スマトラ島の温泉をめぐる旅 5日目 タケンゴンの温泉
部屋の外が騒がしく目が覚めた。ほかの宿泊客がリビングで朝ごはんを食べていたようだ。わたしの寝ているドミトリーはリビングに隣接している。インドネシア人の旅行者だった。
でも明らかにインドネシア語ではない言葉なので聞くとガヨ族だった。
朝の散歩
宿の外は空気が澄んで気持ち良さそうだ。
付近をぶらっとしてみる。
まずは湖に向かう。思ったより大きい。山の斜面の急さ加減から見てカルデラ湖だろう。
遊覧船があるようなのであとで乗ってみようと思う。
朝の光が湖面に差し込み神々しい。
昨夜ご飯を食べたあたりに向かう。
夜は暗くてわからなかったが、田んぼと畑に囲まれていたようだ。町のあるあたりは元は湖底だったのか平らで広々としている。
散歩している人が多い。家々の人たちも含めて、言葉がインドネシア語ではない。ガヨの言葉なのだろう。
動物も多い。牛、馬、犬、ネコ、鶏を見た。そういえば、ここにくる途中の山には猿もたくさんいた。
そして道端には池によくある足こぎボートの残骸があった。
宿に戻り、屋上で湖を眺めながらカップラーメンとパンを食べる。
美しい景色は、カップラーメンさえも高級品に感じさせてくれる。
アチェダンスが見たいと宿主に相談してみた。朝、男性合唱団のような歌声が遠くから聞こえたので、もしかすると民間芸能が盛んな地域なのかもしれないと思ったのだ。結論から言うと無理だった。
アチェダンスはガヨの踊りと聞いていたので、タケンゴンで普通に見られると思っていたら、同じガヨでも別の地域の踊りで、ここの踊りはスク・ガヨだった。
しかも特別なイベントでしかやらない踊りらしい。今回はみられないそうだ。残念。
ガヨ族はガヨ高地に散らばって住んでおり、主に3つのエリアに別れている。サマンダンスを伝承してきたエリアは、山伝いにここから250キロ南にあるクタケインという町。バスで11時間かかる。行くのは断念した。
温泉へ行く
バイクを100,000ルピア(1000円)でレンタルして20キロ北にある温泉へ向かう。
地形で言うと外輪山にあたる峠を越えてちょっと下ったところに開けた場所があり、町になっている。そこのモスクの横に1ヶ所、そこから300メートルほど離れてもう1ヶ所ある。
(1) シンパン・バリック温泉
通りから少し荒れた横道に入って数十メートル進むと温泉に突き当たる。
ゲートのところで入浴料と駐車料をそれぞれ5000ルピア、合わせて10,000ルピア(100円)はらう。
温泉、といっても25メートルプールのような巨大な浴槽が目の前に横たわる。緑色をしている。
とても深く首から上が出るくらい。急に深い場所があったらちょっと困るなと思いながらも、好奇心にあらがえず奥に進んでいく。
お湯の温度は38度くらいで適温。味は強いミネラルの味がするが、よくわからない。プールの壁にうっすらと析出物らしいマーブル模様がついている。
プールの底からごく小さな泡が無数に浮かび上がってくるので、もしや炭酸泉かと期待したが、藻から生まれているようだ。お湯が緑に見えるのもこの藻のせい。
お湯はプールの奥から流れ込んでいて、あとで確かめたらその先は山から引湯しているそうだ。
わたしは昨夜お湯がなかった関係で頭に数回水をかけただけだったことを思い出し、プールに頭から潜り汚れを落とした。
日本だとマナー違反だが、インドネシアでは石鹸やシャンプーを使わないだけマシな部類に入る。と言い訳してみる。
上がってストレッチをしてまた入ってを何度か繰り返して上がった。
(2) 名もなき温泉
300メートルほど先に温泉があると地図に出ていたので探して行ってみると、あった。わかりにくいが、駐車場にバイクを停めて門をくぐり坂を下っていく。
ここでも入浴料と駐車料合わせて10,000ルピア(100円)払う。
大きく左にカーブしている坂を下まで下り切ると目隠しの壁があり、その奥に綺麗な緑色をした浴槽が現れた。
まるで国見温泉や熊の湯のようなバスクリン色だ。
まさかそんな訳ないと思って入ってみると、やはり藻の色で緑に見えるだけだった。
お湯の味は先ほどの温泉よりこっちの方が若干濃く、温度も1、2度高く感じた。
1人でゆっくりと過ごした。
景色の良いレストランでハンバーガーを食べる
最初から絶対にここにしようと決めていた。美しい湖を眺めながら食事をしたかったのだ。
景色は想像以上。
わたしは店の名前を冠した「HIPバーガー」を頼んだ。
味はサンバルソースが効いたローカルテイストで、ハンバーグは入っていないようだった。
でもいい。ここは景色を楽しみにしていたのだから。
絶景を見ながら食事と飲み物を楽しむのは最高の組み合わせだ。
また温泉へ
次の温泉は地図だと途中で道路が途切れている山の中の温泉だ。うまく見つかるといいのだが。。
ウィ・ポラック温泉
幹線道路を外れるので道は細くなる。
それでも綺麗に舗装されていて2車線ある。
バイクと車もそれなりに行き来していて、道沿いには住居や店を多くみる。
ボロ家もあるが、インドネシアの他の田舎に比べると貧しくなさそうに見える。
子供の頃に夏休みで田舎に帰省した時の光景を思い出す。空の青さや空気感が似ているのかもしれない。
コーヒーのおかげだろうか。あるいは商品作物は儲かるという先入観からそう見えているだけなのだろうか。
道はいよいよ山に向かって登っていく。1車線になる。
道の両脇にはコーヒーの木がたくさん植っていて、みると緑色のコーヒーの実がたわわに実っている。
自分用のコーヒーを育てて飲めるなんて、しかも美味しくて評判のブランドなんて羨ましい。
そのうち道はじゃり道になり、かつ細くなった。わたしは怖くなり、バイクを止めて歩き出した。腰には悪いが、そんなことは言っていられない。
どれほど歩いただろうか。
コーヒーの木がずいぶん減ってきたなと思いながら歩いていくと、行く先の左手奥に壊れかけた木小屋と、同じく荒れたモスクが見えた。
なんとなく、あの小屋の近くに温泉があるに違いないと思い、進んでいく。
しかし小屋の周りには何もなく、さらに道を上に行ってもない。
地図だとこの辺なんだけどこういうことはある。仕方なく戻ることにした。
すると右手(下から登ってくる時は左手)の崖下に偶然温泉が見えた。
小屋の方ばかり見て、下に目をやらなかったから見逃したのだろう。何はともあれよかった。
温泉はコーヒー牛乳のような濃いまっ茶色をしている。ワクワクする見た目だ。
入って味見してみると、ぬるい鉄泉だった。
ぬるいといっても37度くらいはあり、じんわりと温まる。
味は鉄の味。
温泉が流れてくる場所を見ても、横を流れる川を見ても赤茶けている。伊香保温泉のようだ。
ここにくるまで大変だったせいか、満足度が高かった。
ほとんど諦めかけていただけに見つかってラッキーだ。
山道を元きた方に下り、バイクに乗って次の場所に向かう。
湖を一周するのもいいかなと思っていたが、空がだんだん曇ってきたのでやめて、町に近い湖畔のレストランでジュースを飲むことにした。
そしてバスターミナルに立ち寄って、メダン行きのバスを確保した。
明日の夜19時発。
夕食はガヨ料理のレストランを探したが見つからず、カフェのナシゴレンになってしまった。
ガヨの料理を食べたいんだというと、「ガヨコーヒーならあるよ」という店員。それは知っているし、今日はもうたくさん飲んだのだ。
観光地化しているようでいて、わたしのような贅沢な旅人にとってはまだまだなところがある。
明日は宿がギリギリまで部屋を使ってよいといってくれたので好意に甘えることにする。
午前は観光、午後昼寝の予定。
今日のマップ