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ねぇ、ごま。男が欲しいねぇ。

 日曜日・お天気・予定なし。
 思いたって美容サロンに電話。気になっている顔の「産毛・ムダ毛」処理をお願いしてみた。+眉毛。
 15時30分の枠で予約できた。ウキウキする。おでこ、鼻の下、あご。自分ではじょうずに「剃る」ができない。「剃る」と肌のきめを壊す、とも聞いた。むかしは剛毛で右と左が繋がっていた眉も61の今、見る影もない、が、まばらな毛の長さはバラバラだし、白い毛も勢いづいている。

 15時30分が来るまでプチプライスのお洋服を見た。夏も終わりだがカップ付きキャミのありがたさを最近知った。涼しい。らく。私の胸は標準以下サイズなのでキャミについてくるブラでじゅうぶん間に合う。EカップだかFカップだかの巨大サイズの友だちは「カップ付きキャミ」ではおさまらん、らしい。女友だちと温泉等にいくとついついその子の「胸」に眼を注いでしまう。豊満な、垂れていない、先の尖がった、白い乳房は女の私から見ても「じょうとうな果実」に見える。男からしたら、ね、それはタイヘンなことでしょう。

 カップ付きキャミを買うか買わないかで迷い結局買わずに予約してある美容サロンに入店。案内されリクライニングのお席に落ち着き仰向けになる。なったとたんに極度に眠い。
 ワックス処理。余分な毛の上にワックスを塗って、それをピッとはがしていく。はがすたんびに、はがした部分がチリチリ痛い。そのチリチリがなんとも待ち遠しい快感である。

 近頃思うのだ。
 私は「無防備の格好で何か具体的行為を誰かにしてもらう」ことが大好きなんだな。美容院で髪を洗ってもらう、髪を染めてもらう、カットしてもらう、ブロウしてもらう、美容サロンで産毛処理してもらう、眉を整えてもらう、エステサロンでフェイシャルとデコルテをマッサージしてもらう。
 好きな男に肩を抱いてもらう、唇を吸ってもらう、腰に手を回してもらうえとせとらえとせとら。
 自分が能動的に「誰かに何かをしてあげる」のは苦手で億劫だ。
 ダメでだらしなくて怠惰で自分本位。
 こういうのはね、でも女の「勲章」だと思う。誇らしげに他人になされるがまま、になっていようと決めた。残りの人生そんなにないもの。

 帰宅後。実はやることは山もりなんだが、その中で「家事」のプライオリティは極度に低い。洗濯ものを畳んでしまおう、トイレを掃除しよう、夕ご飯を作ろう、いい加減カオスになってるワードローブを片付けよう、
いろいろある。
 「家事」あるいは「家の事」をちゃんとしてから好きな事をしようね。
家人によく言われる。家人という言葉を妻が夫のことをいう場合に使用するのが適切かどうか、知らない。でも今日は調べるのが面倒なので便宜的にこの言葉を使用する。
 家人は私をいちいち叱るのが趣味なようで、下手をすると食器の洗い方に至るまで文句を並べてくる。という話を先日、英会話のクラスでしたら「うちもそうよ」といってくれる女性がいた。彼女の話を聞くとどうやら家庭内の事情は我が家と似ている。
「妻は家事が苦手。何をやらせても夫の方がそつなくこなす」

 ときどき。
 家人に「なぜ私と結婚したのか?」と尋ねたくなる。
私の特徴は
 ①他人に意見されるのが大嫌い
 ②家事が出来ない 特に料理などひどいものだ。
 ③稼ぎがない
 ④金遣いが荒い
 ⑤怠惰

 ①から⑤まで、見事にそろえ、しかも一度もそれを反省したことがない、否、反省したとしてもスグに忘れる。
 
 先日の夜、家人がゴルフと百条委員会動画の視聴を終え、真夜中2時過ぎに寝ようとした時、布団を蹴飛ばした私が
「ごま」
 と言ったらしい。
 ただ一言、しかしクリアな発音で
「ごま」
 
 翌朝。
寝言で「ごま」が出てくる夢とはいったいどのような状況の夢なのか。について家人と検討した。
 ①アラジン?シンドバッドの冒険?ともかく千夜一夜物語の中で「ひらけなんとか」のなんとかは何なのか?と誰かに聞かれた私が「ごま」と答えた。
 ②冷や麦を食する際、誰かの「薬味はネギとしょうがの他に何かある?」との問いに私が「ごま」と答えた。
 ③アザラシの種類って何があったっけ?誰かのこの問いに私が「ごま」と答えた。
 
 
 こんなのはどうだろう?
 私は積み重ねた怠惰の結果、ついには家人に見放され流浪の身となるがひとり寝のさみしさのあまり狂気を得、常時頭の中に「極彩色の孔雀」を飼うようになる。その派手で奇抜な色合いを愛した私は孔雀に名前を与えることを思いつき、しかし「カトリーヌ」だの「シンシア」などはつまらぬなぁ、としばし熟慮した結果、孔雀を「ごま」と名付ける。
 ねえ、ごま。さみしいねぇ。
 ねえ、ごま。お腹空いたねえ。
 ねぇ、ごま。男が欲しいねえ。

 ねぇ、ごま。
 
 私は闇夜でそう囁き、家人は、ねぇ、の部分を聴きそこなった。ゆえに「ごま」のみをわたしの寝言として認識した。

 怠惰と身勝手がたたり、死後の私は、にやにや笑みを浮かべた閻魔様に「来世は畜生にしてやる」と宣告される。
 だが私担当の天の番人は(悪魔でも死神でも天使でもなんでもいい、どれもさほど変わらない)わりと心根に暖かいところがあり、閻魔様に「せめてどんな畜生になるかはこやつに選ばせてやりましょう」などと助言する。「さ、なんでもいい、なりたい畜生を言え」
私はしばし考え「ごま」と返答するのだ。
 もちろん閻魔様は「ごま」が孔雀であることなど知る由もない。

 否、もしかしたら
 閻魔様は「ごま」=孔雀、とする浅はかな私の「工夫」などとうに見透かしているかもしれぬ。
 はて。孔雀は「畜生」に属するのだろうか?
 調べればいいのだが例によって面倒なので放置。

 なにを書いているのかわからなくなった。
 毎日は風の如くすうすうとびゅうびゅうと、過ぎてゆくなぁ。

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