スラウェシ島の温泉をめぐる旅 7日目 青い温泉を訪ねて45キロ
遠いので半分諦めかけていた温泉がある。綺麗な青い色をしている温泉で、日本でいえば別府鉄輪の地獄めぐりの一つ「海地獄」や、温泉チャンピオンの郡司氏が日本一青いといった湯布院にある「ゆふいん泰葉」みたいな温泉だ。
わたしはいずれも行ったことがあり、他にも青いと言われるわいた温泉郷の「豊礼の湯」にも行った。
青い色が大好きなのだ。
そんなわけで、青い色をした池が湯気を立てている画像を見て、ぜひ行ってみたいものだと思っていたのである。
青い温泉に行く
レンタルバイクは在庫切れだったので、またグラブでバイクをよび、運転手さんと交渉した。値段はともかく、そんな遠くに行ってくれるかが心配だったが、あっさりOKが出て、ほかにも3か所周り、合計4箇所で350,000ルピア(3500円)で行ってくれることになった。
今日の目的地は、これまで行ったトンダノ温泉をさらに20キロ近く先に行く必要がある。もう何度も通ったトモホンの町や、トンダノの町を通り過ぎ、バイクは進む。
今回の運転手は気のいい人間で、道をいつも譲っている。そして、プップと軽くクラクションを鳴らす挨拶を欠かさない。
わたしまで朗らかな気分になってくる。
Langowanの町に入ると温泉はいよいよだ。
(1)カルメンガ温泉
通りから少し奥まったところにあるが、湯気がもうもうと立っているのですぐにわかった。
相当高い温度で噴出しているようだ。
色は確かに青いが、事前にみた写真よりは青くない。湯気が太陽光を遮り、レイリー散乱を抑えているのだろうと思われた。もう少し低温になれば今日は晴れているだけにかなり青かっただろう。
温泉は個室のみでプールはない。一人一人に新しいお湯を入れてくれるのでとても新鮮だ。個室料金10,000ルピア(100円)。
源泉は100度あるため入れたものではなく、この湯守は高温の温泉をしばらく放置し冷ますための待機プールを作ってくれている。
そして、個室では、50度くらいになったお湯と、外気温と同じくらいに冷えた温泉をまぜて、自分の好みの温度になるよう調整できる仕組みになっている。
どんだけ温泉が好きな人たちなんだろう。ここまで源泉100%にこだわるとは。
お湯は思ったより柔らかく、硫化水素の香りがするので硫黄泉なのは間違い無いだろう。他は匂いも味もしない。
ただ、お湯がヌメっとしているので、もしかするとナトリウム炭酸水素(旧泉質名で重曹泉)も入っている可能性がある。
温泉に没入していたら、家族連れの大きな声がしはじめたので切り上げて上がることにした。
よりによってわたしの個室の両側を挟み込むように部屋を取っているようだ。
静かに温泉に入る習慣がまだなく、プールに入るみたいな感覚なのかもしれない。そのうち温泉文化が成熟してくることを期待している。
改めて源泉の様子を確認に行くと、温泉卵を作っていた。本当にこの人たちはわかっている。一つ5000ルピア(50円)で販売もしている。
インドネシアで温泉を調理に使っているところを初めて見た。
箱根の温泉卵のように殻が黒くならず白いままなので、鉄分がほとんど入っていない温泉なのだろう。
(2)レノレウォ温泉
ここの池は写真で見るととても青かった。海地獄のようだ。
わたしは今度こそ青い温泉を見て、入れるならば入るつもりで行ってみた。
森の中の砂利道を進んでいくと、遠目にも青いとわかる池が見えてくる。
バイクを脇に止め、池におり、触ってみた。
触れるレベルだけどかなり熱く入れない。手や足をつけることも叶わないレベルだ。
ちょっと手に取って舐めたら、カルメンガと同じ泉質のようだった。硫黄泉だろう。
だが、わたしはとても満足した。
インドネシアにも青い温泉があることをこの目で確かめることができた。
(3)カマンゲン温泉
この温泉に行くまで、途中にあるはずの温泉は3ヶ所とも閉まっていた。ただ閉まっているだけでなく、閉鎖されたようにも見える。
カマンゲンはカルメンガとレノレウォから程近く、事前調査で画像は見つからなかったが青い可能性があるとリストアップしていたところだ。
行ってみると、湯船はなくインドネシアによくある打たせ湯タイプの温泉だった。個室料10,000ルピア(100円)
床や壁が茶色いなと思っていたら、鉄の味がする温泉だった。温泉好きの間で「金気臭」と呼ばれるものだ。色は新鮮な証である無色透明。
これが時間が経ち空気と交わり酸化が進むと茶色くなる。いわゆる錆びた状態。
茶色い温泉が好きな方がいらっしゃると思いますが、なるべく茶色化が進んでいない温泉が新鮮な温泉なので、覚えておくと良いでしょう。
他に析出物ができていたので、旧泉質名で土類泉と呼ばれる温泉かもしれない。
この温泉はかなり良さそうなので湯船に浸かってみたかった。
源泉は敷地内にあり、かなりの量自然湧出している。
壁に温泉成分がこびりついていて、わたしが手で取って観察していると、湯守のおばちゃんが「それは薬に使われる」と言っていた。何に効くかは聞き取れなかったが、インドネシアの民間療法かもしれない。
温泉を治療に使う文化がありそうなので、いつかインドネシア人の誰かが研究して発表してほしい。
(4)キナリ温泉
本日最後の温泉になる。
マナド方面に10キロほど戻り、山の中に2キロほど入っていくとある。
何の案内もないが、川沿いに湧いている様子なので、Google Mapで見つけた場所でバイクをおり、川の付近を探したら見つかった。
いつもの如くシャンプーやら石鹸の空き袋が散乱しており、地元住民が使っていることがわかる。
温泉は川から少し離れた場所で、底から湧き出ている。お湯を舐めてみると、無味無臭なので、単純温泉と思われる。
温度は40度くらい。適温のお湯がたくさん湧いているのは素晴らしい。
川は普通に冷たかった。
ゴミの様子と温泉の様子を観察すると、源泉は綺麗に保たれていて、そこからパイプで流れ出ているところにゴミがたくさん落ちているので、源泉は入ってはいけないのだろう。
わたしはゴミがたくさん沈んでいる湯船に浸かる気になれず、足だけつけて終わりにした。
トモホンの市場へ行く
スラウェシ島の市場はゲテモノ市場で有名だ。
蛇、さる、犬、猫など普通は食べない動物たちが売られているのでゲテモノ市場という。ミナハサ人の多様な食文化が生んだ市場とも言える。
運転手がトモホンの市場がまさにゲテモノ系だというので、ものは試しに見に行ってみることにした。
かの高見順氏もゲテモノを食べたようで、「蘭印の印象」の中にトモホンでネズミを食べた話が出てくる。
写真はとても気持ちが悪くなるので、ここには載せない。外側だけ。
行った時間が昼過ぎかつ平日だったこともあり、市場は閑散としていて半分終わりかけていた。
そこで見たものは、焦げた犬、タイヤのようなニシキヘビの切れ端、あとは普通の豚肉、籠に入れられた鶏だった。
わたしは見ているうちに気持ち悪くなり、食欲も失ってしまったため、ランチをトモホンで食べるのはやめてホテルに戻ることにした。
運転手には申し訳ないことをした。
明日は朝9時のフライトでパルへ向かう。マカッサル経由になるため、パル到着は夕方の予定。
今日行った温泉の詳細マップ