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刑務所における行事(主に食事の点から)〜多様な「教育」「更生」の在り方

刑務所のお正月等に関する以下のような記事がありました。

刑務所は行事を大切にしていて、お正月にはおせち料理が出ますし、クリスマスにはケーキが、誕生日会にはちょっとしたお菓子とコーヒーが出ます。甘やかしているようにも思えますが、受刑者は社会でそのようなお祝い等をしてこなかった/してもらえなかった者も多いです。受刑者への正面切った形式ばった「教育」よりも、こういった行事を経験することの方が更生には効果的だったりするのです。

>われわれとしては、日々の生活へのメリハリや、情操教育の一環といった意味合いで特別菜の配食を行っていますが、たしかに、批判的な感情を持つ人がいることも理解できます。

「教育」には様々な形があって然るべきだと思います。

また、これは行事の話とは異なるのですが、刑務所での食事の話です。

刑務所に入って長く時間が経つにつれて、大抵の受刑者は痩せてきます。社会で食べていたものの量や質と、刑務所で出される食事におけるそれらとのギャップから、大抵の受刑者の体重は減っていきます。ただ、中には逆に体重が増えていく受刑者もいます。

覚醒剤の営利目的所持で逮捕された甲さんもその一人でした。甲さんは社会ではかなり「荒れた」生活を送っていました。覚醒剤の自己使用も行っており、ほぼ毎日、覚醒剤を摂取し、違法賭博場に通うといった日々でした。

その甲さんは刑務所で長く暮らす内に、みるみる体重が増えていったそうです。それは何故かというと、甲さん曰く「娑婆で三食なんてまともに食ったことなんかない」との理由からでした。覚醒剤により食欲が減退している状態が常だったことが大きいようですが、話を聞くと、家族と一緒に暮らした期間の短さもまたその要因の一つであるように思いました。

「受刑者に食事など与える必要などない」との声はよく聞きますし、批判が多くなることも理解できます。しかし、おせち料理やクリスマスケーキどころか、三度の食事を食べられるということだけでも、受刑者の心理面においてプラスに働くことになる場合もあるのです。プラスに働くとは、更生に繋がるということです。

刑務所には様々な背景を持つ受刑者が存在します。そのような多様な背景を持つ受刑者に対する「教育」「更生」の在り方もまた多様であるべきだと思います。その意味でも、2025年6月1日から施行される、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」の運用の仕方には注目と期待が集まります。運用主体が公権力であるということから、行き過ぎにならないか、公権力の濫用になっていないかということには常に目を光らせておきながらも、同程度に大きな期待も寄せられます。その両側面から、要注目の大改革だといえるでしょう。



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