かがやきの運転手になりたかった頃の息子にはもう会えないけど
息子が電車や新幹線ブームだった、2歳か3歳くらいのとき。
「おおきくなったら かがやき(北陸新幹線)のうんてんしゅ になりたい!」
と言っていた時期があった。
数ある乗り物から、色がかっこいいからという理由でかがやきがお気に入りだった。
かがやきの運転手になりたいならまずは本物のかがやきに乗らなきゃね!と、息子のために金沢旅行の計画を立てようとしていた。
でも、
金沢行きたいねーいつ行こうかねー、と
うかうかしているうちにすっかり月日は流れ。気付けば息子のかがやき熱はすっかりなくなってしまった。
新幹線の写真を見ただけで、のぞみ!はやぶさ!こまち!とスラスラ答えていたのに、今となっては何を聞いても「んー、わからない」と忘れてしまって。
トミカや電車図鑑は、おもちゃ箱や本棚の奥で眠ったまま。
かがやきの運転手になりたいと自分が言っていたことすらも、もはやあんまり覚えていない。
これを目の当たりにしたとき、
トイストーリー2の、ジェシーの過去の回想シーンが思い浮かんだ。(はいまた出たディズニー脳)
持ち主の女の子エミリーはジェシーといつも一緒で、同じ格好をして遊ぶのが大好きだった。
しかし成長するにつれ同世代のお友達と遊ぶようになり興味が移り、お部屋のインテリアもカウガールグッズからメイク用品や流行りのポスターへと変わっていく。
ベッドの下に落ちてしまったジェシーにも、もう何年も気付かない。
そして最後は、たくさん遊んだ思い出の公園に捨てられてしまう。(正確には、ゴミ箱ではなくご自由にどうぞ的な段ボールに入れられてしまうんだけど)
こどもというのは、思っている以上の早さで大きくなっていて。
好きなものがずっとそのまま好きとは限らないし、気まぐれだし、楽しかったことも悲しかったことも記憶に残らないことが多いかもしれない。
だからこそ、
旅行でもお出かけでも、その時その一瞬を楽しむためだけに遊び、後悔ないようにしたい。
思い出は残そうとするものではないのだ。
思い出というのはのちのち勝手になるものであって、作るものではない。
それが大切な思い出になるかどうかは何年も何十年も経ったあとに、やっと答え合わせができる。
私だって、ガムシャラに青春してた日々は「思い出つくるぞー!」なんて微塵も思っていなくて、何気ない日常も大きな節目も、その渦中にいるときではなく今になってやっと、宝物のように思えている。
小学生になる前の、ほんとに小さい頃の記憶もなんとなくあるんだけど、
「支笏湖の旅館に泊まったときに家族みんなで外まで花火を見に行ったんだけど、蜘蛛の巣に引っかかっちゃって腕を見たら小さいクモが何匹もくっついていて絶叫して走りながら花火そっちのけで泣いた。」とか、
「七五三のときに着物が苦しすぎて、タクシーの中で脱ぎたい脱ぎたいとずっとふてくされてたけど千歳飴もらって機嫌を取り戻した。舐め方の癖強すぎてアイスピックかってくらい鋭利になって口の中ズタズタになった。」とか
「親戚に会いに青森に行った時、十和田湖にウミネコ(鳥)がいっぱいいて、持ってたかっぱえびせんあげまくってたら、気づけば無数のウミネコが周りに集まってきて怖くて泣いた。」とか
しょーもないこと、しかも断片的にしか記憶にない。これは素敵な思い出とはいえない。笑
でもきっと、その前後では楽しんでいたはずだ。
よく、
こんなに小さいうちにいろんなところに行っても大きくなったら覚えてないよ、とか
海外なんて行っても記憶に残らないよ、とか
そういう意見も耳にするけど、
こどもの思い出に残すことが目的であれこれ行ってるわけではないんだよな。
記憶に残らなくても赤ちゃんだって目の前のことを楽しむことはできる。手や肌の感覚で刺激されることもたくさんある。
例えば、
恐竜が大好きだから、恐竜博物館に連れて行ってあげたい。
プールやお風呂でいつも楽しそうにしてるから、綺麗な海を見たらどんな反応するかな。
ブロック遊びにハマってるから、レゴランドで思う存分遊ばせてあげたい。
こんな風に
こどもの興味や大好き!を取りこぼさないように。
ただただ、目の前のこどもの喜ぶ笑顔が見たい。
私は、
かがやきの運転手になりたいなぁ〜としばらく言っていたのに後回しにしすぎて、結局かがやきに乗って喜ぶ息子の姿を見ることができなかった。もうブームは戻ることはない。
すぐに行動しなかったことに後悔したし、他にも小さな「あの時ああしてれば…」はまだまだある。
だから
その時その一瞬は意外とすぐに過ぎ去ってしまうんだよと言い聞かせながら、何かブームが来たらできるだけその世界を広げてあげたい。
本物を見せたり体験させてあげることで、例えいつか忘れてしまったとしてもその時全力で楽しい!と思えてくれたんならそれでいい。
今年の夏休みの初めに、
図書室で借りてきたトム・ソーヤの冒険を読んだあと目をキラキラさせながら
「ぼく、冒険がしたいな!イカダに乗って無人島行きたい!洞窟も探検したい!」
と息子が言った。
読み終わってから何度もトム・ソーヤ島の冒険のおもしろさについて汗をかきながら一生懸命語ってくれた。
かがやきの運転手になりたいと言っていた幼き息子の姿が重なって見えた。
よし、今年の夏休みは冒険に行こう。
今度は気が変わらないうちに。
興味の種を潰さないように。
(というわけで願いを叶えるために夏休みはベトナムに行ってきました!
この記録はまたいつか書きます。)
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