砂漠のカフェを訪れた|『サハラのカフェのマリカ』
タイトルで惹かれた『サハラのカフェのマリカ』というドキュメンタリー映画を観に行きました。
アルジェリアのサハラ砂漠の真ん中でたった一人でカフェを営む、高齢女性マリカの日常を描くドキュメンタリー作品。
少し離れた場所からカフェの外観を静かに捉え続ける、最初のワンカットで本作が「良い」と直感的に分かります。
窓やドアを額縁のように使い、フィックス撮影(カメラを固定して撮影すること)で映される映像に、この場所で流れる独特な時間を感じました。
もちろん頻繁にお客が来る場所ではないのですが、トラック運転手やバックパーカーなど、思ったより人が訪れることが驚きでした。バス事故が起こったという話もあり、車通りはある道のようです。
ここを訪れる人がポツリと話し始める話題は、国や宗教、家族や仕事のことなど。アラブ諸国ならではの問題もありますが、遠く離れた日本と変わりないことも多く、なんだか不思議な気持ちになります。
そしてなぜか皆が自分の話をよくします。カメラがあるからか、それともマリカの持つ雰囲気がそうさせるのかは分かりません。マリカ自身は飄々として、自分の本心を話しているのか判断ができない瞬間がありましたが、少なくともこのカフェが砂漠のオアシスのように、いこいの場になっているように見えました。
マリカのカフェの近くに新しく飲食店ができるという話もありました。今この場所がどうなっているのか、とても気になります。
マリカのカフェは、首都アルジェからタマンラセットへ向かう、ナショナル・ワンという道の途中にあるそうです。住所はこの映画の原題でもある「143砂漠通り」です。
▼▼『サハラのカフェのマリカ』に登場するごはん▼▼
カフェとタイトルに入っているのですが、登場するのはオムレツとお茶(紅茶やコーヒー)でした。さっと食べる軽食という感じでしょうか。ワッフルを注文するお客さんもいました。
劇中でマリカやお客さんが冗談ぽく「砂混じりのオムレツ」と言っていましたが、窓ガラスやドアもないカフェなので、砂は確実に混ざっていそうです。
パンフレットによるとマリカが元気なころは、クスクスなどアルジェリアの伝統料理を出していたそうですが、今はツナ缶を使ったオムレツ一品のみで、それをパンに挟んでサンドイッチのように食べるそうです。劇中ではパンを浸して食べているお客さんがいました。
アラブのお茶文化はとても重要なものと読んだことがありますが、本作でもトラックドライバーや旅人など、様々な人がお茶を求めていました。わたしはモロッコ料理店で甘いミントティーを飲んだことがありますが、マリカの出すお茶の味が気になります。(砂糖が入ってそうな容器があったので、おそらく甘いお茶だと予想します)
遠く離れた異国の地のカフェを垣間見れる、貴重なドキュメンタリーだったと思います。マリカの生活に想いを馳せながら、映画の余韻にしばらく浸ります。