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読書感想文「なぜ人に 会うのは つらいのか」

2022年4月5日

「なぜ人に 会うのは つらいのか」佐藤優 斎藤環 2022 中公新書ラクレ

元外務省高官(スパイ?)で宗教に詳しい佐藤氏と、精神病理学の大家でオタクにも精通している斎藤氏の対談本です。なかなか知識も洞察も深い二人の、濃い内容の”ダイアローグ”は読み応えがありました。

人と会うことは暴力的である。リモートでの授業や会議によって、その暴力性は低減される。直接会うことが苦手な人たちにとっては良かったかもしれない。リモート授業も効率的である。しかし、直接会って話をするほうが、「話が早い」こともある。なので、これからは直接とリモートのハイブリッドが進むであろう。

という話が中心でした。その他、最新脳科学と日本人論などが、脱線的に展開されていました。その脱線部分も刺激的でした。

さて、授業や会議はハイブリッドになっていくでしょうか。さすがに現物を扱わなければならない状況では、リアルが優先されるでしょうけど、ボクは限りなくリモートのみに近づいていくと予想しています。

高速通信は既に十分な技術に到達しています。あとはVR技術ですが、さほど障壁があるとは思えません。10年以内に多くの疑似体験が現実に近似するでしょう。

そうなると居ながらにしてリアルを体感できるので、わざわざ多くのリスクを侵して移動して直接対面するとは思えないのです。

そして忘れてはいけない技術として、AIがあります。AI技術が発達した社会での、例えば会議はどうなるでしょうか。
おそらく、あらゆる発言の意図や発言者の感情などは分析・表示してくれるでしょう。もちろん、自分が言うべき言葉も選択肢として表示してくれるはずです。我々は、それらから総合的に判断して、AIが考えた選択肢を選ぶだけなのです。もちろん発言は、自分の声色、声調を模した発話ドロイドに発言させているのです。というか音声よりもチャットでしょうけど。
このような、発言(文章)の意味を考えて、それに対する最適解を文章化することは、そろそろできそうな気がしています。

次に来るのは、選択という行為です。人は「決める」ことが一番苦手です。AIは、この人がどの選択肢を選ぶかは学習してしまっている筈です。ならば、この自分ボットに会議のほとんどを任せてしまうことになると思います。
人は、ただ会議の行く末を見守るだけです。本来なら、AI同士なので瞬時に終わるでしょうけど、人の理解できる速度で実況してくれるはずです。たまに誰かが、一時停止ボタンなどを押して長考に入ったりするかもしれませんが。その時、AIは次善策のBプランやCプランなどを表示するでしょう。

こんな世界が来てしまったら、いったい人が必要なのか考えてしまいます。人の優秀さは意味が無くなってしまうような気がします。

それでも残りそうなのは、人それぞれの個性でしょう。特に好き嫌い、快不快に対する感度などは原始的なので無視できないと考えています。

ここ20年のSF小説を読んでいませんが、このあたりは語り尽くされているでしょう。ただ「快不快に対する感度」から「無意識」に至る辺りが、AIなどにはわからないエアポケットになるのではないかというのが、ボクの読みです。
そこにビジネスチャンスを見出して開拓しようとしています。またこの辺を書いていきます。それではまた。

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