偶然にしては、運命すぎる旅3【鼻高展望花の丘編】〜朝焼けと秋桜と牧場〜
空から花が
ひらひらとふってくる、
「良いことの前兆」として
語り継がれている彼岸花。
もしかして、
あなたを見たことは
本当に
前兆だったのかもしれない。
ーー
彼岸花色の海と夕焼けを楽しんだ
昨日から一夜明けた、
9月20日の日曜。
朝の3時半には
車を走らせていた。
1時間くらい経っただろうか。
「レインボー・モーニングだ!」
群馬に向かう車の中、
耳男くんが興奮している。
日の出前だけに見れる、
特別な虹色の空のショーが
始まったのだ。
遮るもののない、田んぼ道。
この。
朝だけの美しい色の世界の話を
どれだけの人が知っているのだろう。
毎日同じ時間が訪れるけど、
同じ色は一度もない。
毎日見ても飽きはしない、
朝の空。
何度文字に綴っても、
また伝えたい。
空は、諸行無常。
人もまた、諸行無常。
今日は、ブルーとパープルと
ピンクとライトブルーが
優しく朝を描いている。
その中を不確かに漂う、
頼りない雲。
ふわふわというより
ほよほよ。
鳥のカタチになったかと思えば、
一瞬でいなくなる。
まるで今、
雲をつかむ想いをしている人たちを
表すように。
またはその逆で、
自由を手にした人たちを
表すように。
次第にあたたかい温度を
感じさせる空気に染まっていく。
「あ、きた!太陽だ。」
今日は一段と眩しく
シャワーのような光線を放つ
朝日。
景色がオレンジ色に包まれていく。
太陽が昇りはじめると
今まで見えなかった色が
だんだん見えてくる。
「ま~る、さんかく~、しかく山~」
耳男くんが歌う。
進行方向には、
面白いカタチをした山たち。
私たちを囲むように
連なっている。
ほんとに、〇、△、□。
群馬の好きなところは
このドライブ中に眺める、
レゴのようにいびつな山並み。
自分を主張しつつも、
互いを尊重しあって
美しく並んでいる。
山は三角、という概念がなくなる。
それと不思議だけど
朝日と逆にある山側の空は
水墨画のような色をしている。
炭っぽくボヤけた朝空。
そして
この壮大な山脈を守るように
山の上にはモコモコとした雲が
低く連なっている。
さらに
その低い雲の上には
飛び乗って違う星に行けそうな
UFOみたいな雲。
道の左右には
稲刈りが始まり
まだら模様になった
黄金色の田んぼ。
そんな景色を眺めているだけで
心が洗われていく。
ふと。
景色をオレンジ色に
照らしていた太陽の明かりが
ある時間を境に、
透明になる。
周りの景色から
朝日の色が消え、
完全にいつも見ている
普段の色になった。
山も水墨画のような色から
緑色になった。
今日の目的は
「鼻高展望花の丘」に咲いている
秋の桜、コスモス。
と、その前に。
耳男君がスケボーをしたいというので、
まずは丘の近くにある
運動公園へ向かった。
まだ朝の6時台だけど、
元気に滑っている人たちがいる。
「早いな~」
いや、キミこそ。
早朝からすでに
3時間運転している耳男くん。
さすがに疲れたのか
「ちょっと寝るね」と
車中泊ベッドにイン。
充電タイム。
私は外に出て、
涼しい空気の中お散歩。
しかし、
どんどん日差しが暑くなってきた。
早いうちにお花を
見に行ったほうが良さそうだ。
車に戻ると
「やっぱり滑るの辞めとく~」
と耳男くん。
うん、それがいい。
体力が心配だし、
今から楽しいことが
待ってるはずだよ。
見学だけして
鼻高展望花の丘に向かう。
「あれ、こんなにカーブ多かったっけ?」
うねうね坂道、
急なカーブが何十個も待ち受ける。
どんどん山を登る。
すると、パッと景色が開けた。
見覚えのある風景!
久しぶりの
鼻高展望花の丘に到着。
チラホラ遠目から見える
ピンクや白にワクワクする。
駐車場から少し歩くと…
「わ〜!
このコラボ見たかったんだよ。
夏の花と秋の花!」
コスモスと向日葵がお出迎え。
思わぬお花のセッションに
早速テンションがあがる。
若々しく立派に咲く
遅咲きの向日葵。
隣では、二輪くっついて並ぶ
向日葵を見て
「ボクとパン子ちゃんだ!」
と嬉しがる耳男くん。
私より、乙女である。
メインの丘に行くと
真っ赤なサルビアに紫ラベンダー。
イロトリドリの
百日草、千日草!
きゅん、である。
そしてそして!
可愛い〜〜!
ピンク、黄色、
風に揺れるコスモス!
ぜーんぶっ、可愛い。
周りは山に囲まれ、
花と空だけが見える。
トキメキが止まらない。
「ボクとパン子ちゃんだ!」
お花畑の上に重なる、
耳男くんと私の影。
耳男くんは影のツーショットを
撮るのが好きだ。
乙女モードになり
嬉しそうに写真を撮っていた。
もちろん私も。
「あ、ここだ、ここ!」
以前、
一緒に写真を撮った場所を発見。
2人の幸せそうな笑顔が
お気に入りの一枚だった。
記念に
同じ場所で今日の2人を撮った。
一年経つと「歳をとった」
なのかもしれないけど、
私の場合は
心も体もアップデートして、
とっても元気になった。
体型はたくましくなったけど、
あの頃より
特別な日だけじゃなく
日常の笑顔も増えて
嬉しいことだ。
お店が開くまで
近くの蕎麦の花が咲く畑や
牧場をお散歩することに。
途中にある
手づくり感のある看板が可愛い。
牛は日差し除けに隠れて
見えなかった。
牧場の独特な匂いと暑さに
ちょっとクラッとしてきた。
だけど、
牧場のてづくりアイスや
ヨーグルトが気になって
お店まで歩く。
意外と歩く。
あとちょっとかな?と思ったら
「お店は10時からなんだ~」
とおじちゃんの声が。
あらら。
「あとで車でこようか」
とコスモス畑に戻る。
9時になり、お店が開きだした。
栗とかぼちゃを買う。
コロッケはまだ揚げてないそうだ。
ゆるい感じが観光地っぽい。
無料でネモフィラと
アグロステンマの種をもらう。
空色のネモフィラは
大好き。嬉しい。
ベンチに座り、ひと休憩。
地元の人たちを眺める。
「こんな感じでええかなっ」
おじいちゃんの声。
足を引きずりながらも
一生懸命、お店に並べた
玉ねぎの箱を見ながら
誇らしげに言う。
「それはちゃうわ!
売りもんやない。
コロッケ用のやつや。
裏に持ってき」
おばあちゃんに怒られる。
「なんと!」
つい声が漏れた。
切なさが滲み出る
おじいちゃん。
曲がった腰で
誇らしげに並べた玉ねぎを
トボ、トボと
裏に運んでいく。
そんなおじいちゃんと
おばあちゃんとのやりとりが
ちょっと切なくも
愛しくもあった。
私はもうおじいちゃんに
会えないから。
私がおばあちゃんになった時、
ヨボヨボでも何でも
耳男おじいちゃんが
隣に居てくれますように。
なんだかんだ、
照りつける日差しの下に
2時間いる私たち。
涼むために駐車場の売店で
去年も食べた350円の
ソフトクリームを買うことに。
群馬の山並みが見渡せる場所で
自然に癒されながら休む。
ひとくち、ふたくち。
かさましのコンフレークも
解凍されていない
イチゴとブルーベリーも
今日は嬉しい、
美味しい。
買った野菜を
置きに車のほうに戻る。
すると
隣の車におばあちゃんが一人。
窓は全開だけど、
日陰のない車内は
絶対に暑い。心配だ…。
きっと多分、
ご家族の方は
おばあちゃんは歩けないから
車から景色を見せてあげて
少しの間、今
お花見してるんだろうけど…。
おばあちゃんを
連れてきてることは
ステキなんだけど…。
私もそうしてたけど…。
今日は暑い!
クーラーを入れてあげないと
危ないよ!
心配しながら、お手洗いに行く。
亡くなった自分の
おばあちゃんのことを
想い出した。
やっぱり声をかけたほうがいいな。
戻ってみると
車がなくなっていた。
よかったー。安心した。
そして、昔
おばあちゃんと見た、
春の桜を思い出した。
あの時のおばあちゃん、
本当に笑顔が可愛かったな。
歩くのが難しくなってからも
家族で旅行したり、
お花を見に行った。
私が足になればいいと
車椅子を押した。
だけど、
車椅子が難しい場所もあって。
そんな時、
車の中で何十分も一人で
待っていたおばあちゃん、
どんな気持ちだったのかな。
もっと寄り添ってあげればよかった。
居なくなって気づくこと、
歳を重ねないと気づかなかったことが
たくさんある。
「よし、牧場のアイス屋さんに行こう」
今ソフトクリームを
食べたのを忘れたように、
耳男くんが言う。
いつものことだから
私も驚かない。
時計を見ると、
ちょうど時間は10時。
さきほど歩いた
牧場に車で向かう。
すると、
お店の前のベンチに
美味しそうに
ジェラートを頬張るファミリーたち。
幸せな景色だな。
駐車場には
すでに車がたくさん。
「あれ?人気なのかな?」
私たちがお店に並ぶと
さらに人が増えて
行列になっていった。
2人でダブルのコーンを食べることに。
アーモンドと栗をチョイス。
(本当はもっとおしゃれな名前だった)
見たからに美味しそう!
(写真の100倍は美味しそう)
群馬の町並みを一望しながら
「いただきま〜す」
ん、美味しい。
めちゃくちゃ美味い!
暑さで、溶ける溶ける。
アーモンドと栗が混ざり合う。
もちろん、
合わないわけがない。
私が一番重要視している
コーンも美味しい!
ジェラートの量も多いし、
コーンの先までしっかり
詰まってる。
100点!
しかもダブルで
400円(+コーン30円)。
さっきの
ソフトクリーム350円!
断然こっち派だ。笑
飲むヨーグルトも美味しい。
ちょっと外れた場所にあるけど、
みんなが
ここに寄る理由が分かった。
可愛いコスモスに
美味しいジェラート!
そして、目の前の
美しい山景色。
ステキな朝だ。
朝。
うん、まだ朝。
この後は?
ノープランだ。
4へ続く…。
泣き虫 パン子