずなので、昼の再放送を見る習慣というのは、ライフワークバランス的にも合理的だなと思うところもあった。

そして、私が異動した2024年4月から『虎に翼』が始まったのだ。

流し見していた朝ドラ

子どもの頃から、朝ドラは常に家のテレビで流れていた。
基本的にNHKをベースとして映しているのが当たり前の家だったので、物心つく頃から、なんとなく朝のあわただしい生活の一部としてずっと朝ドラは存在していた。
しっかり見ていたものもあれば、全く見ていなかったものもある。
なにより、テレビ画面の時刻表示を時計代わりにしていたので、その機能の方が大きいときもあった。
なので、子供の頃から身近な存在ではあったが、熱心に見る習慣があったわけではない。
そんな私だが『虎に翼』は、毎日録画して、土日にまとめて見ていた。
きっかけは、4月がはじめまって早々に、ネットで面白いと話題になっていたため、今からならまだ間に合うし、試しに見てみようと思ったからだ。
実際に見て、本当に面白かった。
何より、これまでの朝ドラとは違う新しさ感じた。
新しさとは、ドラマの中で、はっきりとした「問いかけ」があったからだ。
「はて」という主人公の問いと共に、視聴者もその問いかけに対して考えさせられる。
毎回、明確な問いがあるため、見ている側も立ち止まって、劇中の問題について考えてしまうのだ。
気がつけば、毎週、録画をまとめて見る時間が楽しみになっていた。


『虎に翼』について、上司と語り合う時間

そしてある日、私は、昼休憩終わりのタイミングで、職場の上司に、自分も虎に翼を見ていることを伝えてみた。

「〇〇さん、僕も「虎に翼」を録画してみてるんですけど、面白いですよね」

すると上司は
「あ、そうなんだ。虎に翼ほんと面白いよね、なんか今までの朝ドラとは違うよね」
と話してくれて、そこから、週に2、3回、昼休憩終わりに少しだけ『虎に翼』を語り合う時間が自然に出来ていった。

会話の時間は短いが、各々の感想や印象的なシーンを話した。
毎週、異なる社会問題をテーマに物語が展開していくため、ドラマの内容から飛躍して、それぞれが思う社会の在り方について話すこともあった。
普段は、あまり仕事の話以外することは少ない中で、虎に翼を語り合えた時間は、とても楽しかった。
そして、こんなにラフな気持ちで仕事以外の社会問題について、職場の人と話し合ったことがあっただろうかと思った。

飲み会で職場の人と話す機会はあるが、こんな風に社会に対して思うことを語り合ったことはなかった。
特に、上司と部下の関係性であれば、どちらかが語り、もう一方がそれを聞くという場合が多く、対等に各々が思っていることを話すということは、あまりないことだった。
同期と話すときも、共通の話題は、仕事の愚痴か人事のことばかりで、同じテレビドラマを見てその感想を深く共有することなどほぼなかった。

『虎に翼』の感想を語り合うようになり、色々な考えを聞いていくうちに、ただ仕事をしているだけでは絶対に知ることのなかった人の一面を知ることができ、それはやがて、私の中で上司に対する人としての信頼感になっていった。

『虎に翼』の放送は終ったが、今では、上司と朝ドラ以外の話など、気軽にできるようになった。年齢や性別は違うが、好きなものを共有し、語り合える時間は、本当に素晴らしく、幸せなものだった。
私にとって『虎に翼』は、忘れられない朝ドラとなった。

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