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新人時代の過去話と、ここからの話。

もしもがあれば。

「この医薬品にこの成分が入っていなければ、この目の前にいる人に紹介できるのに。」

ドラッグストアで働いていた頃、医薬品売り場でよく思っていたことの1つ。

市販薬はどれも、数種類が合わさって1つの医薬品として販売されている。手軽にセルフで購入する方が多い一方で、風邪薬や目薬、皮膚薬なんかは、「たくさんありすぎて、どれを飲んでいいのか分かりません。」とよく質問を受けた。

「コレとソレ、どう違うんですか?」

本当によく聞かれる話で。まだ1年目ときには、聞かれたわたしも心の中では「どう違うんだ」と実際、頭を悩ませて、先輩や上司のもとへ走っていっては聞いていた。

医薬品登録販売者は、現場にポーンと出て(だされて)、場数を踏んで、経験値で育つ傾向が多いように感じる。しかし、実際に資格をもっていても、医薬品に携われる業務はドラッグストアでは、ほんの一握りで、実際には食品が売れる店舗なら、スーパーと同じくらいに食料品と関わることもある。

わたし自身も新人の頃、食品が強い店舗では食品担当だった。

毎日、医薬品に触れない、経験値もない、その上、突然に風邪薬のことを聞かれ「喉が…」「鼻が…」と言われても戸惑うばかり。

今日の答えはどこにあるのかと、家に帰ってテキストを開いて、机の上でパターン化される想定問答の受け答えを必死に探した。だけど想定質問はあまりあたらなかった。それは、新人時代の店舗の立地が理由。
地元の総合病院の近くにあって、持病をもった人が多く、イレギュラー質問や対応が多かった。あとから振り返ると、なかなか難易度の高い、いい経験を新人の頃にしていたんだなぁ…と思う。(その頃は毎日、答えられなくて、相当つらかったけれど)

まずは売り場のラインナップと、年齢別、持病別、剤形別、それをとにかく整理して刷り込んだ。食品担当なのに、変なこと勉強していると噂がたったが、知らんがな。と知っていたけど、知らんふりしていた、その頃の強心臓。(今のわたしに半分分けてくれないかな)

軽失禁パッドコーナーでは、1日に数回相談を受けて、どれをどう勉強していいのかさえ、分からずに現場で「さわやかパッド」と「ポイズ」と「チャームナップ」のパッケージを手に持って四苦八苦。

次こそは、次こそは、スラ~っとスマートに相談の受け答えをしようと、各社のメーカーサイトに行ってラインナップと商品特徴を並べて、まとめ比較した。よしっ!とこれで大丈夫!と商品知識を身につけて安心して、現場にいくと、男性のお客さんからつけ方が分からない。と聞かれ、例え話をしながら、男性につけ方のレクチャーを見よう見真似でやってのけた。

覚えたことから順に、質問がくればいいのに、いつも「わからない質問をうける」という千本ノック方式だったので、勉強することが尽きなかった。

医薬品も同じで、経験の中でしか学べない知識がたくさんあった。

なのに、医薬品に触れない、ましてや食品担当は医薬品担当者に引継ぎをするという、店舗の暗黙のルールがあったので、経験さえ踏めない。わたしは食品の品出しをするふりをして、医薬品担当者の接客から吸収しようとした店員です。たぶん不自然に医薬品コーナーの周りで品出し、発注をくりかえした怪しさしかない店員だったのです。それでも、何年か辛抱強く、経験を積んで、上司に恵まれ、転職して、医薬品に関われるところまで、なんとかかんとか、たどり着けた。


ドラッグストアは店舗や時間帯によっては、戦場のようにいそがしい店が多い。レジもする、品出しもする、発注もする、検収もする、売り場展開もする、力仕事もすれば、細かい作業も並行して行う、その他の多くの作業が飛び交うそのなかで、お客さんの悩みを聞いて、困りごとの解決策を一緒に考える。

でも現実は、そんなに簡単じゃなく。
作業に追われて、苦しんで業界を離れていく人も少なくない気がする。
医薬品や健康相談の側面に、「販売業」を顔があり、そのジレンマに苦しんでいる人もいる。
尊敬する先輩資格者のポリシーに
「医薬品の提案はする、ご紹介もする、お客さんといっしょに考える。でも最後に後追いはしない」というポリシーの人がいて、わたしはその考え方や接し方にすごく影響をうけた。

いい意味で最後はお客さんに託すのだという。
えらぶのは、お客さん。
その為のお手伝いをしているからと、医薬品の知識もたくさん持っていて、とても努力家で、医薬品の仕事も、どんな仕事も楽しそうにする人。とても大好きで尊敬している先輩の一人。

その人はお客さんばかりじゃなく、一緒にはたらく私たちの面倒見がよく、優しかった。ずっと、一緒にどこまでも働きたかった。けれど、わたしは家庭の事情でドラッグストアを離れる決意をした。

その後に、じぶんが処方薬を常時服用するようになり、副作用で苦しくて激しい便秘に悩まされた。こんなに副作用の便秘が苦しいとは夢にも思わなかった。店頭で相談を受けていたときの自分に教えてあげたい。

「お客さんは苦しいから、今すぐ楽にして!!って叫びたいのを我慢してお店に来ているんだよ!」

そうしたら対応ももっと違っていたかもしれない。
たらればだけど、教えてあげたい。

処方薬の副作用の悩みをかかえて、市販薬売り場で相談する人は少なくない。サプリメントの相談もとても多い、近年もっともっと増えてきた。それ専門の知識がなければ、対応が追い付かないのではないのかと感じる。

すべての資格者が平等に、とはいかなくても、一生懸命に夢をもつ人に、夢を叶えられる現場であってほしい。
せめてお客さんと接する余裕を、うみだせる店舗が増えてほしい。

新人時代のわたしのような経験をしている人が本当に多い。
何年たっても、持病を持つ人に販売する時は、慎重になる。冒頭に言った、「この医薬品にこの成分が入っていなければ、この目の前にいる人に紹介できるのに。」は切実なジレンマだった。

ただ、この成分があるから効き目の良さや症状の緩和につながる場合が多い。人の状態を見極めて選べば、とてもよく症状を緩和できる。
本当に、市販薬はとても難しい。複合的になりたっている。
そして店頭に来る人の状態を見極めるためには、本来は市販薬の知識と並行して病態や処方薬知識もすべてといかなくても必要な資格だと痛感している。

ときどき、市販薬に説明はいらないとか、医薬品登録販売者の不要論がでてくると、ドキッとする。
今、ドラッグストアを離れて、買う立場になってわたしは不要だとは思わない。処方薬に相談が必要な場合があるのと同じように、市販薬には、市販薬の相談できる「安心」の窓口が必要だと思う。

それが目には見えない付加価値のサービスかな…と感じています。

「安心」の明かりが灯る店舗が増えて欲しい。

わたしは市販薬を購入する側になって、こんなに遠くから、全力で応援する未来を想像できなかったし、処方薬で便秘の副作用を経験するとは、夢にも思わなかったけれど。

いつかこの経験を人への優しさと安心につなげていきたい。
そして尊敬する先輩たちがずっと、仕事が楽しいと思ってくれる世界であってほしい。



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chimo
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