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嶋田青磁
2018年9月8日 00:10
今年の夏をひと言で表すなら、「轟音」。色々なものを薙ぎ倒しながら、音を立てて猛スピードで走り去るような…その音は耳を塞いだときに聞こえる血流の音にも似ているし、急行列車の通り過ぎる音にも似ている。ところで、わたしが夏を好きなわけについてお話ししよう。今まで、わたしが出会った人で好きな季節を夏と答えるのは、体感で1〜2割。なぜ?暑いのがいやだから。これに尽きると思う。けれど、夏に
2018年9月2日 16:07
今まで、夜の海は恐ろしいものだと思っていた。人は、果ての無さに本能的な恐怖を感じる。死が怖いのは、生が終わるためではなくその後永遠に続く無が恐ろしいのだ。だから人間にとって、陽が落ちた後の海は、死を連想させる。 ところが目の前にある海はどうだろう。満月のおかげで、砂のついた裸足の爪先まで容易に見ることができる。風は穏やかで、凪いだ海面は眠る黒猫の毛並のように柔らかい。月光に照らされ
2018年9月14日 22:04
一日に一度 あなたはわたしにキスを送るあなたが額に口づけると、そこに真っ赤な芥子が咲いた左耳のたぶには金木犀ほほには女郎花首すじには蔦が絡みつき乳房は勿忘草で覆われた腹には静かな海色の紫陽花が咲いたが、それはやがて宵の紫色に変わった最後にあなたは左の手をとり、なか指に口づけたすると大きな白い百合が二輪気だるげに頭をもたげた 指輪には重すぎたがその香りはどこまでも濃く