食品ロス削減に向けた新しい取り組みとは?〈サステナ学習帳#73〉
食品ロスは、環境や経済に大きな影響を与える問題である。日本でも、年間で約522万トンの食品が捨てられているとされる。この廃棄が温室効果ガス排出の8-10%を占めるため、食品ロス削減は気候変動対策としても重要だ。今回は、消費者行動の変革と技術革新を通じた新しいアプローチを見ていく。
【売れ残った食品を届ける仕組み】
食品ロス削減のカギは、消費者の意識と行動の変革にある。日本では、近年「フードシェアリングアプリ」の普及が進んでおり、飲食店やスーパーの余剰食品を安価で提供する仕組みが広がっている。例えば、東京都内では「TABETE」というアプリが飲食店の余剰食品を消費者に届ける取り組みを行っている。
一方、海外では、デンマークの「Too Good To Go」が、同様に余剰食品を消費者に届ける活動を進めている。また、賞味期限が近い食品を割引販売する「食品リカバリーショップ」も、日本やフランスなどで見られる。このような取り組みにより、消費者が手軽に余剰食品を入手し、食品廃棄の削減が可能になっている。
【AIを活用した需要予測の向上】
技術革新も、食品ロス削減における重要な要素だ。日本では、AIを使った需要予測技術が導入され、食品小売業界での過剰な仕入れを防ぐ役割を果たしている。例えば、大手スーパー「イオン」は、AIを活用して販売予測を行い、在庫管理の効率化を進めている。海外では、イギリスの「Ocado」がAIとIoT技術を駆使し、より精度の高い在庫管理を実現している。また、スマート冷蔵庫の開発も進んでおり、消費者が食品の賞味期限を容易に把握できる。これにより、家庭内での食品廃棄を減らすことが期待されている。
【農業や生産段階での新たな取り組み】
食品ロスは、生産段階でも発生する。日本では、規格外品の活用が注目されており、これらを加工食品に転用する企業の取り組みが増えている。例えば、「サラヤ」は規格外の野菜をスープやペーストに加工し、無駄を最小限に抑えている。また、ドローンを使った収穫の効率化や、AIによる作物選別技術も導入され始めている。これらの技術は、日本だけでなく、アメリカやオーストラリアなどの農業先進国でも採用されている。
【まとめ】
新しい食品ロス削減のアプローチは、従来よりも持続可能性が高い解決策を提供する。消費者と企業が連携し、技術革新を活用することで、食品ロスはより効果的に削減される可能性がある。日本でも海外でも、食品ロス削減は小さな行動の積み重ねが必要だが、それだけではなく、社会全体での協力が不可欠である。こうした変化が、より持続可能な社会の実現につながる。