平日の昼下がりのスターバックス。ポケットに大好きな言葉を忍ばせて。
なんとなく薄ぼんやりと体調が悪いので、月曜日は有休を取った。
土曜日から数えて家で過ごすのが3日目なので、リハビリを兼ねて午後はスターバックスで過ごすことにした。
水だしアイスコーヒーの美味しさよ。
コールドブリューコーヒーという、水出しのアイスコーヒーを初めて頼んでみた。
しっかり濃いめに抽出されていて、氷で薄まりにくい。
何となくぼんやりしていた頭がアイスコーヒーの美味しさにハッキリしてくる。
窓からはギラギラしたアスファルトと、陽射しと闘うように歩みを進める人たちが見える。
久しぶりに食べたチョコチャンクスコーンは懐かしい味がした。
好きな言葉を集めたノートを作ってみた。
いつかやろうやろうと思いながら、数ヶ月経っていた。
今日は一粒万倍日だから、始めるのにうってつけだ!と思って取り掛かることにした。
用意したのは無印のパスポートメモ。
ジャケットの内ポケットにも楽々入りそうな、スリムさ。
深緑の表紙と、黄味がかった方眼のページが昔ながらの文房具の良さを醸し出している。
無駄のないスマートな一品だ。
メモを開いて、言葉を書き込んでいく。
尊敬している人とサシで飲んだときのハッとした一言。
大好きな小説のセリフ。
どんどん書き込んでいく。
最近、本屋B&Bさんで開催される対談イベントに参加するのにハマっている。
その対談のなかでもグッとくる言葉がたくさん落ちていたので、拾ってノートに書いてみた。
できあがったノートはすっかり私の宝物だった。
どんな時も心の安全基地になってくれそうな予感がする。
これから、何度も何度も読み返そう。
好きな人と会うたび、素敵な本と出会うたび、このノートのページが埋まっていくのかと思うとワクワクした。
スターバックスに集まる人を見て、郷愁に浸る。
ノート書きに疲れた私は、ふと周りを見渡した。
隣のテーブルでは、40代の奥様が2人お茶をしていた。
久々に会えて嬉しいという気持ちと相手への気遣いに溢れていた。
楚々とした仕草でストローでドリンクを吸う。
笑顔が綺麗で、美しかった。
みていて、どうしてか胸がキュッとなった。
「私が40代になったら、誰とこうやってお茶するんだろう」
社会人になってから、暮らしぶりの違いやライフステージの違いで、何となく前より話が合わないなと感じる友達が何人か出てきてしまった。
15年経ったら、多分、いろんなライフステージの違いで離れていく友達もいるんだろう。
私は誰と一緒に、こんな美しい笑顔で過ごしているかしら。
遠い未来に想いを馳せると、切なさと憧れの混ざった不思議な気持ちになった。
反対の通路に目をやると、爽やかな白いブラウスを着た女子大生がひとり。
レジで買ったポテチを一袋持って、席に座ったところだった。
1人で全部開けるつもりだろうか。
もしそうなら、好感が持てる。
彼女は背中を丸めてパソコンに向かう。
レポートでも書いているのだろうか。
大学の授業のない昼下がりの、のんびりと気だるい感じが懐かしいな〜、と思わず郷愁に浸る。
目を瞑れば、懐かしい大学構内のスターバックスのいつもの席がありありと思い出せる。
女の子は、だんだんレポートに飽きてきたのかSNSのリールを見始める。
ポテチはすでに半分以上減っていた。
何も仕切られていないけれど、まるでそこは彼女の部屋だった。
自分の自由な時間をのびのび過ごしていて、みていて気持ちが良かった。
彼女の部屋の脇をすり抜けて、私は出口へと向かう。
ポケットに大好きな言葉を忍ばせて、来た時よりもシャンとした心で私は帰路に着いたのであった。
《おわり》