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ごはん映画

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映画に出てくる食べ物が大好きです。そんな「ごはん映画」について書いた記事をまとめています。
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#ミニシアター

映画に出てくる食事はおもしろい

映画に出てくる食べ物が好きで「ごはん映画」として集めています。 収集するのは、食をテーマにしている映画だけではなく、1カットだけ食事や飲み物が登場する作品も対象にしています。そのような収集範囲にしていると、映画を観るときは登場人物たちが何を作っているのか、何を食べて飲んでいるのか、とても気になってしまいます。 逆に全く食べ物が登場しない映画もあります。それはそれでおもしろくて、作り手にとってその作品での、 ・「食」の重要度 ・「食」が担う役割 ・「食」で表現したいこと(逆

思いやりと雨ふる台湾|『オールド・フォックス 11 歳の選択』

いい映画を観たあとは気持ちがほくほくする。ここ最近は鑑賞本数が減っていたのもあって、久しぶりにこの嬉しい感覚を味わえた。 台湾映画『オールド・フォックス 11 歳の選択』 この映画は存在も評判も知っていたのだけど、劇場では鑑賞できず、U-NEXTで観ました。素晴らしかった。昨年のうちに劇場で見ていたら、ベスト5には入れたかもしれません。 台湾の名匠ホウ・シャオシェンが製作に入っていることでも話題になっていた本作。バブル期の台湾を舞台に、誠実でつつましい父親と、成功に貪欲な

これは人生の物語|『パスト ライブス/再会』

最近は中国語学習の一環で、中国語で日記を書くことをがんばっていたので、noteはご無沙汰していました。久しぶりに映画についてメモします✍️ 『パスト ライブス/再会』 4月に劇場で鑑賞していた作品。最近は劇場での鑑賞から足が遠のいてしまっていたのですが、本作は予告を見て「ぜったい劇場で観たい!」と思っていました。(noteを書くのがのんびり過ぎましたね🍃) 海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、アメリカ・韓

分からなくてもいいから寄り添って|『そばかす』

2022年最後に鑑賞した作品は『そばかす』でした。1年の締めくくりにふさわしい、爽やかな気持ちにさせてくれる映画でとても嬉しくなったのを覚えています。 『ドライブ・マイ・カー』の三浦透子さんが単独主演を務めた本作は、メ〜テレシネマプレゼンツの(not) HEROINE moviesの第三弾。これまでこのシリーズでは『わたし達はおとな』『よだかの片想い』が制作されています。 30歳の蘇畑佳純(そばたかすみ)は物心ついた頃から恋愛がよくわからず、いつまで経っても恋愛感情が湧か

日記|最近の鑑賞作品と、登場するごはんについて

最近、鑑賞しておもしろかった映画で、食べ物が出てきた作品についてメモしようと思います✍️ 下半期はプライベートで新しいことへのチャレンジがあり、11月〜12月はバタバタしてあまり映画を観れなかった月でした。 『アフター・ヤン』 正確には10月に鑑賞した作品。公開のずっと前からとても楽しみにしていました。静かで美しく、まさに「心の琴線に触れる」という言葉がぴったりくるようなセリフや表情に、自然と涙がこぼれます。 人型ロボットが一般家庭にまで普及した近未来。アンドロイドのヤ

香港の美しいノスタルジーを味わう|『七人樂隊』

今月はとっても楽しみにしていた『七人樂隊』を観に行きました。香港映画界を牽引してきた7人の監督がフィルムで撮ったオムニバス作品。なんと豪華なんだろう。 韓国や台湾、タイや中国などアジア映画が好きです。今年はウォン・カーウァイ4K特集上映が盛り上がっていますが、タイや台湾のホラー映画が話題になったり、昨年はトニー・レオンがマーベル作品『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に出演したりと、ずっとわくわくが続いています。 そんな中、本作は香港映画というジャンルを俯瞰して観るような

温かい死生観に救われる|『川っぺりムコリッタ』

『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子監督の最新作『川っぺりムコリッタ』を観に行きました。個人的に少し久しぶりの鑑賞となった荻上監督作品だったのと、予告編から食事シーンがあると分かっていたので、とても楽しみにしていました!(このnoteでは映画に登場するごはんを集めています。マガジンはこちら) 温かい死生観に救われる 荻上監督の作品は一見ほんわかしたように見えて、実は死生観を素直に突きつける監督だと思っています。過去作品でもふんわりとそれを感じ取っていましたが(『トイレット』

安心という名の家を建てる|『サンドラの小さな家』

映画に登場するごはんが好きです。 理由については記事を書きましたが、わたしは映画の中の登場人物たちが生活している姿が好きなのだと思います。 そして食事と同じくらい興味深いのは住宅事情。家や部屋というのは、映画の登場人物たちの生活を様々な形で観客に伝えます。 家で過ごす時間が好きです。映画館にはよく行きますが、基本はインドアで出不精、よく晴れた日に昼寝をするのも気持ちいいし、家の中で雨を眺めながらの昼寝も好きです。(よく眠ります) ここ2年は不要不急の外出を制限されることもあ

レストランの誕生を描く、とってもお腹がすく映画|『デリシュ! 』

このnoteでは映画に登場するごはんをメモしていますが、先週は世界で初めてレストランを作ったという実話を元にした映画『デリシュ! 』を鑑賞しました!(ごはん映画のマガジンはこちら) 1789年、革命直前のフランス。貴族と庶民が一緒に食事を楽しむことなんて考えられなかった時代に、世界で初めてのレストラン開店を描く作品です。 ぷっくりした手の持ち主が、生地をこねるシーンからこの映画は始まります。だんだんとまとまりを見せる生地に、卵やミルクを加えながら、さらに練り上げていく。そ

砂漠のカフェを訪れた|『サハラのカフェのマリカ』

タイトルで惹かれた『サハラのカフェのマリカ』というドキュメンタリー映画を観に行きました。 アルジェリアのサハラ砂漠の真ん中でたった一人でカフェを営む、高齢女性マリカの日常を描くドキュメンタリー作品。 少し離れた場所からカフェの外観を静かに捉え続ける、最初のワンカットで本作が「良い」と直感的に分かります。 窓やドアを額縁のように使い、フィックス撮影(カメラを固定して撮影すること)で映される映像に、この場所で流れる独特な時間を感じました。 もちろん頻繁にお客が来る場所ではな

人生はまるでカセットのよう|『プアン/友だちと呼ばせて』

ここ最近、タイのカルチャーがおもしろい。映画もドラマも音楽も話題になることが多く、丁寧に発信してくれる方々の情報をチェックして、新しい文化を知ることができて、とにかく嬉しい。 タイ文学とタイポップスに入門する 今年5月に、下北沢BONUS TRACKで開催された「タイポップカルチャーマーケット vol.0」では、タイ文学にまつわるZINEを購入しました。日本語に翻訳されたことのない作品の冒頭を紹介する冊子で、タイ文学の雰囲気を少し知ることができます。 TBSラジオ「アフ

理解することが優しさの第一歩|イスラエル映画『靴ひも』

映画に登場するごはんが好きで、このnoteではごはん映画を中心にメモをしていますが、もうひとつ好きな映画の見方があります。それは、いろんな国の映画を観ること! もともとミニシアター系の作品が好きということもあり、以前はレンタルビデオ店でDVDパッケージの後ろの「製作国」の表記を見て、知らない国の映画であればあるほど嬉しく、まだ観たことのない国の映画を探してよく鑑賞していました。 いまはサブスクサービスで映画を観ていますが、久しぶりに多国籍な作品を鑑賞したのでメモしようと思いま

スリリングな一夜は『ボイリング・ポイント/沸騰』のレストランで。

このnoteでは映画に登場するごはんについてメモをしています。映画を観るときは「あ!食べ物が出てきた」「あれは何を食べているんだろう?」と、いつも気にして手帳にメモしながら鑑賞しています。 ▼ごはん映画をまとめたマガジンはこちら▼ そんな中、下半期一番楽しみにしていた作品『ボイリング・ポイント/沸騰』が公開されました!レストランが舞台で、なんと全編90分ワンショット撮影したという驚きの作品。公開劇場が限られているので、満席の回も多くあったようです。 本作では料理だけでは

空気と音と湿気でベトナムの美しさを感じる映画|『MONSOON モンスーン』

海外に行く経験は少ないながら、社会人になって年に一回は海外旅行をするのが夢であり目標でした。台湾やシンガポールなど行きやすいアジア国へ旅行したあと、次はハワイに行こうかなぁと計画して、はや2年。海外はおろか国内旅行や実家への帰省すら、はばかられる日々に戻ってしまいました。 2019年の旅行では当初ベトナムを検討していましたが、雨季の季節だったためシンガポール旅行に変更しました。有料記事にしていますが、シンガポール旅行の写真はこちらに少し掲載しています🇸🇬 ベトナムはいつか