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予測不可能なおじさま店主さんの閃きトーク(2017年48歳)

“色んな意味”で活力漲る、お隣東京の“とある街”。
そこは、夜になると一層活気づくことで有名であり、実際訪れても、濃厚で渦巻くようなエネルギーにのみ込まれそうになる。

そんな街の一角に、ひっそりと小さな自然食品店がある。
そう、何故か「エネルギッシュディープタウン」に「ナチュラル&ヘルシー」なお店が唐突に存在しているのだ。

ちなみに、その自然食品店は小規模なチェーン店である。
以前は我が地元にも姉妹店があり、度々“酵素パウダー” や“焼きナスの歯磨き粉” などを購入させていただいていた。

しかし、残念なことに数年前に閉店。以降は、電車で40分程かかる先述の「エネルギッシュディープタウン店」で買うようになったのだった。
と言っても、わざわざそれだけのために出向くのではなく、東京方面に用事がある時の「ついでのまとめ買い」なので、年に数回あるかないかである。

そんな訳で、「ついでのまとめ買い」も2度目となった、とある夕方。
レジにて支払いを済ませると、初めておじさま店主さんがなんとはなしに話題を振って来られた。
その内容は、2021年現在全く覚えていないのだが、いくつか会話を重ねたのち、私は「以前姉妹店に通っていた」ことをお伝えしたのだった。

そしたら何と、店主さんは一時期、そちらのお店にも立たれていたとのこと。
「あの地域は暮らしやすくていい所ですよ…」としみじみ褒めて下さった。

……にもかかわらず、当時引っ越したくてたまらなかった(今もだが)私は、思わず「そうですかねぇ…」と生返事。
それが店主さんのトーク魂に火をつけたのか否か、そこから怒涛のラリーが始まったのだった。

次から次へと、芋づる式に掘り起こされる、店主さんの「お題」。
「住み心地の良い地域について」→「ご自身の出身地と現在のお住まいについて」→「私の出身地はどこか」まで流れ、東北の▲▲市出身だと知ると、「東日本大震災の時、ご両親は大丈夫だったの?」という質問にまで至った。

私は、目まぐるしさに翻弄されつつも、「無事だったが色々大変だったようだ」などと返した。
そしたら今度は、明らかに『ハッ!』としておっしゃったのだ。
「あっ!!そう言えば、ホーリーバジルって知ってる!?」
『えっ!?何で急にハーブの話!?』
目を白黒させつつも、反射的に「ピザなんかに乗っているスイートバジルは知っているけど、ホーリーバジルは全く知らない」などと即答する。

その素人っぽい回答に、何故か輝きを増した店主さん。
『待ってました!』とばかりに勢いよく返答された。
「ホーリーバジルは、スイートバジルと全然似てないんだよ!香りも違って、すごく爽やかでねぇ~!!で、何と言っても強力な浄化作用があるんだよ!!」
「へええ…!そういうのがあるんですか。知らなかった!!」
ハーブはまあまあ知っているが、初耳だった私は素直に驚いた。

……っていやいや、そうじゃない!なにゆえ、突然のホーリーバジル!?と、内心突っ込みを入れていたら、さすがに続きが。

「その浄化作用の高いホーリーバジルを植えることで、汚染された土壌を再生しよう!っていう活動も盛んになって来てるみたいでね…」
「おお!それは素晴らしい活動ですね!」
「でさ!その活動の拠点になってるのが……お客さんの故郷の▲▲市なんだよ!」
「!!!」

私は、納得の充足感と共に、返事をするため大きく息を吸った。
……がっ!すかさず店主さん、鼻息荒くカットイン。
「しかもさ!もともと熱帯地域に生息するホーリーバジルを、四季のある日本の環境で育ちやすいように品種改良したのも、▲▲市の方なんだよ!」
「ええーー!そうなんですね!なるほどーー!」
まさかの二段階着地を経て、この上ない爽快感で返事を一挙に吐き出す。
店主さんも、見事にオチがついて実にご満悦そうである。

……と思いきや、まだ続きがあった。
その内容を要約すると、「品種改良した種を取り寄せて育てたところ、それらはすくすく成長し、種の収穫にも成功。そして、今ちょうどその種から苗を育てている真っ最中」とのこと。

「何だかね、魔よけにもなるらしくて……。インドでは玄関とか庭に植えるらしいよ!摘んだ葉っぱは、水に入れてミント水のようにして飲むと、すごいデトックスにもなるんだってさ!」
「えええー!それはすごいですね!」
目を輝かせ、ガッツリ食いつく私。
何故なら、ちょうどその頃デトックスにも魔よけにも興味津々だったからだ。

そんな私の感嘆に、またもや『ハッ』とされた店主さん。
「あ!!もし良かったら種から育てた苗、持ってく?あげるよ!」
と素早く私を促し、お店の外へ。入り口付近にある植木鉢を指さした。
「ここで育ててるんだよ。ほら!こんなに育ったんだよ!」
見ると、そこには確かに15㎝位に育った植物の鉢が8個ほど。
いや~お店に入る時は、薄暗くて全然認識出来ていなかったなぁ……。

「おお、これですか~!」
「これから大きくなって花が咲くからさ!一番元気なのを持って行きなよ!」
店主さんはカラリとそうおっしゃり、一番背の高い苗を選んでレジ袋に入れ持たせて下さった。
私は大喜びでお礼を告げ、お店を後にした。

……で、実はその後、友との会合があった。
それには少々荷物になったし、見栄えもちょっと場にそぐわなかったし、友には「何それ?」と怪訝な顔をされ、説明してもピンと来てもらえなかったが、私は宝を手に入れたように嬉しかった。
そして、店主さんのお気持ちも……。

だから、帰りの電車がどんなにラッシュでギュウギュウでも、苗にも皆さんにも負担のないよう、体がりそうになりながら、不自然な体勢で40分間立ったまま頑張ったのだ。

その甲斐あってか、苗はすくすくと成長。次々と花も咲き、摘み取る葉たちが爽やかな香りで私を癒してくれた。
そして、収穫に成功した種たちは、遠く離れた実家の庭に植えられ、香りで母を癒している。

ホーリーバジルの花。葉は、軽く触るだけで指に香りが移る。
その香りは、イタリアンで馴染み深いスイートバジルとは全く異なり、
爽やかで軽やか。ただし、力強く香る。
種は、1つの花に4つずつギッシリ実る。



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