シニア世代の最新動向とは?購買履歴データからひも解く/ Weekly Topicセミナーレポート
「人生100年時代」という言葉を聞いたことがありますか?平均寿命が延び、定年退職(年金受領開始)のタイミングも延びており、「人生100年時代」をテーマに厚生労働省を含めてさまざまな発表がされています。世界の平均年齢と日本の平均年齢の両方を見ても延びており、実は日本の平均年齢はすでに48歳まで上がっています。また、日本と世界の平均年齢を比べると日本の方が18歳高くなっており(※)、日本の少子高齢化が進んでいると改めて実感する数字だと思います。このような背景から、近年変わりつつあるシニア世代の動向をマクロミルの消費者購買履歴データ「QPR™」を用いて紐解いていきたいと思います。こちらの記事は、2021年9月29日開催のセミナー「購買履歴データでみるシニア世代」の内容です。
※総務省統計局「世界の統計2021」より
1.シニア世代とは
<シニア世代の定義>
シニアの定義は、国連では60歳以上、WHOでは65歳以上とされています。今回の分析では「団塊世代」「ポスト団塊世代」の2つの世代(62歳以上の方)をシニア世代と定義して国内のシニア世代の分析を行っています。
もう少し深堀りすると、日本の人口の約23%がシニア世代にあたり、全体に占めるボリュームも大きな世代です。また、シニアを考える上で重要な視点として働いているか働いていないかといった違いがあります。例えば団塊世代だと、ほとんどの方は働いていませんが、30%の方は引き続き働いています。ポスト団塊世代になると50%以上は働いていて全体の30%は週5日以上働いています。まだまだ現役で働ける方も多くいるということがわかります。シニアという1つの括りの中でも、働き方には様々な就業状況があるため、分析の際の切り口となりそうです。
人口ボリューム(QPR™モニタにおけるシェア)
┗15歳~69歳(一部70代含む)は、QPR™モニタの約23%を占めている
就業状況
┗団塊世代の3割が働いている/ポスト団塊世代の5割弱が働いている(3割程度は週5日以上勤務)
2.購買履歴データでみるシニア世代
<買い物傾向>
購買履歴データをみてみると、シニア世代は全体と比べて支出する金額のボリュームが大きく、皆さんご認識の通りだと思いますが、現在の市場においても無視できない、非常に購買力を持った世代といえます。団塊世代は買い物頻度が高く、ポスト団塊世代はまとめ買いの傾向が強いことが特徴になっています。
<購入チャネル>
メインチャネルがスーパーマーケットであることはどの世代も変わらずですが、年齢が上がるにつれて、その他購入先(生協など)のスコアが若干上がっています。また、他世代と比べるとシニア世代のコンビニエンスストアの利用は少ないものの若干の需要があることもわかります。
<購入カテゴリー>
食品における購入カテゴリー、TOP25をまとめました。黄色の部分を見ると、シニア世代では和総菜、漬物、ビールなどが、ランキングの上位にきています。トータルと比較すると牛乳や食パンも上位にきていることがわかります。
<コロナ禍で増加した購買カテゴリー>
以下の表はコロナ前と後を比較して増加した購買カテゴリーを表しています。トータルで見るとマスク、消毒殺菌、体温計など、やはりコロナに関わる消費が上位にあがっています。団塊世代を見ると、裁縫・手芸用品が上位にあがっています。団塊世代の巣ごもり需要商品からは、シニアならではの生活習慣が購買カテゴリーに反映されていることが想像できます。
<コロナ禍で減少した購買カテゴリー>
以下の表は、前のスライドとは逆にコロナ前後で減少した購買カテゴリーを表しています。顕著な特徴としては、ポスト団塊世代で現れており、リップカラー、チーク、ファンデーション、靴用クリームなど、外出が減ったことが要因と想定されるカテゴリーが目立っています。
3.意識調査と掛け合わせて見えたこと
<幸福度・時間の余裕度>
シニア世代の人物像を深掘りするために意識データと掛け合わせて見ていきます。まず、幸福度や時間の余裕度について見てみましょう。シニア世代の赤枠部分をみると、幸福度が高く、時間の余裕があることがわかります。他の世代に比べてもスコアが高く出ています。
<金銭的な余裕>
金銭的な余裕もありストレスも少ないことから、気持ち、時間、お金にも比較的余裕があるのが62歳以上のシニア世代の特徴です。
<利用メディア>
利用メディアを見てみると、ご想像の通り、シニア世代はテレビやラジオというマスメディアのチャネルの利用割合が全体と比べて高くなっています。WebサイトやSNSの割合は全体と比較して低いのですが、50~60%の方は利用しているため、メディア戦略などを考える際に「シニアだから新聞、ラジオ」と決めつけることなくWebサイトやSNSも一つ選択肢として検討した方が良さそうです。
<普段利用するWebサイト・アプリ>
次に、普段利用するWebサイトやアプリを見ていきます。シニア世代は、Yahoo!ニュースやYahoo!ショッピングの利用率が高く出ています。逆にTwitter、LINE、Instagramなど普段若者が使っているメディアについては、少し低い傾向になっていますが、一定数の需要があることが分かります。
<一般購買態度>
購入するときの気持ちや購買行動を表す一般購買態度を見ていきます。団塊世代はお店に入る前に買うものを決めている割合が高く、他の世代と比べると計画購買性が高いといえます。事前に決めたものをできるだけ早く、その中でも品質の良いものを買うというのが団塊世代の特徴となっています。逆に低く出ているところをまとめると、周囲の情報に左右されず、口コミを参考にせず、クーポンは使わないなどが特徴になります。
<食事・調理の意識>
シニア世代は「食事は三食取る」「家族で揃って食べる」「一汁三菜を意識」など健康意識が高いことが窺えるため、栄養バランスや一汁三菜といったアプローチが有効だと考えられます。
<健康意識>
シニア世代は先にも見ていただいた通り、健康意識が高いです。また、情報収集についても積極的でテレビで健康情報を収集しているため、テレビで紹介されていて良いと思った商品を買うというのがシニア世代の特徴です。そのほか、「規則正しい」「塩分や糖分を取り過ぎない」「決まった時間に食事を取る」「栄養バランス」などのキーワードが出てきています。表にはありませんが、「外食は控える」「無添加のものを選ぶようにしている」などの傾向も出ています。以前、健康意識の高い人が買っている食品を調査した際、オーガニック食品などが上位に上がっていたため、「無添加」や「自然」というキーワードはシニア世代に刺さりやすいのではないかと推測できます。また、注目したい点は「充実した生活を送るには健康が第一である」という設問で、全体でも約80%が「はい」と答えていますが、シニア世代は約90%が「はい」と答えており、より健康を意識する世代ということが顕著に表れています。健康を意識して、階段の利用や運動のスコアは高いものの、ダイエットや体型を気にするスコアに関しては、高くないことも特徴となっています。
<価値観・パーソナリティ>
価値観・パーソナリティを見てみると、「気持ちの切り替えが早い」「工夫が好きだ」という部分のスコアが高く出ています。「何事もちょっとした工夫をすることが好き」だったり、前述の購入カテゴリーでの「裁縫・手芸用品」が高かったことからもアレンジや自分で作るこだわりなどが全体と比べても高そうです。また、前述の一般購買態度の特徴である「口コミを参考にしない」ことからも窺えるように、「自分が浮いていないか」の数値が低いことから周りと比較せずに生活をしていることがわかります。
4.シニア世代 × 健康意識
<4タイプ別の購買傾向>
シニア世代(団塊世代・ポスト団塊世代)と健康意識(高・低)を掛け合わせた4つのセグメントに分けて購買分析をしました。団塊世代で健康意識が高いタイプは「トリプルヨーグルト」や「LG21」などの機能性ヨーグルト、せんべい、油でもアマニ油などを購入しています。ポスト団塊世代で健康意識が低いタイプはチューハイがあがっており、お酒が好きな傾向が窺えます。シニア世代でも健康意識が高いか低いかによって購入する商品の傾向が全く異なることがわかります。
参考:シニア世代×健康意識の分類設問
「健康意識の高低」は、今回はQPR-SCAPEの以下の設問の回答を基に判断し分類した
5.まとめ
購買履歴データおよび意識調査から見えてきたシニア世代の特徴は以下の通りです。様々な角度とセグメントに分けシニア世代を分析することで、そのペルソナにあった適切なアプローチ方法を検討することができます。
<購買履歴データで見た“シニア世代”の特徴まとめ一覧>
●購買履歴データでみるシニア世代
購買意欲が強く、特に購入場所はスーパーマーケットで和惣菜・漬物といったカテゴリーを購買する傾向
●意識調査と掛け合わせて見えたこと
・幸福度は全体と比べて高く、時間と金銭的に余裕がありストレスが少ない
・利用メディアはテレビと新聞がメインとなり、普段利用するサイトは、Yahoo!ニュースとYahoo!ショッピングという決まったサイトを活用する傾向がある。SNSにも一定数の需要がある。
●シニア世代 × 健康意識
・計画的な購買志向で周囲の情報に左右されず、価値観は工夫をすることが好きで、気持ちの切り替えも早い
・栄養バランスに気遣い、特に食生活における健康意識が高い
・・・【付録】皆様のご参考情報としてご活用ください・・・