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書店は森だから散歩したくなる
「Life With Reading」という言葉を知りました。「読書のコツや楽しみ方、そしてこれからの時代で求められる「創造的読書」(クリエイティブ・リーディング)の考え方を言語化し、27個の言葉にまとめたもの」です。有隣堂と慶應大学の共同研究により生まれました。
読書の時間をあらかじめスケジュールに組み込む「本との先約」や、つくりてのこだわりを見つけたときにうれしくなる「こだわりの発見」など、気になる言葉がたくさんありました。
そんななか、私が「あぁ、なるほどなぁ」と思ったのが、「本の散策」という言葉です。
このなかで、本屋は森にたとえられています。
森の木のようにずらりと並ぶ本を眺めることは、それ自体が楽しいことです。季節に応じて出てくる旬の本に目を向けてみたり、今まで足を踏み入れたことのないコーナーに立ち寄ってみたり。
森の中を歩くと、それだけで楽しくなります。
ただ、森を楽しむためには人による手入れが欠かせません。遊歩道をつくり、看板を立て、様々な木々や花が見られるようにする。自然のなりゆきに任せるだけでは散策はできないのです。
「いいな!」と思う書店さんは歩くだけで楽しくなります。それは書店員さんが丹精込めつくってきた棚があり、立ち止まって手に取りたくなるようなPOPがあり、様々な本を見渡せる売り場づくりがあるからです。
書店の棚に置いてもらえる本とは。立派な木のように長く売れる本、キレイな花のように装幀やデザイン、本文の細部までつくり込まれた本、美味しそうな果実のように世の中の旬、空気を切り取って読者に提示できる本だと思います。
森の仲間にしてもらえるような、散歩中に見つけて楽しくなるような本を私もつくっていきたい、と思いました。