まちづくろい総研 | 辻田昌弘

技術士事務所(建設部門・都市及び地方計画)。 都市や地域が抱えるさまざまな課題につい…

まちづくろい総研 | 辻田昌弘

技術士事務所(建設部門・都市及び地方計画)。 都市や地域が抱えるさまざまな課題について「まちづくろい」の視点から調査研究・コンサルティングを行うシンクタンク。

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まちづくろい総研、はじめました

初めまして!《まちづくろい総研》の辻田昌弘と申します。 2023年3月に勤めていた会社を定年退職したのを機に、《まちづくろい総研》というシンクタンクを立ち上げ、フリーランスとして活動することといたしました。 本記事では皆様へのごあいさつを兼ねて自己紹介や《まちづくろい総研》開設への想いなどについて書いていきたいと思います。 What is まちづくろい? 私たちはふだんなにげなく「まちづくり」という言葉を使いますが、「まちづくり」という言葉は暗黙の裡に「まち」を「つくる

    • 出社させたがるほんとうの理由

       noteでポツリポツリと記事を投稿し始めてはや1年半になる。投稿頻度が少ないからしかたがないのだが、アクセス数も「まあボチボチでんな」というところ。が、そんな中でダントツにアクセスが多い人気記事が実はこちらの記事。  昨年6月の投稿なのでもう一年以上前の記事だが、いまだにコンスタントにアクセスがある。  詳細は記事を読んでいただきたいのだが、要旨は概ね以下の通り。  この記事はもっぱら働き手(一般ワーカー)の側から書いたものだが、今回は「二匹目のドジョウ」狙いで、RTO

      • 海面上昇と都市

        防潮堤のかさ上げに取り組む東京都  2023年3月、東京都港湾局は地球温暖化に伴う海面上昇や台風の強大化を見据えて、東京湾沿岸の防潮堤のかさ上げなどに取り組むこととし、「東京湾沿岸海岸保全基本計画」を改定・公表した。  同計画において東京都は、パリ協定の目標と整合する RCP2.6 シナリオ(2°C 上昇に相当)に準拠して気候変動の影響を試算することとし、それに基づいて以下の想定を置いた。 ① 海面水位の上昇 温暖化に伴う海水温の上昇による膨張や氷河・氷床の融解によっ

        • 地方から始まる日本のMaaS

          はじめに 先日久々の海外旅行で北欧諸国(フィンランド、エストニア、ノルウェー、スウェーデン)を周遊してきた。なぜ北欧かというと、実はコロナ・パンデミックが始まる半年前の2019年に出張でこれらの国を回ったことがあり、そのときに北欧の諸都市の魅力に強く心惹かれたからである。2019年のときは仕事だったためほとんど観光ができなかったので、プライベートでの再訪を心に誓い、コロナが明けてようやく目的を果たすことができたという次第。 コロナ前の「北欧ブーム」とMaaS ところで

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        記事

          公共空間と商業空間の融合、のその先

          はじめに さて、前回記事(「「ハラカド」から考える商業施設の未来」)では、神宮前交差点に新たにオープンした商業施設「ハラカド」の最大の特徴は、銭湯や雑誌図書館、屋上テラスなどの「非・収益空間」が総床面積に占める割合が高いことにあると指摘した。 ところで、これらの空間…銭湯、図書館、屋上テラス等々は、商業空間の中に組み込まれた一種の公共空間といえなくもないのではないだろうか。もちろんこれらの空間に立ち入れるのは施設の営業時間内に限られるので純然たる公共空間とはいえないかもし

          公共空間と商業空間の融合、のその先

          「ハラカド」から考える商業施設の未来

          はじめに 先月神宮前交差点にオープンした話題の商業施設「ハラカド(東急プラザ原宿)」を見に行ってきた。 もっとも、私は流行りのフアッションとかブランドについては疎いので、この商業施設のテナントミックスについて論じる資格はないし、そのつもりもない。そこいらあたりの議論は他の人に譲るとして、私が「ハラカド」を見て興味深く感じたことを以下にまとめてみた。 売り場有効率が低い? TV東京の「ガイアの夜明け」でも取り上げられていたように、「ハラカド」の「目玉」はB1Fに誘致し

          「ハラカド」から考える商業施設の未来

          分譲マンションは終の棲家たりうるのか(下)〜住み替えも容易じゃない

          高まる永住志向 前回記事(「分譲マンションは終の棲家たりうるのか(上)〜建替は難しい」)でも触れたが、国土交通省の調査によれば、分譲マンション居住者の約半数が世帯主年齢60歳以上で占められている。また同調査によればマンション居住者の永住意識は高まっており、直近の調査では62.8%の人が「永住するつもりである」としている。多くの人がマンションを「終の棲家」と思い定めているのである。 しかし、前回記事でも述べたように、マンションには建物の老朽化と居住者の高齢化という「ふたつ

          分譲マンションは終の棲家たりうるのか(下)〜住み替えも容易じゃない

          分譲マンションは終の棲家たりうるのか(上)〜建替は難しい

          分譲マンションの「ふたつの老い」 3月28日と29日の日本経済新聞に掲載された特集記事「老いるマンション」。 国土交通省のデータによれば、 ・分譲マンションのストック総数は694.3万戸で国民の1割超が分譲マンションに居住していると推計される。 ・そのうち築40年以上の分譲マンションの総数は125.7万戸と約18%を占める。 ・築40年以上のマンションは今後も増加を続け、20年後(2042年末)には445.0万戸になると推計される。 分譲マンションについては近年「ふた

          分譲マンションは終の棲家たりうるのか(上)〜建替は難しい

          【寄稿】小さくはみ出す・みんなではみ出す  イノベーティブな公共空間利活用に向けた自己変革の4つの原則

          約半年ぶりの投稿です。 このたびミズベリング・プロジェクトさんからお声がけいただきまして、エッセイを寄稿させていただきました。 ご笑覧賜われれば幸甚に存じます。 ちなみに、私、以前に「ミズベリング・プロジェクト アドバイザリーボードメンバー」を拝命しておりましたが、事務局に確認したところ、まだ罷免とか解任はされておらず、現在も有効とのことでした(笑)。 □□□□□□ 最後までお読みいただきありがとうございます。もしよろしければnoteの「スキ」(ハートのボタン)を押しても

          【寄稿】小さくはみ出す・みんなではみ出す  イノベーティブな公共空間利活用に向けた自己変革の4つの原則

          「横丁」今昔

          〈企業主導アーバニズム〉対〈創発的アーバニズム〉 最近読んだ慶應義塾大学理工学部准教授のホルヘ・アルマザン氏の『東京の創発的アーバニズム』という本が面白かった。 アルマザン氏は、2002年の都市再生特別措置法の制定を契機として加速した「東京を超高層ビルで覆い尽くす一連のプロセス」を「企業主導アーバニズム」と呼ぶ。「それらは基本的に高級コンドミニアムやオフィスの超高層タワーが、低層部のショッピングモールのような商業施設の上に載るという建築タイプで構成される。」が、それらの

          容積ボーナスという錬金術

          「空間への需要」が減っている 9月5日付日本経済新聞朝刊に掲載された「地方再開発 物価高が直撃」という記事。 記事にもあるように、市街地再開発の事業費は、国・自治体の補助金や、再開発によって新たに生み出される「保留床」の売却費で賄われる。この新たに生み出される「保留床」は再開発ビルの計画に応じて、オフィスだったり商業施設だったり、あるいは住宅(賃貸・分譲)だったりするのだが、いずれにしてもこれらの床が当初計画通りの価格で売れないと再開発事業の採算は厳しくなる。 で、当

          容積ボーナスという錬金術

          〈セゾン文化〉について改めて考える

          「脱埋め込み」と「再埋め込み」  前記事(「「脱埋め込み」への異議申し立て」)において、主に松原淳氏の『建築家の解体』を引用しつつ「場所と空間の違い」や「脱埋め込み」という概念について説明したが、松原氏は「脱埋め込みは再埋め込みを伴いながら進行する」とも述べている。なぜなら、「脱埋込みが進行すればするほど、人々は慣れ親しんだコミュニティに根ざした安心感や親密感を担保してくれる「場所」に包摂されたいと望むようになる(松村『建築家の解体』p.216)」からである、と。  「

          〈セゾン文化〉について改めて考える

          「脱埋め込み」への異議申し立て

          どうしてどこもかしこも似たようなビルばかり建つのだろうか?  「日本の超高層ビル」というウェブサイトがある。運営されているのは個人の方のようだが、その中に国内の超高層ビルを高さ順に写真付きで紹介しているページがある。  ここに並ぶビルの写真をみていて思うのは、どれも外壁がカーテンウォールで形状は直方体という似たようなデザインをしていることだ。それでも2000年代の初めぐらいまでに竣工したものの中には「JRセンタラルタワーズ(10位;1999年竣工)」「東京都庁(11位;

          「脱埋め込み」への異議申し立て

          リスキリング疲れ

          「やる気スイッチ」が見つからない  6月23日付記事(「出社したくないほんとうの理由」)で、日本のワーカーの「ワーク・エンゲージメント」が世界最低水準という新聞記事を紹介したが、これをさらに裏付ける調査を発見した。2022年11月にパーソル総合研究所が公表した調査レポート「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」がそれなのだが、アジア・欧米18カ国の就業者を対象としたこの調査結果がなかなかにすさまじい。 以下かいつまんで内容を紹介すると… ① 管理職になりたい

          「脱クルマ」から始まるウォーカブルなまちづくり

          はじめに  遅ればせながら、ヴァンソン藤井由実さんの『フランスのウォーカブルシティ』(以下「本書」という)を読んだ。  副題に『歩きたくなる都市のデザイン』とあるので、フランスのおしゃれな歩行空間−カフェやベンチやイベントやらアートやら−がいろいろと紹介されているのかと思われるかもしれないが、内容はかなり骨太である。 と著者自身が述べているように、本書のメインテーマは「道路空間の再配分」である。 道路空間再配分の4点セット  「道路空間の再配分」とは、自動車用の道路

          「脱クルマ」から始まるウォーカブルなまちづくり

          出社したくないほんとうの理由

          はじめに  野村総研が今年2月に公表した「2022年の日米欧のテレワーク状況と将来展望」によれば、日本のテレワーク実施率は19.0%と調査対象8カ国中最低となっている。調査時期が2022年7〜8月なので、コロナがほぼ収束した現在では、この数字はさらに低下している(=出社率が上昇している)ものと思われる。いわゆる「オフィス回帰(リターン・トゥ・オフィス)」の動きが鮮明となっている。  コロナ禍においては「働きかたのニューノーマル(新常態)」ともてはやされ、コロナ収束後も定着

          出社したくないほんとうの理由