紫式部日記第107話何ばかりの耳とどむることもなかりつる日ごろなれど、

(原文)
何ばかりの耳とどむることもなかりつる日ごろなれど、五節過ぎぬと思ふ内裏わたりのけはひ、うちつけにさうさうざうしきを巳の日の夜の調楽は、げにをかしかりけり。若やかなる殿上人など、いかに名残つれづれならむ。

※巳の日の夜の調楽:賀茂臨時祭りで演奏される雅楽に向けたリハーサル。五節の後の巳の日の夜に行うのが恒例。

(舞夢訳)
何も耳に留まるような話題もなかった、この何日間は、五節の舞の日が既に過ぎ去ってしまったという宮中の雰囲気は、かなり寂しく感じられるけれど、その中でも、巳の日の夜の調楽は実に楽しかった。若い盛りの殿上人たちは、それがどれほど名残惜しく、心に穴が開いたような気持ちであろうか。

五節の舞が終わり、「祭りの後の空虚感」が宮中に漂う。
その後に賀茂臨時祭りで演奏される雅楽に向けたリハーサルが行われるので、一時的に若い殿上人は盛り上がるけれど、リハーサルが終われば、再び空虚感に包まれてしまう。

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