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やばい、まじやばいで! 兄貴が何度死んでも生き返ってくる

やばい、まじやばいで!
何がやばいって、うちの兄貴や。何度死んでも生き返ってくる。
いったい、どないなっとんねん。ったく。

うちの兄貴おるやろ。俺より3つ上の。
仏壇に写真が飾ってあんで。
そう、そいつ。そいつが俺の兄貴や。

一昨年自動車事故で死んだねん。27やった。
うちとこの親が兄貴に車買ぉたってん。新車のスポーツカー。親バカやからな。
で、夜中に中国道をぶっ飛ばしぃ、派手に事故って死んだ。
葬式でおとんもおかんも泣き崩れてたよ。長男が死んでもうて。

葬式が終わっても、おとんもおかんもずっとふさぎ込んでもぉてな。
二人とも一気に歳取った感じやった。
兄貴が死んだのは、車を与えた自分たちのせいやって思うてたんやろうな。見ててかわいそうやったで。

で、葬式から3ヶ月ぐらいたった日曜の午後やった。
兄貴が帰って来よった。
照れくさそうに玄関に立っとった。
そんな兄貴を見て、おとんは腰抜かすし、おかんはその場で白目むいて卒倒したよ。

俺も兄貴を見て半分腰抜かしたわ。
ありえへんやん。そんなん。
「あっ兄貴、死んだんやないのかーーー!」ってやっとこさ声を絞り出して言うてん。
「いや~、なんか生き返ってもうて・・・」って兄貴は頭をかいとる。

恐る恐る兄貴をいろたけど、お化けやなかった。
しゃんとした人間や。どこからどう見ても生きてる兄貴や。
兄貴は、自分どうやって生き返ったかよーわからんのや とかすっとぼけたこと言うとった。
なんか気づいたら玄関の前におったみたいやで。

おとんもおかんも、正真正銘の兄貴やってわかったら、泣きよった。
おかんはえんえん泣いたよ。
おとんも号泣や。 
よぉぞ、生き返ってくれはった。ホンマにありがとーーー!って。
俺も泣いたよ。釣られてな。

3ヶ月前に葬式やったばかりやったけどな、生き返ったんならしゃあないよな。戸籍を復活させんとな。
さっそく月曜の朝イチで兄貴といっしょに町役場に戸籍を復活させに行ってん。

そしたらな、戸籍係のババアが、ババアちゅうても40代半ばぐらいやけどな、兄貴が生き返ったって言うても全然取り合ぉてくれへんのや。
荼毘に付してから死亡届けを出しとんのやさけ、生き返るとかありえへん。の一点張りや。
いや、兄貴はあんたの目の前に立っとるし・・・

埒があかへんので、ババアの上司を呼んだよ。
おとんの高校の同級生で兄貴をボウズの頃からよう知っとる人や。
兄貴の葬儀にも来てくれはった。

で、兄貴を見た途端、その上司、大号泣やで。
「ワレ、生きておったんかーーーー! 」って。
兄貴の肩をばんばん叩いて、兄貴をハグしまくりや。
兄貴はずっと照れくさそうにしとった。

結局、死亡届けが間違いやったっちゅうことで、兄貴の戸籍の復活がでけたよ。

その晩は、近所や親類筋を集めて、家で兄貴の生き返り&戸籍復活記念パーティや。
戸籍係の上司のおっちゃん(正確には市民課の課長さんや)も呼んだ。
呼んでなかった戸籍係のあのババアもなぜか来よった。(どうもおっちゃんの愛人らしい。まじか・・・)
おとんもおかんもめっさ嬉しそうやった。ホント喜んでたよ。

ところが、その翌々週、兄貴は突如病死や。
ごっつ高熱出してな、二晩苦しんで、コロっと死んだ。
医者が言うにはインフルエンザやった。

で、また葬式や。
”神様が、ヘコんどったウチらのために、短い期間やったけど、あの子を生き返らせてくれはったんやろなー”
おとんもおかんも淡々としとったわ。 
親類筋も近所の人も、”きっときちんと挨拶するために生き返って来たんやろうなー” なんて納得しとった。
兄貴はまた死んでもぉたけど、なんかほのぼのとしたええ葬儀やったで。ホンマ。

そしたら、それから2ヵ月後や。 
もじもじとバツが悪そうにまた兄が戻って来よった。 
「恥ずかしながら・・・また生き返ってしもた。」
玄関でもじもじしてる兄貴を見て、おとんは絶句しとった。
おかんはまた卒倒するんやないかと思うたら、普通に「おかえりー」って言うたな。
女の方が適応力があるんやろうな

生き返った兄貴を見て卒倒したのは、戸籍係のあの色気ババアや。
兄貴の葬儀に上司のおっちゃんといっしょに来て、死んだ兄貴を見とったさかいな。相当驚いとったで。
俺はババアの介抱で大変やった。

上司のおっちゃんは、「へーー、不思議なことがあるもんやなー」って感心するばかりや。
「いったいどないなっとんや? 」って兄貴に聞いとったけど、
兄貴は頭をかきながら 「いやー、それがよーわからんのですわ。どないなっとんでしょうねー」って首を捻るだけや。

そういうわけで、二度目の戸籍復活もなんとかでけた。

と思うたら、今度は兄貴の乗った飛行機が墜落や。
そう、太平洋沖に落ちたあの事故。
乗客・乗員合わせて300名以上が犠牲になったやつや。
今度は大掛かりな合同葬儀になりよった。

おとんとおかんも合同葬儀に呼ばれたけど、「どうせあの子はまた生き返って来るから、うちらはええ」とかぬかして行こうとせぇへんねん。
遺族会にも入らへん。賠償金もいらへんって言うとった。
兄貴が生き返ったら、めっちゃ難儀なことになりそうやからな。

そしたら、遺族会から、会には入らんでかめへんけど、葬儀は絶対に来てもらわな困る、賠償も受け取ってもらわな困るって言われた。

で、そこまで言わはるならっちゅうことで、おとんとおかんは葬儀には渋々行くことにした。
で、賠償金の方は受け取り人を交通遺児の会にしますわって言うたら、それも自分でまず受け取ってもらわな困るんやって言われとったわ。
なんか世の中ややこしいことになっとるな。

で、合同葬儀やけど、事故調査やら、身元特定やら、航空会社やら行政のお偉いさんたちの日程調整やらで、ようけ時間がかかってな、結局事故から2ヶ月たってようやっと行われた。

ちょうど航空会社のお偉いさんが挨拶してる最中やったな。
あれはまったく謝罪をするような感じではなかったで。
事故原因が全然わからへんからこっちもめっちゃ困っとるんやとか、なんかそんなよくわからへん話をぐだぐだ言っとったわ。
いったい何を言いたいのかよくわからんし、いつまでたっても終わらへんし、一言も謝らへんしで、遺族側はめっさイライラしてたよ。

そないな時に兄貴がひょこり現れたんや。合同葬儀に。
事故で死んだ327人の乗客、乗務員を後ろに引き連れてな。
みんな、兄貴といっしょに生き返ってもうたんやな。

いや、まじびっくりしたでー!
死んだ思うてた乗客達が、生きて現れよったからな。
卒倒、失神する遺族が続出や。
死んだやつが、遺族を介抱しとったわ。大丈夫かーって。

航空会社のお偉いさん達は、乗客、乗務員は誰も死んどらんとわかったら、なんかすごいはしゃいどったよ。
それまでずっと神妙な顔しとったんやけどな。
なんや、あの態度の豹変は。

でも、「いったい何があったんや?」っておとんから聞かれた兄貴が、
「いやーーー、機長がな、役員のパワハラはえげつないし、法定乗務時間とかシカトで働かされるし、給料も減らされるし、もうたまらんから、このまま海に突っ込んで死にたい思うとります!とか言い出してもぉて、まいったよーー」って話し出したもんやから、航空会社のお偉いさんたちは大パニックや。

「機長がそないな事言うはずがあれへん!」とか「そんなこと言うたなんて証拠はあるんかーーー!」とかわめいとったな。
せやけど、機長が後ろの方から恥ずかしそうに出て来て、「いや、それホンマですねん。」って言うたら、黙ってもたけどね。

それからは、「合同葬儀」改め「全員復活祝賀パーティ」や。
358年の歴史を持つ延命寺の荘厳な大本堂で、飲めや歌えの大宴会。
くそ真面目な顔で葬儀に参加しとった坊さん達ももうノリノリや。
坊さん達が率先してビールかけしとったよ。ゴーグルつけてな。
なんでそんなん持っとんのや? 思うたけど、誰も何も言わへんかったな。
大本堂にでーんと飾ってあった国宝の千手菩薩像や薬師如来観音像とか台座からどんどんのけて、自分が台座に座って、持ち込んだ機材でDJやっとった坊さんもおった。

で、最後は長渕の「とんぼ」や。
「おーーーおーおおおお、おおおおお」と叫びながら、全員で上を向いて拳をつきあげて大熱唱や。

てっきりがっぽり入ってくると思っとった旦那の賠償金がパーになって、結局離婚となった夫婦が何組も出たとか、遺産相続で下心が露見して縁切りされた親類縁者があちこちで出たとかは、もっと後になってからの話や。

航空会社のお偉いさん達は、刑事、民事とも責任問題となったし、がっぽり賠償金も取られたからな。もうどいつも再起不能やろうな。


で、兄貴は今どうしてるかって?

今は潜水艦に乗ってどこぞの海の底におるはずや。
あれから海上自衛隊にぜひ来たってやと言われてん。
海自の潜水艦は、今や兄貴の取り合いらしいで。

あっ これ国家機密やさけ、口外したらあかんで。
頼むで。



なんちゃって大阪弁です。気分を害されたら方がいたらごめんさない。🙇‍♀ 
もし良かったら正しい大阪弁をご指導くださいませ。

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